2021年7月30日金曜日

秘伝 教材研究(世界史編)Ⅱ

豪州パースのヘンリー8世
私は左派ではないので、マルクスを信奉していない。ただ、マルクスが社会の無意識を暴いたことについては評価している。剰余価値もそうだし、下部構造が歴史を動かしたという唯物史観もそうだ。ヨーロッパは、中世では、世界的には辺境であった。はるかに中国やイスラムの方が発展していた。それが、三圃式農業などの生産性の向上で、人口支持力が増え、ヨーロッパ世界が拡大していく。エルベ川以東への進出、イベリア半島のレコンキスタがその最たる例だが、十字軍もそういうベクトルの延長線上にある。単に中世に権力を増した教皇の思いつきではない。

この十字軍の後世への影響は大きい。イスラムとの戦争ではあるが、地中海貿易が発展しアジアの香辛料などがヨーロッパに入ってくる。この流れが、ヨーロッパでも商品経済を発展させ、都市の発達に繋がる。一方で、レコンキスタで生まれた新興国のポルトガル・スペインは、地中海貿易参入を阻まれ、大航海時代への道が開ける。また、古代のギリシア・ローマの学術・芸術の業績が逆輸入されてきた。これがルネサンスに昇華していく。ヨーロッパの近世を拓いたのは、実は十字軍なのである。こういう歴史の繋がりが面白いわけだ。

さて、近世の大事件はもうひとつある。宗教改革である。ルターが免罪符を批判したところから始まるが、この免罪符、そもそもは、ルネサンスの中心であったメディチ家出身の教皇・レオ10世がサン=ピエトロ寺院の改築費用を捻出するための方策であった。また、宗教改革による信者の減少を補う反宗教改革は、大航海時代で成功したポルトガル・スペインによってアジアと新大陸へと向かった。もう一度確認すると、ルネサンス・大航海時代・宗教改革という、それぞれの繋がりが世界史学習を面白くする。

宗教改革はさらに面白い。ルターの動きは、神聖ローマ帝国内の領邦国家の権力闘争に乗ったことは実に重要であるし、(この領邦国家であったことがドイツ発展の出遅れに繋がる)カルヴァン派の伸張は、さらに重要である。彼らが近代の資本主義化をけん引したからだ。ピューリタン、ユグノー、ゴイセン、プレスビテリアンといった各国のカルヴァン派は、この後のヨーロッパ史に大きな影響力を与えている。ルター派と共に複雑な宗教戦争の時代に入るし、市民革命の要因にもなっていく。

さて、ヘンリー8世の英国国教会の誕生も、スペイン王室とイギリス王室の愛憎ドラマがから講じることが多い。これに当時スペイン=ハプスブルグ家に支配されていたゴイセンの多いオランダも巻き込んで、プロテスタントによる新しい航海時代(ポルトガル・スペインの支配から、オランダ、さらにイギリスの支配へと続く)を開くきっかけとなっている。しつこいようだが、このような歴史的事項の繋がりが、世界史の醍醐味だと私は考えている。

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