2013年4月23日火曜日

人口支持力から世界史を見る。

開発経済学から世界史の始まりを見る時、「人口支持力」という視点が最も重要ではないかと私は考えている。文明の始まりは、メソポタミアやナイル流域など、乾燥地帯に外来河川が定期的な洪水を起こすところから始まっている。小アジアの山脈の雪解け水や、サバナ地域の雨季といった降水量の変化が生む「妙」であるが、その際に豊かな土壌を運んで来るわけだ。労せずして肥料を得れるようなもので、農業生産性が自然と高くなるわけだ。しかも、その生産性をさらに高めるためには測量や土木技術、暦などのスキルが必要となる。人口支持力とは、その地域の食糧生産量がどれくらいの人口を養えるかという事である。メソポタミアやナイルは、その人口支持力に余裕が生まれたからこそ、農業を行わないスキルを高めた専門家を養うことが可能となったし、都市を育むことが可能になったのである。

一方、ギリシアでは、その国土自体、山がちで人口支持力が高いとはいえなかった。だからこそ植民市を建設していくことになる。植民市が広がっても、ギリシアはアイデンティティを失わなかった。それが、ギリシア語であり、ホメロスであり、ギリシアの神々であったわけだ。人口支持力の低さが偉大なるギリシア文明を生んだとも見える。このような視点がないとギリシアがわからないと私は思う。

全国的にカリキュラム改編の時期で、本校では私の教えている2年生から世界史Bは2年で2単位+3年で2単位の計4単位になってしまった。(私が赴任する前に決定されていた。ちょっと信じられない。)どうしても学習範囲を精選しなければならない。オリエントは面白いのだが、3時間くらいで駆け抜けた。その基軸が「人口支持力」であったわけだ。無理にシュメールやらアッカドやら、国名を詰め込むよりは、歴史って面白いなあと思わせることに重点を置いた格好だ。

もちろん、授業の内容は上記のような理論的な話だけではなく、雪解け水を理解させるためにはキャンディーズの歌も歌う。授業はエンターテーメントだ。(笑)「人口支持力」から見る世界史B。ギリシア理解とも重なって、まあ成功かなと思う次第。

2 件のコメント:

  1.  こんばんは。A・Yです。
    いま思い返すと、先生にはユニークな世界史を教わった気がします。ギリシア・ローマにしろ、中国にしろ、中世にしろ、人口支持率を中心に据えて話が広がっていき、すでに懐かしい気もしますが、面白かったです。
     
     ところで世界史Bが四単位になるというのはさすがに、ついこの前まで受験生をやっていた者としては驚きました。どの現役受験生でも社会科には手を焼くものだと聞きますし、それこそ勉強量が点数に直接につながる科目だと思うので、授業数は増えこそすれ減ることはないと想像していましたが、まさか減るとは、ちょっとびっくりします。
     

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    1. A君、コメントありがとう。世界史Bは4単位になったが、日本史は2年生で4単位になり計6単位になった。まあ、受験は日本史でやるべしということかなあと思う。地歴なら日本史のほうが一直線なので平易であるとは思うが、うーんと唸ってしまうのであった。このカリキュラム決定時に私はいないので、責任はないのだが、どうもね。旧カリキュラムでよかったよなあ。(笑)受験の世界史「関関同立」コースで本気でやれば、最低6単位、できれば8単位欲しいね。(笑)

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