2022年5月24日火曜日

東チモールの言語問題

https://www.mui-motosumi.co.jp/hpgen/HPB/entries/223.html
「世界街かど地政学NEXT」は、実に面白い。著者が地域エコノミストであるので、地域経済学的な視点から見ているのである。先日エントリーしたNYCのハイラインでも、(書き忘れていたのだが)近隣の地域で地価の上昇という外部経済が働いたことが記してある。ちなみに、ハイラインはウエストサイドにあり、私が訪れた時は注意すべきエリアであった。(イントレピッド航空博物館には、安全を期してTAXIで行った記憶がある。)今や、このウエストサイドの地価が上昇し、所得の高い住民が増え、治安が向上するという流れができたようである。

さて、今日の主題は、東チモールの話。アジアで最も新しい独立国(ポルトガル領からインドネシア支配下より独立)。この国の通貨は何の関係もないUSドル(硬貨は独自発行している)だそうだ。

地元民の言語は、テトゥン語(インドネシア語と同じオーストロネシア系だが相互には通じない)だが、口語で経済用語や学術用語の語彙に乏しい。スワヒリ語みたいなもので、中等教育以上には使えないらしい。ポルトガル語は少数の高齢者エリート層と独立後に教育を受けた若者中の優等生しか通じない。インドネシア語は20年強の支配を受けていたので中年層にしか通じない。しかも、それら以外に岩手県程度の国土に15もの言語が存在しているらしい。

テトゥン語と類似性があるインドネシア語で教育を行い、第二外国語として英語を普及させれば、インドネシアやオーストラリア、シンガポールなどと交流が活性化するに違いない。実際、島の西半分は同じテトゥン語が最大限語で、インドネシア領である故インドネシア語と英語での教育が行われている。だが、ポルトガル植民地として450年過ごし、インドネシアによる血の弾圧の記憶を克服するには、やはりポルトガル語で教育することが良いと言う事になったようだ。これは、我々がとやかく言う話ではないが、国富・経済効果という観点からは決して良い選択だとは言い難い。

https://www.eurasia.co.jp/travel/tour/AE08
さて、地域エコノミストとしての著者は、ほとんど開発経済学の視点で東チモールを見る。以前インドネシアとオーストラリアが開発した油田・ガス田があるのだが、枯渇しているものもあって、それ以外には何もないという貧乏な島国なのである。著者は、独立時にいたムスリムが西チモールに移住したため、90%がキリスト教徒であること(つまり、飲酒や豚肉も提供できること)、豊かでのどかな自然が残っていること、国際線のフライトがあることなどから観光立国というプランを立てている。ただ、観光立国のためにはインフラの整備や教育への投資が必要である。石油収入をうまく配分して成功するのはなかなか難しい。そんなことを考えていたようだ。開発経済学をかじった私としても同様のプランに行き着くだろうと思う。

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