2013年5月29日水曜日

ナイジェリアの石油海賊の話

人口大国ナイジェリアの喧騒
昨日の朝日新聞の朝刊にナイジェリアの海賊の話が載っていた。TICADⅤ真近か故に、このところ景気のいい話が多いのだが、久々にアフリカの暗部をえぐるような記事だった。これもまた現実である。是非ともエントリーしておこうと思う。

私はあまりナイジェリアには属性を感じていない。アフリカについてかなりエントリーしているが、人口大国であり石油大国の重要な国でありながらナイジェリアのエントリーは極めて少ない。こんなにアフリカを愛しているのに、行きたいと一度も思ったことがない国なのだ。様々なナイジェリアの紀行文を読むと、行く気がそがれるような話が多いのだ。今回の話もそういう延長線上で書いてしまうが、お許しいただきたい。

ナイジェリアの主要油田は、ニジェール川のデルタ地帯にある。この油田はもちろんヨーロッパ資本で、環境破壊も凄いらしい。なによりレントが政府の一部の政治家に流れ、地元には還元されていない。以前から油田に対し武装攻撃することで、外国企業をおどして金銭を得ていた現地勢力のことが報道されていた。今回の記事は、そういう勢力がタンカーを襲い、奪った原油を精製(軽油にするのだという。)して国内に流しているという話だったのだ。このニジェール川のデルタ地帯は大湿地帯で、どれくらいの製油所があるのか誰にもわからないのだという。違法精油所で精製することを、隠語で「クッキング」というらしい。パーム油の精製技術が転用されているとのこと。海賊はかなり攻撃的らしく、タンカーの乗務員を殺害することも多いらしい。2012年で少なくとも52件ギニア湾で海賊行為があり、その半数近い27件がナイジェリア沖で前年から3倍増だという。パイプラインの破壊行為も頻発しており、日に15万バレル以上の原油が奪われている。ナイジェリア政府は空爆も実施し摘発を強化しているとのことだが、現地警察では汚職が蔓延し、闇の違法精油を擁護していると、現地に足を運んだ記者の報告が記されていた。

現地の人々からすれば、これらは奪われた資源であり、取り戻して当然だという意識が強いという。非常に伝統的な反植民地主義的な想いが語られているわけだ。遠い日本の地から、簡単に論ずるのは憚れるが、最大のポイントは、レントの配分への不満だと思われる。純粋な経済格差の問題なのだ。ナイジェリアの経済格差への不満はビアフラ内戦の昔から大きく、そして長い歴史を持ちすぎている。

しかし、アフリカ各地で、企業の地域振興への関与が語られ始めている。海賊行為やパイプライン破壊は蛮行だと断じることはたやすいが、今やナイジェリアの石油企業も地域貢献や環境問題への対応の再考を大きく迫られていることを認めなければならない、と私は思うのだ。ナイジェリアが人口、そして資源大国であるからこそ、Win-Winの発想が今こそ求められているのではないだろうか。このことは、これからのアフリカに大きな影響をもつような気がしてならない。

2 件のコメント:

  1. 記事、興味深く拝見しました。
    現在ナイジェリアとされている地域は、今も昔も西アフリカの大きな流れを決定してきた地域。確かに、私もあんまり行きたいと思ったことはないのですが、歴史を紐解くまでもなく、非常に興味深い地域です。たとえば、西アフリカの域内経済の面では、北部に住むハウサが歴史的に覇権を握ってきましたし、域外の経済の面ではイボが、そして宗教の面でも北部にイスラームの中心があり(ボゴ・ハラムのようなグループもありますが)、やっぱりいろんな意味で中心性を感じてしまうのです。
    それゆえ、資本や権力が集中、さらに資源があり人口が増えるといろいろあるのだな、と思います。が、間違いなくアフリカのみならず世界に影響を持つ日がくるはずです。

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  2. 荒熊さん、コメントありがとうございます。
    そうそうハウサ、イボ…。一時勉強しようと思った民族です。なんかナイジェリアとコンゴ民主共和国には深入りして勉強するのをさけてきた気がします。まだまだ勉強が足りません。(笑)

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