2014年3月30日日曜日

世界人名ものがたり 備忘録

だいぶ前になるが、前期入試の採点は図書館で行われた。ちょっと休憩中に書架を回っていて、おもしろい新書を発見した。「世界人名ものがたり 梅田修著・講談社現代新書1437」である。副題は「名前で見るヨーロッパ文化」。私は世界史や倫理の授業で、名前についての雑学を話すことが多い。もうすぐ終わる「笑っていいとも」で、一時ジョン(米)とイワン(露)という2人の青年がいいとも青年隊をやっていたことがあった。2人とも同じ名前(=ヨハネ)ではないか。その妙に私は大笑いしたことがある。「人名の世界地図」(文春新書)がそもそものネタ本だったのだが、この新書の方がさらに詳しく面白い。このブログ上で春休みの番外教材研究の備忘録としてにエントリーしておこうかと思う。

宗教改革後、プロテスタントでは、マリア信仰や外典にある聖人の聖性が否定され、旧約聖書から名をとることになった。(P34)メイフラワー号の男性乗客73名中20%の15名がジョン。(P42)と、いっても中世からジョンは多い男性の名前(25%という統計もあるらしい。)ヨハネは、中世、イエスの受難から千年の年が近づくにつれ天災や戦争が頻発し、疫病が流行、略奪も横行。「黙示録」に描かれた終末だと強い不安をもつようになった。(…仏教の末法思想みたいである。)イエスにヨルダン川で洗礼したヨハネは、「悔い改めよ。天の国は近づいた」(マタイ福音書)と述べ、禁欲的な生活を送っていた。中世の修道士のモデルともなった。終末の不安におびえる中世の人々は、ヨハネこそ神へのとりなしをしてもらえる聖人と考えたようだ。

ヨハネは、ジャン(仏)やジョバンニ(伊)、ファン(西)、ヨハン(独)などに変化したことは知っていたが、スコットランドではSean(ショーン)、アイルランドではSean(シャーン)となる。映画007のショーン・コネリーは、スコットランド的なジョンなのである。また、アイルランドのシャーンは、イングランドではSeaneと綴り、「シェーン」となる。超名作西部劇の主役・シェーンは、じゃがいも飢饉でアメリカに逃れてきた悲しきアイルランド人ガンマンなのである。(P18・46)

西部劇の名画 シェーンのラストシーン
ヨハネ人気の理由には、その名の意味にもあるらしい。ヘブライ語で言うと、ヨハネは、Yohanan。Yo-は神・YHWHのことである。子音ばかりなのでそのままでは発音できないので、ユダヤ人は、「主」:アドナイ(Adnay)と読んでいきた。hananは、恵み深いという意味(女性名のハンナやアンナ、アンなどはここから来ている。)で、ヨハネの意味は「主は恵み深きかな」ということになる。(P48)

ところで、ここからが、面白いのだが、16世紀に、ユダヤ人たちが、YHWHにAdnayの母音を当てはめて、イェホヴァ(Yehowah)と発音するように工夫した。これが日本語ではエホバであるわけだ。この神の仮名とも言われてきた名は謎で、昔から不思議だったが、それが解けて嬉しい。ただ19世紀以後は、ユダヤ人聖書学者が、ヤーウエ(Yahweh)=在るもの(出エジプト記でモーセに「私はあるという者だ」と神が答えたというのが根拠)と呼ぶようになって、こちらが一般化したという。(P50)

JOHNだけで、こんなに長くなった。少しずつエントリーしていこうと思う。

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