2013年3月8日金曜日

秋田商業高校の新刊

先週、秋田商業高校のO先生から、「ユネスコスクールによるESDの実践ー教育の新たな可能性を探る」という新刊が送られてきた。昨夏、秋田商業高校野球部が甲子園に出場し、夕食を共にしたのだが、その時すでに、この新刊の話が出て、完成を楽しみにしていたのだった。

今回は、秋田商業高校での実践記録というよりは、論文集になっていた。私もよく存じ上げている米田伸次先生、多田孝志先生の論文もあってびっくりした。申し訳ない言い方になるが、一公立高校の出版物だとは到底思えない。やはり、秋田商業高校は凄いのだ。

野球部監督のO先生の論文は、これまでの秋田商業高校のESD実践を概説するものだった。両O先生がつくられたESDの教育システムは、かなり組織的に大きいものだ。すなわち多くの教員を巻き込むものである。これを秋田商業高校は「連携」によって乗り越えている。JICA東北、小中学校、大学、そしてNGO…。O先生はここで、示唆に富む取り組みへの姿勢について述べておられる。
「年間計画は方向性だけにとどめ最小限にする。」教師も楽しむという姿勢が、心の余裕を生むし、生徒に主導権を渡す方が「生きる力」育成に繋がる。次に「青写真を描く」、これは着地点を決めること。自分の立ち位置を決めること。「こんなふうにできたらいいな。」という教師のモチベーションが重要だ、と。この思いがアフリカスタディツアーの実現に繋がったそうだ。
さらに「落とし所を探る」ことの重要性や「足元を見つめ直し、自分の今いるその周辺を大切にしよう」という観点が重要だと論じられている。

さて、この論文集、実はかなり異質なのだ。後半(第4章・第5章)では、ホリスティック教育、スピリチュアリティという視点からESDを論じている。私はこのような視点は正直、初めて読ませてもらった。O先生の研究分野だからだと思う。

ホリスティック教育とは、定義が難しいが、あらゆるものが相互につながりあっていることを知らしめる教育のようだ。詳細は、以下の成田喜一郎先生(東京学芸大学教授)のブログを参照されたい。
http://blog.goo.ne.jp/jzs03765

スピリチュアリティは、これまた定義が難しいが、O先生の論文によると、精神的な(愛、分かち合い、公正、同胞の精神、自由、平和など)人間の志向であるらしい。かなり難しい話だったので、ブログで紹介するには無理がある。詳細は執筆されている金田卓也先生(大妻女子大教授)の研究成果等を参照されたい。

…ESDのワークショップで、ひたすら風や様々な環境の「音」を聞きとって、イメージ化するものを経験したこともある。あの時は、ESDに、こういう視点があることを知らなかった。なかなか興味深い視点なのである。

両O先生、示唆に富んだ新刊、本当にありがとうございました。

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