2020年2月24日月曜日

マハティール氏の辞表提出

マハティール首相が国王に辞表を提出したらしい。ここは、元宗主国イギリスのロイターの報道が最も信用できると思うので、これを中心に読んでみた。そのうえで私の私見もいれておきたい。

まず歴史的前提。マハティール氏の前政権時、副首相だったアンワル氏と対立し、失脚させた歴史がある。失脚どころか刑務所送りにした。凄まじい権力闘争だった。ちょうどアジア通貨危機直後マレーシアの危機存亡の時である。IMFの支援を断り、マハティール氏は自力でマレーシアを立て直した。その後を託したナジブ政権の親中国路線と腐敗に対し、2018年野党をまとめて再度立ち上がる。この時、アンワル氏を後継とすることを明言し、仲間に引き入れたのだ。しかしながら、アンワル氏に禅譲しないまま、ここまで来た。アンワル氏支持派は業を煮やしており、与党内の対立が深まっていた。

次にマハティール派の動き。野党の一部と協議しており、マハティール首相を今一度擁立する可能性があるとのこと。つまり、”アンワル外し”である。

さらにマレーシアの憲法からの解説をすると、首相は国王が(事実上指名)・任命することになっている。マレーシアは議院内閣制の国であるが、行政権は、国王にある(第39条)。一方、第40条(1)には、まさに明治憲法下の如く、内閣の輔弼を受けると言ってよい規定がある。と、同時に(2)には首相の任命・国会の解散については自由判断を与えられている。

<参考:マレーシア憲法>
第39条 連邦の行政権は最高元首に付与され、かつ連邦法、あるいは第2付則の諸規定に従い、最高元首あるいは内閣あるいは内閣のおずれかの閣僚によって行使されるものとする。(後略)
第40条(1)最高元首は(中略)別に規定される場合を除き、内閣あるいは内閣の一般的権限のもとに行動する一大臣の助言に従って行動する。(後略)(2)最高元首(=国王)は次の機能を果たすに際し、自己の自由判断により行動することができる。首相の任命、議会解散の要請に対する同意の保留(後略)

と、いうことで最高元首たる国王が、首相の指名・任命が自由判断できる状況にあるわけだ。国王の立場からすれば、アンワル氏に託すか、マハティール氏に託すか、国会の勢力図を見ながら判断することになるだろう。混迷しているようであれば下院の解散・総選挙という決断もありうるわけだ。

現在、マレーシアは最大の輸出相手国である中国の経済失速・信用失墜を受けて、厳しい経済状況にある。株価も下落し、リンギ安も進んでいる。この状況下で、マハティール氏は与党内のアンワル派を切り、野党から補充し、過半数を維持するという選択をしたのではないかと思う。日経の報道では、アンワル氏との会談後に、国王に辞表を提出したとある。私は、これをマハティール氏がアンワル氏の説得に折れたとか、対立して感情的になったというのではなく、予定された行動であったように思う。

日本の戦後政治史を描いた「小説吉田学校」を昔読んだが、こういう権力闘争は十分にありうることだ。鳩山(一郎)政権をつくった寝業師・三木武吉は「誠心誠意嘘をつく」という名言を残している。政治は結果が全てである。禅譲で政権が譲られた例は少ない。したがって、私はマハティール氏が嘘をついた=悪だという判断はしない。今回の辞表提出は、危機的状況下を自分に有利、アンワル氏に不利と見て、政界再編のチャンスと捉えたと見ているわけだ。さてさて、実際のところはどうなのか、これからも目が離せない。
https://jp.reuters.com/article/malaysia-politics-idJPKCN20I0LP

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