2023年8月25日金曜日

ジャイナ教のブックレットⅢ

神戸 北野町のジャイナ教寺院
http://blog.livedoor.jp/tkaratsu/archives/51227058.html
「ジャイナ教徒は何か」(上田真啓)のエントリー第3回目。本日は主に在家信者について。ジャイナ教には、大誓戒と小誓戒という、出家と在家の護るべき戒律の違いがある。当然出家者の大誓戒は、在家信者の緩やかな小誓戒より、完全な形をとる。最も大きな差は「不所有」で、不必要なものの所有は許されないとはいえ、出家より圧倒的に所有が許されている。

在家信者は、現世の幸福や来世において良い境涯に生まれ変わることを目的にしている。不殺生を始めとした5つの誓い以外に、追加の7つの誓いがある。3つの徳戒と4つの学習戒と呼ばれるものである。内容に関しては時代や派の違いはあるが、その徳戒のうちの「方位に関する誓戒」は移動の制限である。これはむやみに移動し生き物を害することがないようにというもので、「不殺生」に繋がっている。学習戒には「布施に関する誓戒」があり、出家修行者への托鉢/布施に主に関係する。

仏教でも上座部などでは盛んに在家が出家に托鉢/布施を行う。在家が功徳を得る宗教行為であることは共通しているが、ジャイナ教の布施には「不殺生」が貫かれている。出家者は托鉢で命を繋いでいる。白衣派では、1日2回、夜明けから日没の間(暗いと不殺生戒を犯す可能性がある)に、予想や計画なしにランダムに歩き回り、集団が逗留している場所に戻ってから分配する。托鉢で得る食材は、家族の食事が終わった後の時刻の「余り物」でなければならない。(=托鉢の偶発性)豪雨、強風時や空中に虫が多数飛んでいる時は托鉢にでかけない。

在家信者は、托鉢/布施の際、世俗的欲望や怒り、高慢、欺瞞、貪欲などの激情のない状態で行うこと。出家に適切な敬意と適切な時間に施すこと。その出家に施しものが適していること。施す価値のある者に適切に施すこと。などの戒律があるが、何より、「生命体としての価値を完全に取り除かれた物」だけを口にしなければならない。食の規定としては、自然死したものを含む肉類、蜂蜜、いちじく類の果物、酒類、ろ過されていない水以外にも、無数の微生物がいるとされる「葉のもの、湿った食材、発酵食品、腐敗した食材」そこから新たな生命が生まれる「玉ねぎ、大根などの根菜類、イモ類」多くの種を持つ「ザクロ、ナス、トマト」なども食べない。ただし、インド文化の緩やかさもあって、各家庭で様々であるようだ。

グジャラート州にヒンドゥー教徒として生を受けたマハトマ・ガンジーとジャイナ教徒の関係は深い。危惧する母親に酒と情勢に手を出さないと誓わせ、英国留学を後押ししたのがペチャルジー氏というジャイナ教徒であり、帰国後、ラーイチャンド氏というジャイナ教徒に多大な影響を受け、自らの思想を形成したとされる。…後のガンジーの独立運動での非暴力主義は、ジャイナ教の影響が強いだろう。

…不摂生というジャイナ教の根本戒律はかなり徹底されている。このことで「業」(=カルマ)が減少していき、やがて解脱し輪廻から開放されるという考えは、仏教にたしかに近い。実に興味深い宗教であるわけだ。最後に、地理B的な考察。在家の人々は、「不殺生」故に農業は出来ないし、商工業者となったが「不所有」と「布施」だから、ジャイナ教寺院は実に豪華でもあるし、多額納税者としてもインドを支えている。

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