2012年7月8日日曜日

「旭山動物園革命」を読む。

本校では、クラス(学級)文庫というシステムがあって、図書部からクラスに20冊程度の本が出張してきている。1組では、後ろのロッカーの隅においてあるのだが、どうも触れられた形跡もない。先日、期末考査の監督に行った時、そんなカワイソウな本を手にとってみた。その中で目にとまった本、それが『旭山動物園革命』(小菅正夫著/角川ONEテーマ新書・2006年2月第一刷)である。

旭川市にある日本最北の動物園、旭山動物園。今や、北海道観光でも超目玉の場所になっ動物園である。これといった特別な珍獣のいない公立の動物園が、いかにして革命を成し遂げたか、そのポリシー部分も含めてこの本には書かれてあった。

この本の結論(革命の経過)から述べると、入場者が減少し、廃園の声がかかる中、飼育員の方と真剣なミーティングの結果生まれたものである。もちろん、市長が変わり、予算をつけてくれたことも大きい。しかし、この小菅氏の組織論こそが、この本が後世に残る一冊となった理由だろうと思う。小菅氏は、北海道大学柔道部出身。弱小柔道部で部員数も少ない。せめて旧帝大の大会でいい線に行けたらという感じの柔道部だったらしい。小菅氏は、主将になった時に思ったという。スーパースターなどいらない。1人強い奴がいると、他は安心して強くならない。みんな同じような力でもいい。それぞれが真剣に取り組むことが重要だ。この組織論で、成功した経験があるのだ。

だから、動物園に入って以来、飼育員の中で研究会を行い、一人ひとりが自分の伸ばすべき分野を伸ばしながら、他の飼育員の研究をシェアするという方途を取ってきた。廃園の危機に際しても、結局、同じだ。皆の力を最大限に引き出すことに努めてきたわけだ。その最大の成果が、こういう真剣な研究会の取り組みの延長線上にある「見せ方」の工夫である。これについては述べる必要もあるまい。

この組織論、クラスや学校運営にいかに活かすか、そんなことを考えている。先週、久しぶりに文化祭の話し合いをクラスでやった。およその工程を示し、担当生徒に役割分担をしてもらった。で、こんな話をした。
「先日のサッカーのユーロカップでスペインが優勝した。1組はスペインでいく。」「絶対、優勝するってことですかあ?」「それもあるけど、スペインにはFWがいないんや。」「?」「誰でも、シュートできる時シュートする体制だった。今回の文化祭は、クラブで大変な者もいる。責任感の強いものが、役割分担を越えてシュートしてもええぞ。精一杯やろう。」皆、あまり意味がわからかったようだ。要するに、役割分担に囚われるな、本当に文化祭やったろうと思う者に自由な裁量を与えたということなのだが…。きっと、試験中、放課後残っていた連中が頑張ってくれるはずだ。それに期待しているのだった。さっそく来週から、教室の測量を行い、設計図をつくるところから始める予定だ。そう、スーパースターはいらない。

2 件のコメント:

  1. 面白そうです。私も買って読んでみます。

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  2. 非常勤講師さん、お久しぶりです。なかなかいいですよぉ。これがクラス文庫に入っているというのは、本校図書部の慧眼ですね。

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