2022年6月7日火曜日

佐久間象山

市立図書館で先日「佐久間象山 上・下」(松本健一/中公文庫)を借りた。歴史小説のところではなく、哲学の棚にあった文庫本である。以前から、象山のことを詳しく知りたいと思っていたので借りたわけだ。

私の象山の認識は、勝海舟の妹の夫、吉田松陰の師匠で黒船密航を認めた当時最高峰の兵学者・洋学者、京で馬上で暗殺されるくらいであった。

この本は、多くの文書・手紙などをもとに書かれた歴史書であって、小説のようにそう簡単に読み進めるわけではない。通勤時に少し読んではウトウトという感じで読み進めている。今日は上巻の70%位を読んだ時点でエントリーしようと思う。

この本は、象山が暗殺された話から始まる。肥後の藩士・河上彦斎に殺されるのだが、この人斬り彦斎(げんざい)は、尊攘派の会合で誰々が悪いという話が出ると、中座して暗殺に及ぶという、無造作はテロリストだった。しかし、象山を斬った後「初めて人を斬る」という感情が沸き起こり震えたという口述書が残っているという。こういう象山の只者ではないというエピソードがふんだんに盛られている本である。

象山は、信濃松代藩の藩士出身である。この松代藩は、真田信之(幸村の兄で徳川側につき兄弟と対峙した。)の藩で、8代藩主真田幸貫(寛政の改革で活躍した老中・松平定信の長男:但し11日後に正室の子が生まれ、側室の子ゆえに公的には次男となり、真田家に養子に入った。)天保の改革時に、水野忠邦によって、外様から譜代に移され老中に抜擢される。特に、海防掛になったことが、後の象山に大きな影響を与えた。象山は、西郷の島津斉彬と同様に、真田幸貫をリスペクトしていたといえる。

そもそもは、象山は朱子学者である。江戸でも認められていたのだが、真田幸貫の海防掛就任とともに、蘭学を学ぶ必要に迫られるわけだ。

…面白いのは、著者は、象山のスタンスについてパトリオットという表現が多いことだ。象山は、藩のためでも幕府のためでもなく、日本という国家のために学び、教えたというわけだ。パトリオットは愛国者という意味の英語だが、日本語ではなくカタカナ英語を使うところが面白い。ちなみに、昔、M高校でアイオワ州アーバンデール高校に行った時、パトリオット・ガイドという冊子をいただいた。アメリカ人として身につけるべき国民的教養(歴代大統領のプロフィール等)や儀式的なセオリー(国旗の取り扱い等)が書かれた貴重なものだった。というわけで、パトリオットという語は英語の苦手な私にとって数少ない属性がある語彙なのである。

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