2012年10月31日水曜日

日本のインテリゲンチャの怪

Gabriele D'Annunzio
臨時国会が開会し、与野党や第三極をめざす動きなどがぐちゃぐちゃに鳴動している。いったいなんなんだと思ってしまう毎日でストレスが溜まっていく。昨日も、民主党から2人の衆議院議員が離党したそうだ。つい最近、300万円の選挙資金を党から受けとった後の話らしい。

私は民主党支持者ではないし、レイムダックの内閣など早く解散したほうがいいと思っているので、内閣不信任が可決するため、後6人早く離党してくれ、もう「近いうち」というコトバを聞くのはたくさんだと思っているのだが、さすがに彼らの行動にはあきれる。仁も義もない。ただ保身あるのみ。まったく美しくない。まして比例区選出の議員にいたっては、有権者への裏切りどころか、詐欺に近い。それでもなおかつ政治的信念で離党するなら、議員辞職し、300万円は受け取らないというのが「人」としてのスジだ。

野党も結局は権力が欲しい故のチキンレースを延々とやっている。何度か書いたが、この小選挙区制の「対自」が、衆参のねじれや、官僚を統御できない無力な政治家、あるいはプロパガンダだけで権力を握ろうとする輩など、様々な弊害を露呈していて、もうたくさんだと思ってしまう。

今日、世界史Bでロシアのインテリゲンチャの伝統について話していた。単なる知識人ではない。学問をする機会を得た人間には、それなりの矜持があるはずだ。自らの保身に走るのではなく、世のために、その頭脳を活かすという覚悟がロシアにはある。一般大衆との格差が大きいだけ、そういう伝統が生まれたのだろう。この辺は佐藤優の本を何冊か読めばわかることだ。

たしかに今の日本には大卒の人間など掃いて捨てるほどいる。政治家となったインテリゲンチャとの格差は、当時のロシアと比ぶべきもない。しかし、今の日本の現状はあまりになさけない。

どんどん世界の潮流から逆流し、20世紀的な近代国家へと戻っていっている。来週くらいには、ダヌンツィオやムッソリーニやヒトラーの話をするのだが、今の日本には、それぞれ恐ろしいほど当てはまる人物がいる。授業で口が滑らないように気をつけようと思っている次第。

なんだが、まとまらないエントリーになってしまった。ストレスが溜まっている。お許し願いたい。

2012年10月30日火曜日

イスラエルのスーダン空爆

The Jewish Press.com
先日、妻が「イスラエル軍がチュニジアを攻撃したらしいで。NHKのニュースでやってた。」と報告してくれた。「チュニジアに攻撃?」なんか変だ。WEBで調べたら、スーダンだった。「チュニジアとちゃうやん。」と言うと「家事しながらやったから聞き逃した。」とのこと。だいぶ違うが…。(笑)スーダンならありうる。イスラム原理主義が強いので、ハマスがらみなのだろう。で、だいぶたってから今朝の毎日新聞に、英・サンデータイムスの報道だとして、デカデカと載っていた。(いつも毎日新聞の報道は遅い…と私は感じている。)

ハルツーム南部の軍需工場を24日未明イスラエル空軍のF15戦闘機が4機が1トン爆弾を搭載し、さらに4機が護衛役として紅海から、スーダンに侵入。万が一の墜落事故に備えヘリ2機が現場周辺で待機、スーダンの防空レーダーに対し妨害電波を出す電子戦のための空軍機が1機、紅海上には空中空輸機が1機という作戦体制だったという。

この軍需工場ではイランの弾道ミサイル・シャハブが製造され、ガザに密輸される予定で、ガザへの武器密輸阻止というのが建前だが、将来イランの核施設を空爆する予行演習を兼ねていたと西側軍事筋が明かしているらしい。確かにハルツームまでの直線距離とテヘランなどイラン中部の直線距離はほぼ等しい。もちろん、イスラエル軍は、この攻撃自体を認めていない。(当たり前である。)

