2023年10月28日土曜日

イスラエルの地上戦 考

https://www.afpbb.com/articles/-/2304409
イスラエルが、ガザに対して、日時は伏せたうえで本格的な地上戦を行うと公式発表した。これはかなり無謀だと言わざるを得ない。様々な情報を元に考察すると、そういう結論になる。

まず、ガザの地下通路の問題。ベトナム戦争時のように縦横に張り巡らされた地下通路に、ハマスの司令部や兵器工場や弾薬庫などが存在しており、通常の空爆でこれらの破壊は不可能。アメリカ軍の貫通爆弾・バンカーバスターなら最大60mまで攻撃可能だが、かなりの高額な爆弾であり、これをアメリカ軍が供与するだろうか。イスラエル空軍のF15には、搭載可能なようなだが…。

情報によると、アメリカ軍のミサイルや爆弾の在庫は、ウクライナに供与しすぎて、かなり数的に厳しいようだ。WWⅡやベトナム戦争時と違い、こういう高性能兵器はそう簡単に増産できないと思われる。2つの空母打撃群とともに運んでいるようだが、国際世論の中、イスラエルに供与できるだろうが、何よりその数は無尽蔵ではない。

アメリカという国は、戦争になると一つにまとまりやすい特徴がある。平時でも星条旗が国内に溢れていて、日本とは噴泥の差がある。多民族の移民国家故に、国家・国民という意識が濃い。だが、今回のハマスとイスラエルの戦争は、毛色が違う。アメリカ本土が攻撃されたわけではない。ハワイやNYCが攻撃されたわけではなく、先日エントリーしたように、国務省内でも反対意見が出ており、多民族国家の民族的な軋轢も生じていくだろう。大統領府や議員は、ユダヤロビーに動かされるだろうが、一般人は、情報過多の中、様々な意見が生じるだろうし、なかなか団結できないのではないか。しかも、インフレと財政難、米国債の価値の低下など経済問題が大きな足かせになっている。アメリカ人は、税の使い道について極めて敏感である。これは、日本のような企業側主体の天引きの納税システムではなく、全て自己責任で納税処理するからである。自分が出した税金がどのように使われているか、アメリカ人は敏感である。莫大な戦費を必要とする今回のイスラエル支援、行きは良い良い、帰りは怖いになりそうな気がする。

イスラエル 戦車博物館にて
イスラエル国内も一枚岩ではない。シオニストばかりではないのである。徴兵されない超正統派は、非シオニズムであるし、実際に死ぬ可能性が高いのは若い世俗派である。彼らは、反ユダヤ主義に立ち向かう世界観を教育で叩き込まれているとはいえ、死ぬのはいやだと考えているはずだ。士気が高いとはいえないと私などは思う。実際、イスラエルの陸軍は、メルカバという世界有数の戦車を保持している。このメルカバ、イスラエル行で戦車博物館で上に乗ったこともあるが、人命優先の装甲になっている。人口がそんなに多い訳では無いイスラエルで兵士の命を守ることは重要だからである。もし、今回の地上戦で多くの人命が失われたら、ソマリア内戦でのモガディシュの戦闘時にアメリカのママが、なぜアメリカの兵士が死ななければならいのと叫んだように、イスラエルのママが叫ぶことになるかもしれない。

最大の懸念の一つに、ガザの地上戦に集中した場合、レバノンのヒズボラが、手薄になった北方から攻撃してくる可能性が極めて高いということがある。いくら強いと言われるイスラエル軍であっても、南北両面の地上戦は圧倒的に不利である。しかも、空軍はまだしも、陸軍は戦車の性能はいいとはいえ、歩兵はそんなに強くないと言われている。地上戦を仕掛けられたら、かなりヤバいのである。アメリカ軍は海兵隊も連れてきているが、そうなれば北部に海兵隊を置くかもしれない。

そんな展開になれば、さらにこの戦争は拡大するだろう。とはいえ、シオニストで強硬派のネタニヤフは、ユダヤの威信をかけて、何が何でもハマスをガザから追い出そうとするだろう。多くの人命が、その威信のために「供物」となるわけだ。国連では、この戦いを止めようとしているが、もう遅きに失している。平和学では、仲裁は初期に失敗した場合、次の機会はおたがいに疲れるまで待たねばならないとしている。どうか私の考察が見事にはずれますように。シャローム。

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