2023年2月19日日曜日

レンブラントとゲーテの時代

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 F君からメールで首都圏の超難関国立大学の世界史の過去問の質問がきた。文化史である。資料(絵画と文章)を参考に、「”レンブラントの時代”、”ゲーテの時代”の文化的特性を当該地域の社会的コンテクストを対比しつつ答える問題」だった。

レンブラントは、1606年生誕、1669年没。オランダがスペインから独立する寸前に生を受けている。この頃は、オランダが東インド会社を設立(1602年)してアジアに進出、ポルトガルを排除して香辛料貿易の実験を握った羽振りのいい時である。さらにアンボイナ事件でインドネシアからイギリスを締め出し、ケープ植民地を得たのもこの時代。だが、1652年(~54年)の英蘭戦争で敗北したオランダは。覇権を失い不況に陥っていく。資料となっている絵は、「織物商組合の幹部たち」(描かれたのは1662年)という集団肖像画で、テーブル上の書物を見ていた書物を見ていた各人が不意に部屋に入ってきた者に目を向けた瞬間。幹部たちの威厳を強調している。この「威厳」と(侵入者への)「逡巡」こそ、この当時のオランダの社会的コンテクストだと言えるだろう。レンブラントは、このオランダの躍進と失墜の中、まさに名声を得ながら、浪費を重ね最後には無一文となった画家である。

ゲーテは、1749年生誕、1832年没。ゲーテは自由帝国都市であったフランクフルトに生まれ、25歳で「若きウェルテルの悩み」を書き、ヨーロッパ中に名を轟かせた。1775年ワイマール公国に招かれる。1789年から始まったフランス革命、1792年のフランスのドイツへの宣戦布告にワイマール公国の公爵とともに参加、敗戦している。1808年、ナポレオンの号令でヨーロッパ諸侯が集められた時、ワイマール公爵と共に参加。若きウェルテルの悩みの愛読者であったナポレオンに「ここに人あり」と感動された。ゲーテは、フランス革命に対しては、保守的な反応を示した。今回の資料(ゲーテ/詩と真実)には、「フランス文学自体に、努力する青年を引き付けるよりは反発させずには置かないような性質があった。」等の記述があり、反フランス的な内容があるので、フランス革命・ナポレオン時代という歴史的背景と、疾風怒涛(Sturm und Drang)というゲーテらの革新的文学運動が主題となる。ちなみに18世紀のフランス文学は、啓蒙主義的な理性の勝利を主題にしたものが主流で、ヴォルテール、ルソー、ディドロ、モンテスキューなどが挙げられる。

…要するに、レンブラントの時代とは、オランダがスペインから独立し、アジアに進出し栄華を誇ったのだが、イギリスに実権を奪われ没落する時代であり、ゲーテの時代とは、フランス革命・ナポレオンにドイツが席巻された時代である。しかしながら文学面では、若きウェルテルの悩みがヨーロッパの青年を魅了(ナポレオンさえも、である)した時代であるわけだ。

…いやあ、難しい。もしかしたら、感でこの時代と類推できるかもしれないが、ある意味、東大の世界史より難問かもしれない。まあ、並び称される難関大学なので当然かとは思うけれど…。これにすっと応えられる現役高校生って、反対に恐ろしい。(笑)

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