2018年6月28日木曜日

佐藤優 いま生きる「資本論」3

http://paintingandframe.com/prints/others_poster_depicting_karl_marx_friedrich_engels_and_lenin-3919.html
マルクスとエンゲルスの意外な話も、”いま生きる「資本論」”に載っている。備忘録的にエントリーしておきたい。

マルクスは、プロテスタントに改宗したユダヤ系のエリートの家に育った。当時のユダヤ系のエリートは学校に通わず、家庭教師をつけるのがステイタスだったようで、ギリシア語やラテン語の文系の家庭教師に習っていた。算数などは、下品な商売人がやるものだから必要ないというわけで、マルクスは極めて優秀な頭脳を持ちながらも、数字をいじるのは超苦手だったようで、資本論にも四則計算以外の数式は出てこない。マルクス主義的経済学では、マルクスは無謬という立場なので、変数を加えて数字を合わせている研究もあるそうだ。第三巻の序文にエンゲルスは、マルクスの数字が合わないことを嘆いている箇所があるそうな。

マルクスもエンゲルスも、第一次インターナショナルを結成したぐらいなので、革命家っぽく感じるけれども、素顔はだいぶ違うようである。マルクスは、妻イエニーの持参金で生きていたが、彼女が天然痘になってしまい、彼女の女中に手を出し、しかもエンゲルスに認知させている。3人の娘も病死したり自殺したりしている。マルクス自身はボルドーのワインを愛したような贅沢を好む人物だったらしく、エンゲルスへの無心の手紙に、「俺にプロレタリアートのような生活をしろというのか」というのがあるらしい。向坂逸郎の「マルクス伝」にあるそうだ。…うーん、なんとなく野口英世である。

エンゲルスも裕福な資本家の家に生まれ、資本主義の矛盾に気づいたまではよかったが、「俺が労働者になるわけにもいかんから」と、厩舎に自分の馬を持ち、凄いワインセラーもあったらしい。金持ちに生まれたのは自分の宿命ととらえていたという。で、人間としてはきびしいが、優秀な頭脳をもつマルクスを応援したということになっている。…うーん、太宰の楽天主義者版かな…。

倫理の資料集などには、マルクスは極貧の生活を送ったとよくあるのだが、本当のところは、だいぶ違うようだ。なんだが、ロシア革命後の、マルクス・エンゲルス・レーニンなどが赤旗の上に描かれて、崇拝されているのを見ると、なんか違うんではないか、と思ってしまう。

0 件のコメント:

コメントを投稿