2015年12月4日金曜日

毎日 過激思想は共通課題?

トルコ共産党の旗の画像らしい。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm26967389
毎日新聞の今日の朝刊「金言」は、西川恵客員編集員の「過激思想は共通課題」と題したものであった。数年前に日本在勤のトルコの外交官が「冷戦時代、トルコ共産党の党員とはよく激論になったが、会話が成立した。しかし、イスラム過激派といわれる人とは話が通じない。彼らの論理の飛躍と狂信的なものには、イスラム教徒であるわたしもついていけない。」と言った話をもとに、共産主義思想の過激化(70年代の日本やドイツなどの「赤軍」や毛沢東時代の大躍進・文化大革命、ポルポト政権下の虐殺を例に出している。)は、国内にとどまっていたのに対し、ISは国際的な広がりをもっていると指摘、(共産主義も)イスラムも、都会的な匿名社会の疎外に問題があるというアルジェリア紙の社長の言を引いてまとめている。

…私は、この「金言」、かなり視点がすれているように思う。まず、トルコは、イスラムの中でも最も早く政教分離し「領域国民国家」たることを目指した国であるという前提がある。次に、現在過激派と呼ばれているISなどは、(過激と言ってもいいと思うが)イスラム復古主義者であるという認識がかけていること。彼らは「領域国民国家」を否定する。イスラムの神定法、カリフ制の下で、自由な往来を認めるアナーキズム的な共同体再構築を目指していることが顕著である。

彼らから見れば、トルコをはじめとした多くのイスラム教国は、神の定めたイスラム共同体を、西洋近代国家論に従い分割している(といより、分割された)と見えるだろう。そこには、キリスト教的な人定法で「法の支配」が優先される民主主義社会が形成され、さらに各国の国民という縛りが生まれ、資本主義の利益が優先されるようになっている(と、いうより堕してしまった)と見えているはずだ。復古主義者の彼らと、領域国民国家の官吏では、当然ながら話が成立しないだろうと思う。ただ、復古主義者でない領域国民国家に住み、それを是としている普通のイスラム教徒からみれば、論理の飛躍・狂信的ということになるのだろうとも思う。この違いを明確にしておくべきだ。

…ところで共産主義思想は、本来的にはキリスト教世界の二元論から、階級闘争として組み立てられたものだ。その後、領域国民国家(ソビエト=ロシア)の成立を目指したスターリニズムと、世界革命をめざしたトロッキズムに分裂した。70年代の赤軍はトロッキズムの流れを汲んでいるから、金言にあるように必ずしも国内に留まっていたわけではない。中国でも基本的には、世界人民大団結万歳の文字が長く天安門に掲げられていた。

西川氏の論はこのあたりの視点も欠落している。しかも現在のISとひっくるめて、疎外された人々によるもので「過激思想は共通課題」などど言われると、うーんと唸ってしまうのである。基本的な社会思想史と一神教理解があれば、思わず首を捻る今日の金言であった。私は、毎日新聞のコラムは、意外な視点が提示されていたりして、いつも楽しみにしているので残念である。

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