2010年3月12日金曜日

96丁目、雪の降る夜に


 昔々、私はNYCの西96丁目のB&Bに10日ほど滞在していた。その日は、朝早く出て、ワシントンD.C.まで鉄道を使い、USホロコースト博物館に行って来た。メリーランド州を走る帰路、もう春だというのに雪になった。ペンステーションで、地下鉄のC列車に乗り換え、96丁目駅に着いた。「セントラルパークも明日は銀世界になるなあ。」と思いつつ、B&Bの前で煙草をふかす。最高のB&Bなのだが、禁煙なのであった。
 そこに、B&Bの上階に住む青年たちが帰ってきた。彼らは私がB&Bのゲストだとすぐわかったらしい。「どこから来たの?」と金髪女性。あと2人は男性である。5分ほど話をしていた。すると、1人の男性が向かいのアパートメントの階段に座るホームレスらしき黒人を見つけたらしい。さっと彼の方へ行くと、$1札をかざして、「ゲット・アウト!」と叫んだ。金髪さんは、「しかたないのよ。」と映画のようなジェスチャーをした。このあたりは、静かな住宅街で、家賃も高いらしい。ホームレスが出没すると治安が悪化し、価値が下がるらしい。アメリカの実相である。
 翌日、コロンビア大学へ行った。昼食は、近くの¢50のホットドッグ。入ろうとすると、松葉づえをついたでかい黒人が「ここのパイナップルジュースはうまいぜ。」と言ってきた。私は、パイナップルジュースは嫌いなので、無視してコークを頼んだ。食べていると、彼がまたやってきた。「どこから?」「大阪。」「どれくらいNYCにいるのかね?」「10DAYS」「これからどこへ?」「ブルックリンにでも行こうかなと思ってる。」などとたわいのない会話をした。食べ終わったので、出ようとすると、彼は、「グッバイ、ブラザー。」と言った。感激した。まるで映画の1シーンではないか。これもアメリカの実相。
 その数日前、ミュージアム・マイル(5番街のセントラルパーク東側の道である。)での出来事である。メトロポリタン美術館を出て、ベンチに座って煙草をふかしていると、南から老人夫婦に連れられた黒人の子供が歩いてきた。どうやら黒人の坊やは、身体に障害があるらしい。しかし、老夫婦は、幸せいっぱいの笑顔で歩いてくる。アメリカでは養子をもらうのに、人種や性別を指定できない。3人は、私の前を歩き、マンハッタンの夕陽を浴びて、北の方へゆっくりと進んでいく。まるで後光がさしているようだった。私は感動して泣きながら手を合わせた。これもアメリカの実相である。
 
 今もアメリカに黒人差別はあるのか?私の覗いたアメリカの黒人の姿は様々である。生徒諸君にはいつも見てきたことを、そのまま話すことにしている。ただ、ノースカロライナのニューバーン高校を視察した時、ALTの父親である教頭先生に、黒人生徒が多い公立校なので、もう差別などないと思って質問したら、「テーブルの下での差別はある。」と回答されたことがある。これもアメリカの実相である。

3 件のコメント:

  1. penstationには苦い思い出があります。JFK空港からペンステーションに向かう時に警備員に連れられて車に乗ってしまい、旅の初日で2万五千円奪われました(現金で持っていたのは3万で、そこから一カ月の旅行なのに!)。
    しかもその後、夕食を食べるためによった小さなグロッサリーでサンドイッチをどうするか選んでいたら、いきなり叫びながら店に入るラテン系の男と手を挙げる店員!一日で二回死ぬ思いをしましたが、結局入ってきた男は店員の知り合いで、店員とハイタッチしていました(何たる国アメリカ!)。
    ヴァーモントの白人は友達の友達の私(留学生でもなんでもない)を歓迎してくれて白人には割と良いイメージなのですが、黒人を差別してるのも白人なのでそれもまたアメリカの実相なのでしょう。

    昨日のエントリへの返信ですが、私はお金を稼いで、それを社会へ還元したいと思っている派です。なので元ライブドア社長の堀江さんの考えと共感できる部分がかなりあります。
    ただなかなかわかってもらえないので、堀江さんのように「お金があれば何でも」というよりも「お金がなくても」というスタンスを取っているわけです。
    実際、みんなが幸せであればそれでいいので、自己実現というよりもベーシック・インカム論者なわけです。

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  2. コメント長くなってしまいました。ちょっとお酒が入っているので御容赦ください。

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  3. 結局、経験が異文化理解の根底にありますよね。自分のカテゴリー(経験)によって人間は認識するのであるというカントの先天的認識形式は真理であると思います。
     お金を稼がねば、何もできません。「ページ」に、アフリカ開発経済学テキストV3.01と、私の渡航歴のページをつくりました。渡航歴で、ほとんどこずかい程度でいった旅が5件あります。渡米第1回目と、6回目、アフリカ行第1回目と2回目、中国行第4回目です。ありがたいことです。同時にリーマンパッカーはつらいよというところですか…。

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