2014年7月29日火曜日

上原善広「異邦人」を読む。

「日本の路地を旅する」の著者、上原善広氏の新しい文庫本、「異邦人-世界の辺境を旅する-」(文春文庫・本年7月10日発行)を読んでいる。

「かつて差別され、弾圧されていたユダヤ人がそうだったのだろう。しかし、今や彼らがパレスチナ人を弾圧し、ガザという世界一巨大な監獄をつくり、戦闘を繰り返している。」(P52)

第一章「蒼い砂漠」は、2002年に訪問したガザを描いたものだ。だが、この頃のガザでは、イスラエル軍のスナイパーが、様々な場所、特にエジプト国境やイスラエルの入植者の土地で日常的に狙撃をしている光景が描かれている。ガザの子供が度胸試し風に道路を走り、威嚇射撃を受ける。たしかに衝撃的かつ異常な話である。

私が、パレスチナ自治区を訪れたのはヨルダン川西岸である。穏健派の方だ。観光地であるベツレヘムや死海には、多少の緊張感はあったものの、危険は感じなかった。私が危険だなと思ったのは、パレスチナ(ベツレヘム)からイスラエル(エレサレム)に帰る際のイミグレだった。足を投げ出した若い女性兵士が、我々のパスポートを一瞥して、ポーンと投げ出すのだ。高校卒業後、義務として徴兵されているという状況を鑑みても、私は(私も含めた観光客だけでなく、地元の)パレスチナ人への高圧的な態度に、心情的な「危険さ」を感じたのだ。(12年8月13日付ブログ参照)

日本では、今回のイスラエルのガザ侵攻に様々な報道がなされている。どうもイスラエルは、かなりヒールになりつつある。だが、どんなに批判されようと、イスラエルの姿勢は大きく変わらないと思われる。毎日のように妻と討論になるのだが、全く解決の糸口は見つからない。私は、どちらの味方でもないが、「世界一巨大な監獄」という上原氏の表現だけはあたっていると思うのだった。

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