この攻撃、爆発で2名が死亡したそうで、当然非難されてしかるべきだろうが、私は違う面からこの空爆を考えている。予行演習説に疑問を感じるのだ。もちろん、政治的にはイスラエルは成功したと思う。アメリカの大統領選挙にともなうイランへの制裁の”ぬるさ”に我慢できず、軍事パフォーマンスを行って見せた。”予行演習”というコトバで、イランはもちろんアメリカにも脅威を与えたことは間違いない。
しかし、実際のところ、イランの核施設を攻撃するとして紅海からアラビア半島を回って行くには、あまりに距離がありすぎる。空中給油が絶対的条件になる。いくら護衛機がいたとしても、全機が空中給油するのには大きな危険が伴う。スーダンの防空レーダーくらいなら妨害電波でどうにかなるかもしれないが、軍事国家イランではどうか全く未知数である。直線距離が同じくらいだから予行演習というのは、どうも納得できない。
私は、案外アメリカが禁輸を決めているF22をイスラエルが持っているような気がする。F22ならその点全く問題がない。ヨルダンだろうがシリアだろうか、イラクだろうが、レーダーにはゴルフボールくらいにしか見えない。直線距離で突撃となるだろう。実際イランを攻撃する気ならイスラエルはF22を使うだろうと思うのだ。F15・8機でこのような作戦を取ったと、手の内を明かすような愚をイスラエルが犯すとは思えない。イランを油断させる作戦かもしれないという推測も成り立つ。

一方、今日の毎日新聞の夕刊には、クラスター爆弾を大幅削減するとイスラエル軍高官がAP通信などに明かしたという報道が載っていた。そもそもイスラエル軍は06年のレバノン侵攻時に、400万発のクラスター爆弾を使用、イラク・コソボでの紛争と合わせて国際的な非難を浴びた。オスロ条約が締結されるきっかけにもなったわけだ。軍高官は、レバノンのヒズボラへの攻撃にクラスター爆弾を使用する空爆は有効ではない、情報活動に基づくピンポイント爆撃に力点を置く、すでに計画が準備されているということを示唆したという。

このスーダン空爆の報道と、それに続くクラスター爆弾削減の報道。イスラエル軍の恫喝ともとれるし、国際世論の反発をギリギリのところで回避しつつ、アメリカ大統領選もにらんでのパフォーマンスだと私は思うのである。

2012年10月29日月曜日

コンゴ共和国のブッシュミート

ヌアバレ・ヌドキ国立公園
今朝の朝日新聞朝刊に、コンゴ共和国(元フランス領)北部の世界自然遺産ヌアバレ・ヌドキ国立公園の近隣地区で、ブッシュミートと呼ばれる野生動物の肉が食されているというニュースが載っていた。もちろん違法である。しかし、内戦終了後人口が100万人も急増し、貴重なタンパク源として密猟が相次ぐらしい。このままでは絶滅危惧種はもちろん森の生態系すら変えかねないという警告のルポであった。

かなりショッキングな書き方をしていたのは、その市場での風景である。野生動物の肉を販売するのは違法であるという看板の横で、オバサンたちがワニ、カメ、ウシ、猿などをさばいているという風景だ。値段はぶつ切りで150円ほど。牛肉はこのあたりでは手に入らないと書かれてあった。アフリカの熱帯雨林はツェツェ蠅の住処で、牛は放牧すると眠り病にかかって死んでしまう。鶏肉は価格が高いらしい。ブッシュミートは、地元民が手を出すことが可能な唯一のタンパク源だというわけだ。

この事実は人間の『業』のような話である。牧畜が気候的にも地形的にも十分可能で、シモフリなどという牛肉を食する我々が、簡単に論評できる話ではないと私は考えてしまう。世界遺産という認定は重要なことだし、その自然は守られるべきだと思うが、そこに住んでいる彼らにとっては今のところ何のメリットもないわけだ。彼らに肉を食する権利はないのか。世界遺産だから駄目だというのか。という彼らの声が聞こえてきそうだ。

頭から、彼らの違法性だけを強調するのは私は違うと思うのだ。

2012年10月28日日曜日

白クマラーメンを食す

先日義姉が「白クマラーメン」を枚方市内で発見し、我が家にもおすそわけしてくれた。以前、テレビで、最もおいしい即席ラーメンと報道されていた。妻は、ラーメン好きではないが、そういう謂れがあってすでに作って食べたらしい。「お父さん好みの麺やで。」

と、いうわけで今日作ってみた。普通の即席ラーメンとはちがい、「生麺」である。妻は5分くらい茹でた方が良いと言っていたが、まさにそのとおり。全く、即席麺だとは思えない。これは、日本一と言われるだけある。

