2022年3月3日木曜日

国連 ロシア非難決議 考

https://www.afpbb.com/articles/-/3392932
いろいろな情報が入り乱れており、ウクライナ問題、いや戦争と言ったほうがいいのだろうが、今日は現時点ではっきりしている情報(国連のロシア非難決議)をもとに今考えていることをエントリーしたい。

本日の国連総会でロシアへの即時撤退を求める非難決議を賛成141カ国、反対5カ国、棄権35カ国、(無投票12カ国)で可決した。

https://www.huffingtonpost.jp/entry/united-nations_jp_62201364e4b0a7b54cd909c1

反対した5カ国は、ロシア、ベラルーシ、北朝鮮、シリア、そしてエリトリア。       

…当事国であるロシアとあとの3カ国は当然である。エリトリアは、エチオピアから分離独立した紅海沿岸の国で、難民を大量に出しているこれも独裁国家である。独裁国家へのシンパシーだろうか。なんとなく理解できる。共通点はそもそも西側から非難轟々故に怖いものなしである。ここに、中国とイランが入っていないのは、さすがに反対票は…という逡巡があったのだと思われる。

棄権は、中国、インド、アルジェリア、アンゴラ、アルメニア、バングラディシュ、ボリビア、ブルンジ、中央アフリカ共和国、コンゴ、キューバ、エルサルバドル、赤道ギニア、イラン、イラク、カザフスタンキルギス、ラオス、マダガスカル、マリ、モンゴル、モザンビーク、ナミビア、ニカラグア、パキスタン、セネガル、南ア、南スーダン、スリランカ、スーダン、タジキスタン、ウガンダ、タンザニア、ベトナム、ジンバブエ。

無投票は、アゼルバイジャン、ブルキナファソ、カメルーン、エスワティニ、エチオピア、ギニアビサウ、モロッコ、トーゴ、トルクメニスタンウズベキスタン、ベネズエラ。

賛成国は、多いので割愛。

…まず注目したいのは、元CIS諸国(下線のある国)。反対したのはベラルーシのみ。棄権はアルメニア、カザフスタン、キルギス。無投票はアゼルバイジャン、トルクメニスタン、ウズベキスタン。賛成はウクライナ、モルドバ、ジョージア(旧グルジア)。ロシアと関係の深いCISとしては、棄権もしくは無投票が無難なわけだ。ジョージアは、親西欧反ロシア姿勢が明確なので賛成は当然。モルドバは、中立的な立場であるが、国内に親ロシアの沿ドニエストル共和国を抱えているため、今回は反ロシアという態度を明確にしたといえるだろう。

…棄権している国では、過去にソ連時代から(経済支援・軍事支援も含めて)影響を受けてきた左派政権だった国が多い。欧米諸国とロシアを天秤にかけた結果、賛成票まで踏み込めなかったのだろう。中国、インド、アンゴラ、ボリビア、キューバ、エルサルバドル、モザンビーク、ニカラグア、ベトナムなどである。赤道ギニアなどは、エリトリアよりちょっとマシくらいの独裁国家だし。ジンバブエも今やはっきりと反欧米を掲げれなくなったわけだ。無投票というのは、国連総会欠席国と見るべきだろう。ブルキナファソはクーデター後と金鉱爆発で大変なんだろう。ベネズエラもは経済破綻で反米を言っている状況ではないのだろう。またラオスは中国に経済支配され外交権を奪われたような気がする。

…賛成国で意外なのが、ミャンマー軍事政権。かのリビアも賛成に回っている。過去にNATOに痛い目にあったセルビアもである。内戦の収まらないソマリア、そして支援してくれているイランが棄権してるのにイエメンが賛成票である。

…国連の決議の票を見ると、利害の計算のみで投票されたように思う。まあ外交というのは国益を重視するのは当然といえば当然なのだが、特にEU側(中立国の誇りを持っていたが徐々にNATOに寄りだしたスェーデンも含めて)は、ウクライナに武器を贈り支援しているが、SWIFTでは、及び腰(全てのロシアの銀行のドル決済を禁じたわけではない)である。ロシアのガス供給の余裕をもたせているようだ。ロシア国内では、ルーブルが大下落し民衆はパニックにはなっているが、肝心の経済中枢は生き延びているようだ。(最終兵器として全面禁止を残した二段階)戦略かもしれないが、深いところでEUは、経済的損害をできるだけ回避しょうともくろんでいる。結局、出来レースなのかという疑念がある。

愛国心に燃え、老いも若きも女性まで命がけで戦っているウクライナの人々の安全が第一ではないのではないのか。戦争とは、かくも残酷なものである。このところ世界史を研鑽していて思うのは、国家間の戦争において、(親族・知人にとっては重くとも、不特定多数の)ヒトのイノチほど軽いものはないということだ。

…あるアフリカに深く関わっている人物のYou Tubeで、戦争反対という前提で、批判を恐れずに言えばという前置きがあって、「今回のウクライナ戦争は白人が被害者であるということで大きな問題になっているのではないか?」という意見があった。確かに、アフリカの様々な紛争は無視され続けてきた。ルワンダの時も、ウガンダのときも。あのソマリアで米軍が引いて以来、報道も支援も今回の規模の何百分の1ではないか、という主張だ。アフリカ・ウォッチャーである私もそういう視点に対して同感である。

…マスコミは、大いに悲惨さを垂れ流している。プロパガンダも未確認情報も垂れ流している。何が正しくて、何が悪なのか。アメリカは、こういう善悪二元論的思考が大好きだが、ロシアだけが悪だとは私は思わない。決議案に賛成票を投じた側も悪、棄権した国も悪なのではないだろうか。とにもかくにも、早期に平和を回復して欲しいのだが、残念ながら平和学ではその反対(紛争仲裁は双方が疲れるまで待て)のセオリーが主流である。

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