2022年9月9日金曜日

「お金」で読み解く世界史

学園の図書館で、「お金で読み解く世界史」(関眞興:SB新書)を借りて読んだ。「お金」という視点で世界史を眺める本である。最近の共通テストなどでは、こういう視点で問題が作られたりするので、学園の図書館にあるのは実に妥当である。

今回は30項目の中から、08「聖書で禁止された利子をめぐる動き」を中心にエントリーしようと思う。

08は、ダンテの神曲の「煉獄」の話から始まる。煉獄は地獄に行くことになりそうな人間が悔い改めの生活をする場所で、高利貸しの罪を犯した人間の苦しむ姿が描かれている。この利子を取るという金融業の根幹について、旧約聖書の申命記23章20節に、「(外国人にはよいが)同胞に利子を付けて貸してはならない。」とある。(出エジプト記22章24節にも同じような記述がある。)

この利子を取ってはいけない理由として、中世キリスト教神学では、「神の与えてくださった時間を盗む」という行為だからとしている。家畜や穀物が子供を産み実をつける。そのようになるまでの時間を与えてくださった神に感謝すべきである。貨幣も同様で、神に感謝せず利子を取るのは神のもの、つまり時間を盗むのに等しい。神のものは、神の代理人である教皇(教会)に戻すのが本来という論理が展開された。一方、異教徒から利子を許すのは、異教徒が崇める神の時間を奪うのは罰せられないという理由付けがされた。よって、一神教の三宗教は同胞から利子の取り立てを禁止しているのだが…。

ユダヤ教徒にとっては、キリスト教は異教徒という認識なのだろう。キリスト教徒は、旧約聖書にこういう規定があっても律法の成就で逃げれるし、実際バチカンも修道院も利子の恩恵に預かっている。近代の金融システムを作り上げたのもキリスト教徒である。まあ、利子を取ったら煉獄に行って悔い改めればいいということなのだろうか。

さて、私が一番気がかりなのは、イスラム教である。調べてみたら、クルアーンにも利子を禁ずる章句が多くあり、代表的なものは第2章275から279にある。ただし、ここでは異教徒や外国人の規定が書かれていない。http://islam.ne.jp/fiqh/fiqh2/islamic_bank/islamic_bank5

イスラム金融について在マレーシア時に、調べたことがある。利子ではない様々な方法で金融をしているのがわかった。しかし、例えば湾岸諸国の政府系ファンドなどはガンガンイスラム世界以外にも投資しているし、当然ながら利子はどうしているのだろうか。あくまでイスラム金融の方法で回収しているのだろうか。もし、ご存じの方がいれば教えていただきたいと思う。私自身も少し研究してみようかなと思うのである。

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