2013年6月29日土曜日

再考・西アフリカの食糧危機

サヘルの村で、農具を見せてくれるガイドのオマーン。耕すという感じではない。
6月20日付のalteranaというWEBのニュース記事によると、サヘル地域で大干ばつになっているとの話だ。先日、ブルキナの物価高の話をエントリーしたが、食料に関しては、ブルキナの経済成長と言うよりも、この不作による高騰という面が大きそうだ。セーブ・ザ・チルドレンが食糧危機宣言を出し、、ニジェール、マリ、モーリタニア、ブルキナファソで緊急支援を開始したらしい。

アフリカの資源開発に伴う経済成長と、投資拡大というスポットライトの陰で、このような食糧危機を克服することがいかに困難であるかを再考することになる。私のアフリカSDゲームでも、教育・保健医療という基礎的な政策の次に、農業の生産性の向上、特にアフリカの慢性的な穀物輸入体制をどうにかしなければならない、という道筋を設定している。

とはいえ、このサヘル地域における農業生産性の向上をいかに行うべきか、まさに難問中の難問なのである。実際に足を運んだブルキナの北部の乾燥地域は、地力の低い、耕すにも耕せないような土地なのだ。今日の画像にあるが、ガイドのオマーンに農具を見せてもらって、その大変さを実感した。土地が砂地で固く、耕すという感じではない。車窓から何度も農地で働く人々を見たが、土地をなぞっている感じである。ミレットやソルガムなどの雑穀を植えているのだが、カロリーが低いうえに生産性は極めて低いのだ。(当時、NGO:緑のサヘルで活躍していた農学の専門家・Mさんにも講義をしてもらった。Mさんを紹介してくれたIさんにも感謝している。)だから、先日のエントリーで告白したように、ブルキナを舞台にした開発経済学のアクティビティの構想が頓挫したのである。灌漑と土地改良で、農業生産性が向上するのはわかっている。しかし、この地域ではその投資に耐えられるほどの生産物を生み出す力がないのだ。結局、ブルキナの開発をどうすればよいか、私には見当すらつかなかったのだ。

それでも、ブルキナはまだ南部地域の雨量が多いので、ましなのだが、ニジェールやマリとなると、ニジェール川の灌漑を利用するしか方策がない。一方で、人口支持力をゆうに越える人口爆発で、ますます食糧問題は深刻化しているのだ。絶望的な貧困は、紛争に加担する若者を呼ぶ。遊牧の民にとって、紛争とそのための死は日常でもある。こういう本質を論じていくと、どうしても先が見えなくなってしまうのだった。
<alteranaのNEWS>
http://www.alterna.co.jp/9253

2 件のコメント:

  1. いつも興味深く拝見しています。
    最近、なぜか農村での調査をやるようになったのですが、聞き取りをしていて知ったのが、どんなに豊作でも8か月分くらいしか食糧が取れない、ということです。
    我われ「農耕民」の子孫である日本人はこの感覚を身体化することが難しくて、ついつい、「食糧が足りないから出稼ぎに…」などと考えてしまいます。どうも、この順序を少し考え直さないといけないかな…と考えています。
    先日、片倉もとこさんの本を読みました。アラブの乾燥地の人にとって、滞留することは忌避されるそうです。つまり、移動することがよいことで、留まると穢れる、というのです。もしかすると、こういう考えがサーヘルにも当てはまるのではないか、ということです。
    文明史的な話で漠然としてしまうのですが、こういう素材も学生の皆さんと共有されてはいかがでしょう?異文化理解も面白いものですが、「異文明」理解というのも興味深く思います。

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  2. なるほど。荒熊さん、貴重なコメントありがとうございます。最近、旧約聖書の物語を呼んできて、そういう遊牧民的なるものが、漠然と身についてきたように思います。もう少し早くしっかりと読んでおけばよかったと思います。まさに遊牧民的なるものは「異文明」ですねえ。

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