2012年11月7日水曜日

国民健康保険を買うアメリカ人

さきほど、オバマ氏がアメリカ大統領選を制したらしい。ところで、本校にオーラルコミュニケーションを教えにきてくれている先生は、マサチューセッツの出身ということもあって、ロムニー氏を強く支持していたらしい。(英語のY先生の話。)

彼と大統領選の話になって、まず出てきたのは民主党の国民健康保険制度批判である。Y先生によると、彼は「健康保険」に「買う」という動詞を使うらしい。もし、一律にすれば、同じ医療しか「買う」ことができなくなる。それは医療の質が低下につながると主張した。「どう思う?」とY先生。

私は、彼の考えは極めてアメリカ的であると思う。何故彼は「買う」という動詞を使うのか?実は、この根源には『近代国家論』が潜んでいる。国民健康保険という制度は、そもそも何故生まれたのか?それは、資本主義社会において、貧困に苦しむ労働者階級への『アメ』なのである。ビクトリア女王時代のイギリスやビスマルクのドイツ以来、だんだん制度化されてきた。それはすなわち各国政府にとっては、社会主義化を防ぐための『装置』の1つだったのである。

ところが、アメリカには、そういう『装置』自体が必要なかった。アメリカは資本主義の総本家だという意識が強く、アメリカ共産党という組織はあったが、事実上社会主義化の危険性をアメリカ連邦政府は全く感じていなかったのだ。貧困から抜け出すためには、努力すべしというピューリタン精神が主流で、「赤狩り」などということが平然と行われたし、ニューディールなんかはかなり社会主義的だが、アメリカのプラグマティズム的精神で許容されたのだと思われる。だから『アメ』の必要がなかったのだ。

彼が「健康保険」や「医療」に「買う」という動詞を使うのは、したがって当然である。資本主義は自由な競争が何より重要視される。そして全ては商品経済なのだから。アメリカを身近に感じている日本だが、こういう(世界史的知識が必要だが)地味な異文化理解、面白いではないか。

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