2013年4月28日日曜日

NHK「八重の桜」を応援する理由

NHKの大河ドラマ「八重の桜」の視聴率がどうも芳しくないらしい。私はこのドラマ、面白くて仕方ないのだが、その理由を少し考えてみた。最大の理由は、これまでの幕末・維新ものの中では珍しい「会津」という視点から描いているからだと思う。松平容保という人は、最初は養子という立場故に、幕府を護るという藩是を愚直なまでに貫き、京都守護職となってからは孝明天皇への至誠を貫いた。この辺、ドラマは上手く表現している。会津という超保守的な藩の本質もうまく表現していると思う。会津の人々の美学は十分魅力的だと私は思うのだが、地味に映るかもしれない。

薩長から幕末維新を描くのは、実にドラマチックで面白い展開になる。会津はまさにその「陰」なので、どうしても面白みに欠けるのかもしれない。しかも主人公の八重の日常は会津にあって、さらに地味に映るのかもしれない。ドラマのつくりとしても、大きな問題があるとは思えない。ひとつだけ、あれ?と思ったのは西郷が蛤御門の変の時、乗馬姿だったシーン。西郷は離島に島送りになった際病気になった。,以来馬に乗れないはずだ。それはさておき、会津の敗者の美学は、異様なほどに美しいと私は思うのだが…。

ところで、4月18日に日経のエコノミクストレンドという記事で、東大の澤田康幸教授がTPPについて、面白い論を展開されていた。英米の経済学者の論文を引いて、「日本の幕末と明治初期の比較を行うと、1人あたりのGDPで約8~9%上昇している。」らしい。開国の経済効果は大と言われているわけだ。またアメリカとカナダのFTA(自由貿易協定)によって、カナダは製造業の雇用が約5%減少したが、平均的な労働生産性は約6%向上したという。すなわち生産性の低い企業が退出して、高い企業のシェアが高まるとも。この貿易自由化による企業の選別と生産性改善のメカニズム、ハーバード大学の教授の名をとって「メリッツモデル」と言うらしい。

さしずめ会津は、TPPという第3の開国にあたって、労働生産性の低い企業ということか。薩摩や長州など雄藩は、藩の経済革命を成し遂げ、人材登用も家格にとらわれず、西洋の銃器を購入し、一気に(軍事的な)生産性を高めていく。そもそも経済的にも人材登用でも保守的であった会津藩は、やがて幕末の象徴的なスケープゴートになっていく。

今の日本には、そういう敗北の美学も、効率や生産性よりも矜持を重視するという事も、ウケないということなのだろうか。がんばれ「八重の桜」。

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