2010年4月23日金曜日

ストロング・マイノリティ・ラスタ



 昨日は、セラシエ皇帝のことを書いた。『ラスタ』についてもっと書きたいと思った。ブルキナで、荒熊氏の文化人類学のフィールド・ワークについて行った経験は、現場の高校教師にとって大きな財産だった。荒熊氏は、都市の文化人類学を研究しているのだが、ストリート・チルドレンの研究などとともに、ラスタの研究もしていた。ラスタとは、主にレゲェ音楽を媒体にジャマイカを中心に起こった「アフリカ」をキーワードにした黒人解放、黒人優位とアフリカ帰還を根幹とする社会文化運動のことである。
 面白いことに、私の職員室での隣席は、卒業式にも来てくれていたジャマイカ人ALTのサンジェイ先生である。一度他の学校に行ったけれど、岩をも貫く一念でリターンしてきた。今日の昼休み、サンジェイ先生に聞いてみた。「エチオピアのセラシエ皇帝のことを本で読んだのだが、ジャマイカのラスタの人々は彼を信じているのか?」
 ラスタの予言の中に、アフリカ皇帝が誕生し、千年王国(キリスト教的な意味で理想郷と言っていいかもしれない。)が実現するというのがある。セラシエが皇帝に即位した時、この予言が現実になったとラスタの人々は大歓喜で迎えたらしい。やがて、パレスチナはアジスアベバであり、モーセは紅海を渡ったのではなく、ナイルを渡ったとか、マリアやイエス、天使ガブリエルもBlackである、という理論が確立したらしい。肌の黒いイエス像やマリア像を私はなにかしらのTVで見たことがある。興味深い話である。
 サンジェイ先生は、深く頷いた。今でもジャマイカのラスタたちは、セラシエを尊敬し、信じているとのこと。サンジェイ先生は「私はラスタではない。」と言った。「ラスタはジャマイカではメジャーなのか?」と聞くと、「サム。ストロングなマイノリティかな。」と答えてくれた。彼は、さらに長々と英語で教えてくれたのだが、リスニング能力に欠ける私には、ここまでしか判らなかった。(情けない…)
 
 <今回の画像は、ブルキナの首都ワガのダウンタウンにあるラスタ的壁画である。>この絵を描いたアダマ(アダムの意)君は、ネスカフェの缶を使ってバイクのおもちゃも作っていたらしい。荒熊氏が、何故ネスカフェだけで作るのか聞いたところ、彼はこう言ったらしい。「ネスカフェは、ヨーロッパ資本主義の侵略の象徴である。ブルキナベの健康を害している。しかも缶はゴミになる。そのゴミをおもちゃにしてヨーロッパ人に引き取らせているのだ。」この話を生徒にするとワリと受ける。みんななるほど…と思うらしい。但し、荒熊氏は「本物のラスタと呼べる奴はあまりいません。カッコウだけのラスタが多い…。」とちょっと不満そうだった。ちなみに、ストリートチルドレンの世界とラスタ」の世界は、直接関係はないそうだ。
 黒人の壁画は、右から、 オバマ大統領、ボブ・マーリー(ジャマイカのレゲェ・ミュージシャン/ラスタに大きな影響を与えた人物)、南アのマンデラ大統領、M・L・キング・Jr牧師、チェ・ゲバラ(よく考えると彼は白人のアルゼンチーナである。だが、絵の肌は黒い。)、パトリス・ルムンバ(コンゴ民主共和国の初代首相で汎アフリカ主義を唱えたが暗殺された。)、クワメ・エンクルマ(ガーナの初代大統領で汎アフリカ主義者。アフリカ統一を夢見たが挫折してしまう。)、そして、キング牧師の死後、暴力的・イスラム的な方向性を示したマルコムX である。

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