2013年3月27日水曜日

日経 独紙のキプロス分析

キプロスの金融危機が問題になっているが、このキプロスというのは、キプロス島南部のギリシア系(公用語がギリシア語で、正教会の信者が多い。)を一般にさし(国連加盟国のほとんどが承認)、北部はトルコだけが承認している別の国(トルコ系・トルコ語でイスラム教スンニー派の信者が多い。)だということは日本ではあまり知られていないのではないかと思う。最近の地理教育では、ますますそういう重要な事実を学ばない。中学でも薄っぺらな、それも限定された地誌しか教えないらしいし、高校では文系で地理を選択する生徒が減少している。地理の教師としては寂しいかぎりである。今日の日経に、ドイツのフランクフルター・アルゲマイネ紙の「混迷するキプロス-大国、資源や基地を奪い合い-」を翻訳・転載している記事があった。これがなかなか面白かったのだ。

この記事は、ヨーロッパ人にとっては当然の上記のような常識の上で書かれている。要するに、キプロス(南キプロス)の敵は、トルコなのである。そもそもギリシアとトルコは今も極めて仲が悪い。で、敵の敵は味方である。歴史的に見てもトルコには、もう一つの敵がいる。ロシアである。トルコは今もカフカス地方に影響力を持っており、ロシアは常に牽制しているのだ。ロシアも正教会であり、同じ正教会のキプロスを重要視することで睨みを南からもきかせているわけだ。ロシアのマネーがキプロスに流入していたのは決して偶然ではないのだ。

一方、キプロスは旧イギリス植民地であり、不沈空母としてイギリスは基地を有している。イラク戦争時には、ここから出撃した。ロシアは、今内戦で揺れているシリアに基地を持っているが、さすがにキプロスに基地を持つことはEUが許さないだろう。ちなみに、キプロスは、EUには加盟しているが、NATOには参加していない。もっと言うと、トルコはNATOに参加しているが、EUには入れてもらえていない。きな臭い中東情勢を鑑みる時、キプロスは地政学的にも極めて重要な島なのだ。

ところで、キプロスでも天然ガスが開発され有望視されている。この天然ガスを液化するプラントで投資するのが期待されているのはイスラエルだという。うーん。イスラエルまで絡んでいるのか。

こういう複雑な状況がキプロスにはあるわけだ。今日は、なんだか池上彰みたいなエントリーになってしまった。(笑)

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