2023年12月8日金曜日

アフリカの農業 在来知2

https://www.mitsui.com/jp/ja/sustainability/contribution/fund/results/1210545_13007.html
「アフリカを学ぶ人のために」のエントリー第7回目。引き続き、重田眞義先生の「在来知」の章に学びたい 。

現在のアフリカ農業を在来という視点でとらえると、2つの特性が浮かび上がってくる。第1は、それを支える諸要素(作物・生態・気候・文化・歴史・社会と、それらの融合した地域)の多様性を反映していて単調でないこと。第2は、農民の論理、あるいは農民の科学と言って良い在来の理論(在来知)の役割である。極端な言い方をすれば、農学者は、農民がすでに実感している様々な事象を「科学的」に証明しているに過ぎない。このことを「農学の後講釈」と呼んで、在来知の優位性と意義を肯定的に評価してきた。

エチオピア固有のエンセーテという作物に見られる品種の多様性の起源について、農民の科学とも呼べる繁殖特性の把握に基づいた栽培集団の巧妙な増殖方法と、儀礼的な野生集団の保護を通じて、結果を意図しない無意識な行動の積み重ねが、エンセーテ品種の多様性を維持している。農民の行動の動機や理由を実用上の便宜や経済的合理性に求めることができないし、収穫の損失に対する危険回避でもなく、維持されていた。アフリカの農業の多様性と在来知は深いところで繋がっており、その行動は、様々な要素に対して選択的でも排他的でもなく、追加的傾向性をもつからである。

…実にレヴィ=ストロースの”悲しき熱帯”的な趣のある内容だと思うのである。

ところで、持続的な集約性について、アフリカの在来農業は、労働生産性と土地生産性の積で表される生産集積が一定であるという特性を持つ。土地に余裕があれば、労働投入は控え、土地が狭くなれば労働をつぎ込むという生産様式は、生産の拡大を志向しない生活様式のもとでは非常に理にかなっている。外縁的な農地拡大によって生産を確保するだけでなく、集約的な農業も含めた2つの傾向性が見られるのである。ザンビアのチテメネ農法(ユニークな焼畑農法)やタンザニアのマテンゴが営むピット農法(山の斜面に穴を掘りながら梯子状の畝をつくり、土壌侵食を防ぎながら肥沃度を保つ農法)などがその例となる。

…エンセーテのお話も、チテメネ農法のお話も、京大の公開講座で以前お聞きした。実に興味深いお話であった。アフリカの農業開発について、近代的な技術と在来知をどうミックスさせていくか、また急激な生産性向上ではなく、その地域にあったものにしていくか、私などは農学の知識が皆無なのでわからないのだが、実に難しくもロマンあふれる話のように思っている。

0 件のコメント:

コメントを投稿