WEBで調べてみると、通販もしているようだし、新千歳空港でも買えるようである。この製造元の藤原製麺は旭川に本社がある。ところが札幌の円山動物園を応援していて、そもそもそこで販売していたらしい。うん?旭川と言えば、旭山動物園である。この「ねじれ現象」は何だろう。

来月、来年の北海道修学旅行の下見にいくことになっている。3泊4日の日程だが、1泊2日で回る弾丸ツアーである。旭山動物園にもよる予定。さて、おみやげに白クマラーメン、買ってこようかな。

2012年10月27日土曜日

仮想世界ゲーム 再考中

11月9日に、岡山県のU高校のH先生が来校されることになっている。私の仮想世界ゲームに関心をお持ちで、その実践を模索されているのだ。メールをいただき、U高校が進学校ではないことを知った。仮想世界ゲームは、基本的に大学生レベルのシミュレーションなので、前任校の3年生の実践でも、あるいは国立の優秀な高校をはじめ8校合同で行った実践でも、必ずしもうまくいったとはいいがたい。そこで、これまでの仮想世界ゲームをそのままやっていただくより、以前前任校のU先生と2人で考えだした「ESDのための仮想世界ゲーム(高校生版)」をもとに、マニュアルをつくり、事前学習の構想を含めてレクチャーしようと思っている。この「ESDのための仮想世界ゲーム」は、仮想世界ゲームを基盤にしているが、大きな違いがある。(私は、ありがたいことに名古屋大学の広瀬先生に、2010年夏の時点でゲームルール等、自由な活用の許可をいただいている。)

まず、「仮想世界ゲーム」が個人戦であり、ゲームの勝者は個人であるが、「ESD」の方はグループである。つまり、グループ単位でゲームを行うのだ。高校生には、その方がうまくいくと思う。心理学のためのゲームではなく、あくまでESD教材としては個人間の葛藤を少なくした方がよいと判断したのだ。
また、先進国3と途上国4を基本に、ゲームの方向性をある程度決めてある。それは、先進国が途上国の持続可能な開発を進めるというものだ。よって自由度は「仮想世界ゲーム」よりかなり低くなる。先進国の勝者はその国の富ではなく、途上国への貢献度で決める。途上国の勝者は開発度(富)で決めるが、自国の投資を進める為簡単なPRSP(貧困削減戦略文書)を書いたり、観光会社をつくったり、「仮想世界ゲーム」では先進国にしか設置しない企業をつくれたりするようにした。かなり開発経済学の実際に近づけてある。

先週から、空き時間に新たな「マニュアル」を制作している。これまでの2回の実践体験からいかにすれば、普通の学力の生徒がこのゲームを楽しみ、学べるかを考えている。本校でも、3学期に実践するつもりでいる。

企業の収益を計算するのが大変だったので、少人数でも経営が可能なように、一気に簡単にした。また、食料チケットの価格も、先進国のメンバーなら10sim以上、途上国のメンバーには10sim未満とした。やはりある程度自由裁量をもたせたい。また、餓死(2回連続して食料チケットを購入出来ない場合餓死するルール)することのないように、農園主が農場を拡大するように誘導するルールをつくった。

数値バランスが命のシミュレーションゲームである。また、現実と仮想のバランスも重要である。H先生が来校される日まで、何度も推敲を重ねながら、考え抜きたいと決意している次第。

2012年10月26日金曜日

アフリカの熱帯高地DE小麦栽培

ケニアのハイランド
「アフリカの熱帯高地は小麦生産に適している。さらに生産量を増やせば穀物輸入依存度が高いアフリカには有為ではないか。」メキシコに拠点を置く国際小麦トウモロコシ改良センター(CIMMYT)が、こういう研究成果を発表した。

CIMMYTは、農地が生態学的に小麦栽培に適しているかどうかをコンピュータでシミュレーションした結果、最も高い収穫高を示したのが東部および中央アフリカの高地生産だったというのだ。ルワンダ、ブルンジ、ウガンダ、エチオピア、ケニア、それにマダガスカルが該当するらしい。熱帯高地では、日当たりが良い一方で夜冷えるのがいいそうだ。これらは、灌漑設備がなくとも条件がよいそうで、各国に少なくとも50万haほどの小麦に適した農地があるという。
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/121026/mcb1210260505025-n1.htm

アフリカの穀物生産の中では、小麦は決して多くはない。『図解アフリカ経済』(平野克己・日本評論社)によると、小麦生産が盛んなのは、南ア、ケニアくらいである。私自身、ケニア山の麓のハイランドと呼ばれる地でイギリス人が経営する広大な小麦プランテーションを視察したことがある。だから、アフリカの小麦生産というと、ついそういう感覚で見てしまう。

