2017年8月23日水曜日

IBTの話(119) 難民問題

http://eumag.jp/question/f0115/
総合科目の授業は、いよいよ社会学的な内容に突入しているのだが、先日国際関係の分野で難民問題を論じた時の話を今日はエントリーしたい。

現在、難民問題と言えばやはりシリアの内戦の原因や状況に関わる話にどうしてもなる。ISについては欧米的な国民国家への反駁であるというのが学習の最大の眼目になるのだが、これは、第三者である中華系の学生以上に、カリフ制の意味を熟知しているムスリムであるマレー系の国費生の方が容易に理解できるようだ。ともかくも、みんな興味深く聞いてくれた。

次に、難民の受け入れという視点からも考えてみた。EU諸国も様々で、労働市場や経済的余裕、宗教的な立場、それらのメリット・デメリットがあることを確認したうえで、「では、マレーシアに難民が押し寄せてくるとしよう。」と聞いてみた。

ロヒンギャの人々の受け入れについては、同じ東南アジアに住むムスリムとして、受け入れは当然であるというのがマレー系の国費生では、全員といっていいほどの意見であった。
では、もし中国本土に何かあって、「中国系の人々がマレーシアに難民申請してきた場合は如何?」これには、マレー系の中でも意見が分かれた。「やはりマレーシアに経済的な余裕があれば、難民は受け入れるべきだと思います。」「だが、現在のマレーシアの民族構成のバランスが崩れるかもしれないよ。」と私。みんな、うーんと唸ったのだった。難民の受け入れというのはきれい事ではないわけだ。

中華系の我がクラスでも、同じ質問をしてみた。「遠い親族が来たら受け入れることになると思います。」という意見も当然あった。ちなみに以前聞いてみたのだが、同じマレーシアの中華系であっても、広東系、潮州系、福建系、海南系、客家系など出自は様々で、使う中国語も微妙に違うそうだ。マレーシアにおける民族構成のバランスの変化の話では、これまたみんなが唸ったのだった。

日本の高校生に、難民問題をこういうカタチで質問しても、きっとポカーンとするしかないと思う。だが、多民族が共生するマレーシアでは、かなり切実な問題になるのである。

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