2023年4月25日火曜日

東大のクールな地理

訳あって東大の地理(前期試験の記述問題)の研究をしている。25年間の過去問をアマゾンで注文して見たのだが、実は問題自体は奇問難問ではない。問題は国語力で、いかに短く的確な記述で解答できるかが問われる。これは、現役高校生にはかなり難しい。

ところで、先日期日前投票に行った時、支所の横にある地元の市立図書館で、「東大のクールな地理」という河合塾の東大の地理担当講師の本を発見し、早速読んでいる。

いろいろと面白い問題があるのだが、2018年の第二問設問A(3)を見てみよう。「2016年にパナマ運河の拡張工事が完了。幅や水深が大きくなり、非常に大型の船舶以外は通行が可能となった。これにより東アジアの輸出入輸送はどのような影響を受けると考えられるか。輸出品と輸入品の例をあげ、次の語句をすべて用いて90字以内で述べなさい。コンテナ船 ばら積み船 陸上輸送 輸送費 アメリカ大陸」(趣意)

まず、この運河の改修によって、ネオパナマックサイズがスタンダードとなった。このサイズには、コンテナ船とLPG船の割合が圧倒的に多い。次に東アジアの貿易と規定されているので、アメリカと中国、そして日本の輸出入品が多くを占めている。船舶の種類としては、コンテナ船は工業製品が多く、ばら積み船は鉱石や穀物が多い。さて、アメリカ大陸の陸上輸送は、鉄道のほうが輸送費が安くつく、とはいってもパナマ経由の海上輸送のほうがさらに安い。これらをまとめて、90字以内に納めるわけだ。

著者の正解は、「東アジアからはコンテナ船の大型化により工業製品が多く輸出され、アメリカ大陸からは、陸上輸送で運んでいた穀物も輸送費の安いばら積み船での輸送が可能になり、互いの輸送量が増加する。」(89字)である。…なるほど。内容は私でも十分わかるが90字に納めるのが実に難しい。こりゃあ、地理の知識を身につけることはもちろん、何度も何度もトレーニングしなければ書けない、と思うのである。

東大地理は、世界史よりはイージーだと思う(22年12月15日付ブログ参照)が、東大の受験生に求める国語力、まさに恐るべしである。

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