2022年9月16日金曜日

「独裁の世界史」を読む。

市立図書館で借りてきた「独裁の世界史」、70%がキリシア・ローマ史で、最初はちょっと辟易としたのだが、蘊蓄と鳥瞰的な視点が示されてなかなか面白い。昨年から始めた世界史の再学習時では、ギリシア・ローマの古代史は省いていたので、ソロンとかグラックス兄弟とかいう人名が出てくると、懐かしさもある。特に印象に残った内容をエントリーしておきたい。

本書では、独裁政、共和政、民主政について語られている。日本では、共和政というイメージがあまりないと著者(本村凌二東大名誉教授)は指摘する。集団による統治を思考するのが共和政で、貴族政や寡頭政に近い。ローマにおける市民の民会が最高指導者(コンスル)を始めとする政務官を選び、権威と見識を持った貴族で構成される元老院が助言するというカタチが共和政。ローマでは独裁政は悪と決めつけず「独裁官」を任期を限っで国難を乗り切っている。独裁政=悪というイメージを日本人は持っているが、冷静に世界史を見ていこう、という本なのである。

「公」を意味するラテン語の「レス・パプリカ」が現在の「共和」の語源。ローマでは、公の問題を考え、公を導くのは、ある程度の見識を備えた人間でないとならないと考えてきた。ギリシア語の「デーモス」は「民衆」あるいは「村落」を意味するデモクラシーの語源である。ローマが「公」を重視したのに対しギリシアは「個」を重視したと著者は比較する。この背景として、ギリシアは、リーダー的な存在はいるものの大きな身分差のない共生的な村落社会をもとにポリスを形成したのに対し、ローマでは有力な富裕層を中心にした氏族社会が形成された。ギリシアでは「〇〇村の私」、ローマでは「〇〇家とつながりを持つ私」というカタチでアイデンティティが形成されたというわけだ。実に重要な視点だと思う。

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