2012年7月9日月曜日

ジンバブエのCatastrophe Point

ジンバブエ政府が、外資系銀行や企業に対して「今後1年以内に株式の半分以上をジンバブエの黒人に譲渡せよ」という内容の通告を6月29日付で発表したらしい。ムガベ大統領が、2007年に、制定した法を執行しようとしている。この法には「最低限の現地化と黒人の権利拡大」が義務付けられている。これはえらいことになった、と私は思っている。まさに、ジンバブエが破局に一気に走っていると思うのだ。
http://www.africa-news.jp/news_CXJlABdKF.html
ジンバブエは、独裁政権ムガベによって、完全な失敗国家になってしまった。昔は気候も治安もそして「人」も良くて、アフリカの中でも最高に居心地が良いといわれた国だったのだが、ムガベの稚拙な経済政策と外交(特に対英外交)で、崩壊してしまったのだ。私がジンバブエを一人旅した頃、かつて国の経済を支えた白人農場は、黒人に占拠され、生産性がガタ落ちし、白人は身の危険を感じて撤退していた。思い出す。南アからのバスに乗って、有刺鉄線のはられた農場を見ていると、隣に座っていたマラウイ人のおっさんが、「ホワイト、ゲッタウェイ。」と指さしたのだった。ハイパーインフレが起こる寸前で、後ろのデザインが真っ白の5000ジンバブエ・ドルを記念として今でも持っている。黒人たちの気持ちもわからないではない。白人による植民地支配が、経済格差を生み、ムガベ政権の黒人支配体制確立は、公約として確かに有効な状況だった。特に独立戦争に参加した兵士たちのいらだちが高まっていた。しかし、ムガベは、ここでふんばりながらイギリスと交渉すべきだったのだ。他の英連邦諸国への白人移民を奨励しながら、黒人たちに農業技術や経営のスキルアップをする時間をかせぐべきだったのだ。なにもかもが急激に進み、全ては裏目に出た。経済は崩壊した。私が聞いた首都ハラレに住むジンバブエ人の本音は、「We need White.」という言葉だった。

何事も単純化して見ないほうがいい。勧善懲悪で見ないほうがいい。ムガベは単純化して失敗した。黒人が権力を持てば善というテーゼの代償はあまりに大きかったのだ。最近、ジンバブエドルを捨てて、米ドルと南アのランドに通貨を切り替えてから、投資も再び始まり経済復興の兆しが見えた矢先のこの通告。自ら破局点(Catastrophe point)をつくっているとしか思えない。外資はおそらく全て撤退するのではないか。

上記のグラフは、ジンバブエの実質経済成長率の推移である。前半部は、統計資料がないので空白である。このグラフから読みとれる乱高下、経済状態は尋常ではない。これが、また一気に下がるのは目に見えている。選挙方法もデモクレージーだが、政策自体がクレイジーだと言わなければならない。あの、人の良いジンバブエの人々の顔を思い出すと、やりきれない。きっと、こう叫んでいるに違いない。「We need White」

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