2010年6月22日火曜日

リリ~君へのアフリカからの回答


 OBのリリ~君の新しいブログが面白い。面白いというより、彼の真面目な研究日誌のような様相を呈している。今日は、彼のブログを読んでの感想を書いておきたい。 
 彼の21日づけのブログにこうある。ドミニカ共和国のJOCV(理学療養士として来て欲しい青年海外協力隊)への要請についてである。『解剖学も生理学も基礎医学と呼ばれ、文字通り、医学の基礎なのです。基礎がしっかりしていれば、それを応用していけば先に進むことができます。ドミニカ共和国のこの要請で書かれている「養成機関が成熟していない」というのは、基礎を教えることができていないのか、応用を教えることができていないのか? 基礎医学を教えるのは、理学療法士の知識では上っ面だけになる危険があります。医師でなければいけません。理学療法への応用はもちろん理学療法士が行うべきものです。なので、基礎ができていないのか、応用ができていないのかで、解決策が非常に異なってくるという事です。』
 私は、ドミニカ共和国へ行ったことは当然ないのだが、もしかしたらブルキナファソの教育事情が役に立つかもしれない。ブルキナファソで、JICAのプロジェクト、SMASSE(理数科教育推進事業)の現場を視察する幸運に恵まれた。お世話になったIさんが、JICAの理数科教育専門家やスタッフを呼び私の歓迎パーティーを開いてくれたからだ。実際に視察に来てくださいという話になったのである。で、行ってみた。ちょうど、小学校のベテラン教員に対して、算数の授業を専門家が教えていたところだった。ブルキナには、三角定規やコンパスなどがない。新聞紙を切って、同じ直角三角形をいくつも作っていた。さて、問題。円を4分割したい。どうすればよいか?なんと、彼らは考え込んでいたのである。日本の小学校低学年レベルの話である。これは、一般の教員の、さらに上の校長の、そのまた上の役職(地域の学校を統括する立場の教員)なのである。彼らには、円は360度である。直角三角形は30度、60度、90度で構成されているという”知識”は当然ある。だが、経験知が極めて少ないのである。<今日の写真はその時の模様>私はびっくりした。確認しておきたい。ブルキナの人々を私は断じて軽蔑しているわけではない。教育環境が劣悪ならば、解るものも解らないのである。日本は、インフラ整備より、コンパスや三角定規や分度器を全ての途上国に支援するべきだと思う。
 おそらくリリ~君は、私の紀行文『ブルキナファソ留魂録』をすでに読んでいるはずなので、このことを知っていると思う。さて、ドミニカ共和国の教育事情はどうなのだろうか。ブルキナほどひどくは無いにせよ、おそらく基礎的な部分が、様々な教育環境の不備ゆえにおろそかになっているのではないかと私は推察するのである。
 JICAの専門家の方々が、様々な途上国を渡り歩きながら、我々の想定を超えるような現実を見てきたと口々に言われていた。りり~君もきっと、そういう現場に遭遇することがあると思う。彼は、真剣に思索してくれている。それが嬉しいし、この思索があってこそ、とんでもない現場を切り開く力になるのでは、と期待している。がんばれ!地球市民!

4 件のコメント:

  1.  コメント・メッセージありがとうございます。私の考察の中に、ここで先生が指摘してくださった点が抜けていました。
     医学教育の前に、日本で言う義務教育のレベルがどこまで達成されているかも論点でした。この場合の解決策について考えることも必要なようです。
     今回のJOCV要請一覧を見ると、ドミニカ共和国の教育系のJOCV要請は「環境教育」「日本語教師」でした。もうすでに「小学校教諭」や「理数科教師」として派遣されている隊員がいるかもしれないので、もしいれば、その方々との連携も視野に入れる必要があると思いました。
     最近、日本にいても思うのですが、人はさまざまな人たちに支えられて生きているのだと感じるようになってきました。これから、人と人との関係・協力・信頼がますます重要になると思います。

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  2.  コメントするには長すぎるので、自分のブログでコメントしておきました。どの国に行っても、この問題は底辺に潜む問題のような気がするので、アフリカの教育事情紹介も兼ねて書いた次第。研究頑張って!

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  3. 「円を4分割するにはどうしたらいいか。」
    一見単純明解なような問いですが、地域の学校を統括するような教員がその問いに対し悩んでいるなんて、ちょっと信じられません。
    そうなると、子供たちへの教育というのは、一体どんなものなのだろうと想像も付きません。

    今日、「ぐっと地球便」という、海外で働く・暮らす日本人に対して日本からメッセージを届けるという番組で、ネパールのとある村で、子供たちへの学校教育を浸透させている60代の男性の話を見ました。
    その村では、男性は働かず、女性と子供が重要な労働力でした。文房具や教科書も当然足りません。そんな状況下に置かれている子供たちはまだまだたくさんいるんだなぁって、実感しました。
    大学まで当たり前のように進める日本って、裕福すぎてその教育のありがたさを軽視しているんだと感じました。
    真面目に勉強しようと思います(笑

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  4.  私もびっくりしました。JICAの専門家の皆さんが頭をかかえていましたし、愚痴を言ってもしかたがないと懸命に頑張ってはりました。

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