2023年4月21日金曜日

佐藤優 「大日本史」Ⅸ

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第6章は、「二・二六事件から日中戦争へ」である。昨日、トルコ大統領選挙についてエントリーしたが、実は二・二六事件とトルコは関係がある。二・二六事件の中心人物、橋本欣五郎は参謀本部ロシア班長で、その直前までイスタンブールで駐在武官を努めていた。ケマル・アタテュルクのトルコ革命の成功を目の当たりにして、軍人による国家改造というアイデアを抱いて帰国する。だが、ケマル・アタテュルクらのような緻密さはなく、安易にクーデターを起こせると思っていたので失敗したわけだ。2人の二・二六事件への評価は、青年将校の官僚主義の暴走、全能感といった幼稚性だと指摘し、かなり手厳しい。ともすれば「国を憂いた青年将校」とか「農村の疲弊を放置する支配体制への異議」といったロマン主義的な見方は排するべきだと主張している。

日中戦争については、陸軍より外務省、特に広田弘毅への批判を強めている。陸軍の関心は対ソ連戦であって、蒋介石と長期戦などやっている場合ではないというのが当時のスタンスで、参謀本部・作戦部長だった石原莞爾などは不拡大を主張している。これをひっくり返したのが広田弘毅で、城山三郎の『落日燃ゆ』で美しく描かれすぎていると山内氏。私もこの『落日燃ゆ』を読み、極東軍事裁判で死刑になった唯一の文官というイメージを持っている。昨年読んだ頭山満との繋がりもあって意外な展開だった。たしかに、2人の指摘を見ると陸軍と外務省の立場が逆転している。はるかに幣原喜重郎のスタンスのほうが優れていて、幣原は、もっと見直されてもいいのではないかと結ばれている。

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