2017年4月30日日曜日

交渉紛争解決学

佐世保に入港した仏海軍強襲揚陸艦・ミストラル http://blog.esuteru.com/archives/20012812.html
先日、ある学生から相談を受けた。交渉紛争解決学という学問についてである。文字通り、紛争を解決するための交渉を研究する学問であることは間違いない。「社会学でコミュニケーションをやりたい。」というのがその学生の希望だ。「シチュエーションとしては、最も微妙、かつ先鋭な場でのコミュニケーションを学ぶことになるねえ。ビジネスでも活かせるし、面白そうだなあ。」と私は答えたのだが、今の北朝鮮の問題に際して、フランスがここにきて強襲揚陸艦を佐世保に送ってきた。まさに、交渉紛争解決学のその生きた教材だといえる。

傍観者には発言権はない、というのが欧米の論理である。有事の際には、フランスはたとえ1艦だけの参加でも発言権を確保するために送り込んだと見るのが妥当だと思う。現在、関係国で静観の姿勢を保っているのはロシアのみである。しかしロシアは、中国が石油を完全にストップしても、北朝鮮を救えるというカードを持つつもりらしい。実際、ウラジオストクとの間に貨客船・万景峰号との新定期航路を5月から開くというニュースが流れた。

これまで、アメリカは対立していた中国を味方に引き入れ、日・韓を有事の際は巻き込むという戦略をとっていた。ここにフランスなどが呼応し、ASEANも道義的に反北朝鮮に与している。親中国系の国も中国に右にならえだし、対立するフィリピンもアメリカ側に与している。アジアは、ほぼ反北朝鮮でまとまった。まさに四面楚歌だった北朝鮮に、ロシアが手をさしのべたわけだ。

日本は、こういう外交戦略が昔から得意ではない。まして有事の危険を孕む究極のシチュエーションで、対米追従しか能がなさそうだ。ただ、軍事的解決を避ける意味で、ロシアが定期航路を開設するとした姿勢は間違っていない、と私は思う。追い詰めすぎると、窮鼠猫をかむという状況になりかねないからだ。

紛争の交渉には、アメと鞭。強硬論と柔軟論。前三後一で進めるしかないと私は思う。おそらく交渉紛争解決学でも、同様の見方をしていると思うのだが…。質問をしてきた学生が、交渉紛争解決学を志望することになれば、小論文指導などで積極的に関わっていくつもりだ。

0 件のコメント:

コメントを投稿