2012年2月18日土曜日

京大アフリカ研'12公開講座2月

雪の残る京大稲森財団記念館
毎回楽しみにしている月イチ京大の公開講座の日である。シリーズ「出会う」の第2回は、近藤 史(ふみ)先生の『暮らしを守る女性の知恵に出会う』。南部タンザニアの高原の村に住む女性たちの話だった。近藤先生は農学部出身で、学士時代はジャガイモの研究をされていたのだが、原点に立ち返りたい、生活に密着した農業について学びたいと、遠いアフリカに志をいだかれたそうだ。アフリカ地域研究科に進まれてから、美しい棚田をつくる人々に魅かれ、タンザニアへ。どうも語学に難があったらしく、男性より女性の輪の中へ入るよう指導教官に言われたことが今回の研究の出発点だと大声で笑われた。(笑)

タンザニア、イリンガ州キファニャ村。この地に長期滞在して、女性の暮らしと農業について調べてみると、男性は現金収入を得るため、製材や建築など多岐にわたる職業についていた。食糧生産は女性の仕事になっていたという。この村には植民地時代にオーストラリアから移入されたモリシマ・アカシアという有用な木(成長も早く、薪や炭にも使え、枝葉は焼畑に使う)が多い。その植林地を焼畑にし雨季の畑とするそうだ。シコクビエを1年目、トウモロコシを2・3年目に植えるらしい。共に成長するアカシアが大きくなる4年目はもとの植林地となるそうだ。要するに植林しながらの農耕というわけだ。

さてさて、この村には谷地(やち)の畑がある。雨季に降った天水が地下水となり、谷地を乾季でも潤す。村の夫人たちは、男たちに酒を振る舞うことで協力も得て、この谷地に排水溝をほり、乾季でも農耕が可能な畑をつくったのだ。「婦人の畑」「ママの畑」と呼ばれるこの谷地の畑では、暮らしに密着した農耕が行われている。日々の食生活を豊かにしたい婦人たちは、様々なアブラナ科の葉菜類(キャベツ、西洋アブラナ、ダイコン)をはじめ、カボチャやジャガイモ、サトイモや、焼いて食べるためのトウモロコシなどをつくる。どこに何を作るか?婦人たちは様々な試みを繰り返しながら、作物の生育ステージをずらし、乾季でも毎日新鮮な葉っぱをGETするのだという。これらは自家消費するだけでなく、ちょっとした現金収入にもなる。村のキオスクに置いておき、店の人に勝手に売ってもらい、そのお金で塩や石鹸などをその店から購入するという。

この谷地畑の最大の特徴は、インゲンマメを乾季の最も高値の時に収穫できることである。彼女たちは、そのへんを良く心得て、品種別に収穫・乾燥・脱穀を行い、商品価値を高めたうえで、都市からくる商人に販売する。もちろん、携帯電話も使い、価格動も調べているそうだ。(笑)

このような村の生活は、いわゆるウジャマー社会主義政策で、集住化が進められたことで、従来の焼畑だけではが食糧の確保が危ぶまれたことに由来するらしい。1996年以後経済の自由化以降、マメの生産が大きな収入源となった関係で、この谷地は面積も拡大し、化学肥料も使用されるようになり、かなり商業的になっているわけだ。とはいえ、この村の婦人たちは「効率」より「多様性」を求めている。儲かるマメだけ作るより、いろんな野菜を作って食生活の豊かさを得る方がいいと考えている。楽しみながら稼ぐし、いろんな試行錯誤も面白いと考えている。仲間との協力も、自然で、無理のない”つきあい”なんだそうだ。

…始めてアフリカを訪れた時、女性の働く姿ばかり目にした。頭にバケツを乗せ運んでいる女性。国道で野菜などを売る女性。男性はどこで働いているのだ?という感覚を持った思い出がある。近藤先生に質問したところ、タンザニアにも買婚のシステムは生きているそうだ。しかし、ウジャマー時代に男女平等が謳われ、10軒ほどの最小単位の行政区で夫の暴力行為が起こったら、酒20ℓとニワトリ1羽を全員に振る舞って、妻にワビを入れるんだとか。離婚したら、元妻の半径1m以内に近づけないとか、面白いルールもあるようだ。

…(国内の食糧生産における)商業的農業を、無理なく、自然に、そして明るく楽しくやっているという婦人の話。そのおかげで、男性の働く製材業なんかも機械が導入され、持続可能な発展が進んでいるようだ。…なんか、ほのぼのとして、希望のもてる話だったのだった。やはり、アフリカに学ぶことは多い。近藤先生、貴重なお話ありがとうございました。

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