2013年3月7日木曜日

「経済大陸アフリカ」を読む5

『「経済大陸アフリカ」を読む』も5回目のエントリーとなった。面白い内容だけ拾っても凄い分量になってしまう。今日のエントリーは、そろそろ結論的な部分に入りたい。平野先生の第3章までの主張を要約すると、つぎのようになると思う。

グローバル化の中で中国の資源需要が拡大し、それまで先進国があまり手を出さなかったアフリカの資源開発に手を伸ばした結果、『資本の蓄積と資産性の向上』という経済成長率のセオリーを無視した『レントによる経済成長』が起こった。その結果、多くのサブ・サハラ=アフリカの国が「レンティア国家」となり、アジアのような安価な労働力を生かした製造業で1人あたりのGDPを向上させるというこれまでの開発経済学の常道から遠ざかり、さらに経済格差が広がった。一方で、アフリカは農業に大きな問題(穀物生産が都市化によってさらに脅かされている)という問題を抱えつつも、消費が爆発的に増加している。

第4章はこれまでの国際開発について詳細に論じられている。先進国などのドナー国は、様々な理由づけを行いながらODAなどで途上国を支援し、開発を後押ししてきた。ここには国益が見え隠れする。資源開発で「レント」を得たサブ・サハラ=アフリカの諸国は、今や緊急援助の場合を除いて、ODAより投資を望んでいる。ドナー国は、これから自らも利益を得ながら、その国の豊かさを実現する政策手法を見出す必要がある、ということだ。

この論議を受けて、平野先生は、第5章で、アフリカに進出する企業について述べられる。様々な企業が、アフリカのリスクを乗り越えて頑張っている。特にBOPビジネスは、消費市場を自ら開拓しているし、資源関連の企業は、利益追求だけでなく、CSR(corporate social responsibility)すなわち社会的責任を果たそうとしている。企業の活動が社会に与える影響に責任をもつことは、アフリカでは特に重要である。たとえば、鉱山開発がされるような所は僻地が多い。公共サービスなど期待できない。そこで企業自らがビジネスの枠を越えた開発プログラムを行った方が有利になる。学校も診療所もないところに労働者を投入するのではなく、投資現場とその近郊に対策を施すのである。学校も病院も、そこで働く教師や医者もプロジェクトで雇用するという。従業員以外にも所得機会を与え、現地住民の不満を吸収し(定期的なアンケートを実施しているプロジェクトもあるらしい。)、テロなどから安全を確保するのである。まさに地域総合開発である。

平野先生は、「アフリカにおける最大の発展障害は国境だと考えている。」と言われている。
…企業が国境を越え、CSRやBOPビジネスで政府のガバナンスをも乗り越える。ここにアフリカ開発の一筋の光がある。
だが、消費者であるアフリカの大衆の力はまだまだ小さい。彼らの所得向上がどうしても欠かせない。そこからしか市民社会は生まれない、とも。

…今構想中のアクティビティは、「経済大陸アフリカ」の学びを受けて、サブ・サハラ=アフリカの国の行政マンとその国に進出してCRSを実施する企業マンの合同チームで、持続可能な開発を行おうとするゲームである。その内容については、近日公開。

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