2023年5月20日土曜日

リヴァイアサンは越境者を潰す

http://arita-episode2.jp/ja
/history/history_6.html
「一神教と国家」のなかで、中田考氏と内田樹氏が興味深い話をしている。リヴァイアサン(領域国民国家)は、越境者を潰してきたという歴史である。中田氏のイスラム教は世界中でアラビア語を共通語としていることこそグローバリズムであるという話から派生してた話である。

内田氏は、ウェストファリア条約後に敵視されたのが、カトリックとユダヤ人だったと言う。彼らは国民国家の概念にうまくなじまなかった。ユダヤ人は国なき民で領域国民国家への帰属意識や忠誠心を持ちようがない、そんなノマド的なあり方がヨーロッパでは忌み嫌われ、ホロコーストに繋がっていく。あまり知られていないけれど、カトリックもとはかなり確執があった。政教分離は19世紀末だけれど、あの頃のフランス文学を読むと、何かあればイエズス会の陰謀にされるくらい悪者扱い。スキャンダルも物価上昇もイエズス会のしわざだと街頭でデモが起こっている。つい18世紀まで聖職者が貴族と並んで権勢を誇っていたのに、一気にイエズス会のような国境を超えるものが目の敵にされた。

同じように、目の敵にされ、暴力的に弾圧されたのが東インド会社。(今日の画像は東インド会社に注文された伊万里焼)イギリス、フランス、オランダで、クロスボーダー的で大船団を仕立てて富を集めた東インド会社は、条約締結権た徴税権、交戦権まで持っていた。領域国民国家を超えるグローバルな存在。よって、近代国家成立する過程で全部潰された。フランスではフランス革命直後に、イギリスでもオランダでもほぼ同時期に解体され、利権はまるごと国庫に持っていかれた。

内田氏は言う。領域国民国家の土台が脆弱だという危機感があったのではないか。ただの恣意的な線に過ぎない国境線というものが人間を隔てる決定的な切断線で、これを超えて利害が一致する者はもはや人間ではないという話を作り込んでいった、と。中田氏は、この排外主義が形を変え名を変え装いも新たにアメリカ型のグローバリゼーションと呼ばれるものになっている。アメリカは1つの国であると同時に世界であると考えている。自分たちのやっていることはナショナリズムなのにグローバリズムだと思いこんでいる。かなりとんでもないことだと思うと結んでいる。…なるほど。

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