CIMMYTの立場は、そういうなプランテーションを想定していないように見えるのが嬉しい。生産活動における最大のネックを「肥料」の確保においていることが、それを証明している。これらの国では、肥料はまだまだ「ぜいたく品」であると指摘している。すなわち現地の農民の生産を前提にしているからだ。国際資本のプランテーションなら、そういう問題をなんらかの方法でクリアするはず。

ブルキナファソの農村
ブルキナで、まだIさんが孤児院をつくろうとしていた頃、近くの農地で様々な作物の栽培実験をしておられた。ゆくゆくは孤児たちの食料や養育費の為に、土地を提供してくれていた現地の人に栽培実験を依頼されていたのだった。
その時、Iさんは近くの店で肥料を購入された。その時の価格など今さらながら聞いておけばよかったと思っている。そのあたりはブルキナの中緯度なので、おそらくブルキナでも中程度の土地だったと思う。(ブルキナでは降水量の関係で、南部の生産性が高く、北部になるほど生産性が低くなる。)Iさんが日本人で金持ちだから肥料を購入したわけではいと私は推測している。なぜなら肥料は商品として普通に並べられていたからだ。

ブルキナは、アフリカでも最貧国の1つに数えられるのだが、食料生産に関してはアフリカではマシな国である。様々な穀物を食べる。米も食べるし、キャッサバなどイモ類も食べるし、雑穀も食べる。もちろんフランスの植民地だった関係で、フランスパンもおいしい。だから、肥料もある程度流通しているのではないかと思うのだ。アフリカもいろいろだが、内陸国のブルキナで、そうであるならよっぽど罠にハマっている国でなければ、およそ他の国も同様ではないか。もちろん、CIMMYTが言うように十分ではないだろう。アフリカが少しでも豊かになるのなら、地域社会と環境を破壊しない程度で小麦生産が進展することは、大いに歓迎すべきことだと思うのである。やはり、アフリカの開発は農業からだ。

2012年10月25日木曜日

アフリカの「サバクバッタ」危機

サバクバッタの発生分布 
久々にアフリカの話題である。といってもいい話ではない。またまた大量のバッタが発生しそうだというのだ。このバッタ、「サバクバッタ」という奴らしい。FAO(国連食糧農業機関)によると、このままだと、数週間以内にアフリカ北西部に大打撃を与えるという。そこで、FAOは、チャドで殺虫剤散布を行うと共に、ニジェールでも軍隊の護衛付きで同様の散布を行っているという。また、アルジェリア・モロッコ・セネガルなどの殺虫剤の備えをもつ国に働きかけ、WFP(世界食糧計画)とも連携しながらチャドやニジェール、マリなどに贈与し、国際連携で被害を防ごうとしているようだ。
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/environment/2908938/9728996?ctm_campaign=txt_topics

なかなかいい取り組みだと私は思う。FAO・WFOには是非とも頑張ってもらいたい。ところで、このサバクバッタという奴、とんでもない奴である。モーリタニアからインド北部まで分布していて、60カ国に被害を与えているらしい。必ずしもいつも集団発生するわけではないようだが、雨季の雨が多いと、集団発生し、世代交代(1年で2~5世代)しながら集団を拡大していくらしい。自分の体重と同じくらいの緑の植物を食べる。緑色の植物ならなんでもありで、さらに排せつ物で植物を腐らせるらしい。風に乗って移動するので、1日100~200kmも移動するという。
http://wkp.fresheye.com/wikipedia/%E3%82%B5%E3%83%90%E3%82%AF%E3%83%90%E3%83%83%E3%82%BF

まったくとんでもない奴なのだ。幼虫のうちに対策をとればいいとか、フェロモンを利用して集団をつくらせないとか、様々な取り組みもあるようだが、そういう対策を取るべき国が概してガバナンスや治安が悪い。エリトリア、スーダン、ニジェール、チャド…うーんと唸ってしまう。人間の安全保障から対処しなければならない最底辺国が多い。そうれどころではないと言う感じだ。そこからさらに不幸が拡がっていく図式になっている。こういう不幸のパラダイムを先進国がまずなんとかしていかないと、と私は思う。豊かな人間は自分の利益にならないことには、できるだけ目をつぶるらしい。