2022年12月20日火曜日

種々紛争のある地域の「名前」

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「世界の名前」(岩波書店時点編集部編)興味深い内容のエントリー、第三回。政経の授業で扱う、地域紛争というか、様々な問題を抱える地域の「名前」の話を集めてみた。

まずは、ベルギー。フラマン語とワロン語の言語紛争で有名である。2013年新国王としての戴冠を控えたフィリップ王子の名前には、Filip(フラマン語)とPhilippe(ワロン語)の2つの表記があり、国王の承認を必要とする法文書にいずれの署名をするかでが問題になった。ちなみに先代はアルベルト/アルベール:Albertで両言語統一の綴だったのである。政府は、いずれの署名でも可能とすべく法改正に乗り出し、一応の解決を見たという。

カナダ・ケベック州はフランス語圏として有名だが、同姓が実に多い。トランブレー、ガニョン、コテ、ブシャール、エベールといった姓だが、中でもトランブレーが多い。ヨーロッパヤマナラシというポプラの一種が生えている場所に由来する。17世紀に渡ってきたピエール・トランブレーという人の子孫が、15万人いると推定されている。仏系が英系に敗北後、「ゆりかごの復讐」と称して子沢山が奨励された故らしい。子供が10人以上という家族も珍しくなかったという。

今世界中の耳目を集めているウクライナは、帝政ロシア、革命後はソ連という統一国家の中で従属した立場にあり、言語的にもロシア語に近いこともあって、洗礼名に由来するイワン(=ヨハネ)のように共通するものも多いが、名字についてはウクライナ系と見分けのつく固有の語形がある。それは、語尾が-enkoで終わるシェフチェンコのような名である。日本生まれの女性タレント、マギー・ミネンコが私には最も馴染みがある。(笑)ちなみにアメリカ移民には、それとわかりにくい、ポップアートのアンディー・ウォホール(ウクライナ読みでは、ヴァルホラ)もあるし、作家のゴーゴリのような固有名詞(ウクライナ語ではホーホリ/ホオジロ鴨の意)も多いらしい。

カタルーニャ語は、ラテン語から派生しているが、スペイン語の方言ではない。カトリックなので、ファーストネームは聖書や聖人に由来するが、発音がかなり違う。ヘブライ語のペテロは、スペイン語ではペドロ、カタルーニャ語ではペラになる。同様にマルコは、マルコス、マルクとなるが、スペイン内乱時、カタルーニャは共和国側で敗北、その後フランコに弾圧される。名前もスペイン語風に変えられたらしい。スペイン語以外の洗礼名の戸籍登録も禁じられ、フランコが死んで(1975年)、民主化された1977年にこの禁止が解かれた。

同じく、バスク語も、フランコ政権時代公的使用が禁じられていた。解禁されてからは、堰を切ったように子供たちにバスク語の名前をつけた。スペイン語やフランス語系の名前をもつ大人も、バスク語的に直した人も多い。バスクには、いたるところに聖母マリアを祀るお堂があり、その場所の名前が女子名としてよく採用される。アランツァス、イサスクンなどがそれで、名を聞くとどこに縁があるのかがわかるらしい。

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