2017年8月19日土曜日

日経文庫 石油を読む

何度かエントリーしているが、KL日本人会のロビーに無人古本コーナーがあって、私は非常に重宝している。職員室の机の引き出しいっぱいにRM1の新書や文庫本が詰まっている。(笑)

ところで、IBTで使っている総合科目のテキストの改訂版が出版され、以前、帰国した先生にマレーシアに運んでもらった。今使っているものと見比べてみると少し違いがある。社会学的な部分には特にエネルギー問題が追加されていた。そこで、テキストの補足説明プリント用に、石油のこと書き添えることにした。絶好の参考資料を古本コーナーで手に入れたからである。まずは、日経文庫の「石油を読む」(藤和彦著・2005年8月発行)である。少し古い資料だけれど、なかなか面白かった。著者は通産(現経済産業)省の元官僚の専門家である。

改訂版テキストには、国際石油メジャーとOPECの話が書かれてある。実はこれはもう古いのである。国際石油メジャーの生産高は10%くらい。OPECも40%弱で、市場を引っ張る力がない。石油は価格カルテルで支配されている、というのはすでに神話である。現在の国際石油市場は、NYの先物取引市場が中心で、テキサスのWTIの取引が大きな影響を与えている。この市場は投機性がかなり高い。というのも、「市場の失敗」であるからだ。これをIBTの学生に伝えたいと思った。情報の対称性がないのである。凄い話だが、世界の原油生産は、供給量も消費量も、各国の備蓄量も全くといってわからない。アメリカ一国のの資料は信用できるかもしれないが、OECD全体の統計が出るのが2ヶ月後で、しばしば数値の変更がなされる。非OPEC諸国に関してはいわずもがなである。要するに、需要量も供給量も情報がはっきりしていないわけだ。だから、産油国の政変や様々な憶測が価格に変動を与えるわけで、完全にカジノ化しているといってよい。
一方で、石油の価格弾力性が低いという問題もある。石油は発見、開発に莫大な費用と時間がかかるし、生産量の維持にもそれなりの設備投資が欠かせない。しかし、一度稼働するればその費用は安価なので、石油価格が多少上下しても供給量は変わらない。需要に関しても、価格が上がっても航空機やガソリンの需要が激減するわけではない。こちらも価格弾力性が低いわけだ。石油という商品と市場に関する質問を基礎的な経済学を学んだ学生にぶつけてみようと思う。

ところで、この本の画像を探していたら、第3版まで出ていることを発見した。うーん。これは…。やはり最新版を読みたいところだ。

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