2013年2月24日日曜日

「経済大陸アフリカ」を読む2

完読してからエントリーをしようと思っていたのだが、平野先生の「経済大陸アフリカ」、新書だがとても1回や2回のエントリーで対応できないほどの内容の濃さである。そこで今日は、第1章の「中国のアフリカ攻勢」のみを整理してみる。これまで、多くの中国のアフリカ進出へのアプローチを読んできたが、おそらく全てが先進国やアフリカからの視点である。平野先生は何故中国がアフリカに進出しなければならないのかを数々の資料を挙げながら詳細に論じられている。そのポイントを整理してみた。

すでに中国は世界の工場である。製造業生産、商品輸出ともに世界一となった。しかし、平野先生は中国は未だ開発途上国である、と断言されている。先進国がくぐりぬけてきた多くの問題を未だ抱えているし、先進国に比べそれだけ不安定だということになる。その最大の問題が、エネルギー効率で、先進国並みの産業構造や技術基盤をもたない中国は資源エネルギー効率で著しく劣る。単位GDPあたりエネルギー消費量、すなわち付加価値1単位を産出するのにどれくらいのエネルギーが使われているのかを2008年で比較すると、アメリカのおよそ3倍、日本の4倍以上のエネルギーを中国は必要としている。こんな効率の悪い国が世界の工場になってしまった。この変化がグローバル経済の最大の問題なのである。しかも1人あたりのエネルギー消費量はアメリカの5分の1、日本の3分の1であるから中国の所得水準の上昇によって、さらに莫大な資源消費が見込まれるわけだ。

中国のアフリカ進出の最大の目的は、この膨大な資源エネルギーの囲い込みにある。まさに自国経済の存立にかかわる国家安全保障上の課題。中国は、1999年にその対アフリカ基本方針を定め、翌年にはFOCAC(中国アフリカ協力フォーラム)を開催した。先輩にあたる日本のTICADとは趣が全く違い、ずばり投資と商談の場となった。中国の対アフリカ政策は、1つの中国の原則で台湾を排除すること。(現在も台湾と国交があるのは、ブルキナファソ、ガンビア、サントメプリンシペ、スワジランドの4カ国になってしまった。)さらに内政不干渉を意味する国連憲章の目的と原則を順守することの2つである。ビジネス=援助ミックスによって以後10年間、かつてイギリスやフランスが成しえなかった広範な関係を構築する。

アフリカで資源を得、その結果経済成長し、消費財需要が増加したアフリカにあらゆる工業商品を輸出し回収する。このWin-Win関係を、先進国は「新植民地主義」とこぞって批判した。平野先生は、様々な論点からこの「中国=新植民地主義論」を批判している。曰く、中国のアフリカ政策の収支は現状ではむしろ赤字。潤っているのは今のところアフリカ側。悪しきガバナンス政府に対する中国の内政不干渉に対しては、「開発途上国はやがて民主化して先進国のようになっていくべき」という価値観の上に成立している論議で独自の政治体制をもつ中国政府は共感しない、と主張している。

さらに私が最も懸念している中国の進出が現地雇用を生まないことに対して平野先生は、アフリカの労働コスト(アフリカの正規の工場労働者の賃金はかなり高い。)や質の問題を指摘する。中国企業はインフラ建設を低い費用と短い工期で受注する。残業や休日出勤に耐え、中国語のマニュアルを理解できる現地労働者はいないというわけだ。

…なるほど。うすうす感じていた事を見事に整理していただいた。アフリカの開発経済学を中国側から見るとこうなるのである。欧米が作り上げた開発経済学の様々な理念をぶっとばす、中国の切実なエネルギー確保への先見の明。これが、今のアフリカと中国の関係を作りあげた。まさに歴史的必然であるわけだ。

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