このイングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの同君連合については、詳しくやるとやたら戦争の連続の世界史になってしまうので、地理総合としてはそれぞれの比較に留めることにした。イングランドの議会というのはなく、UKの議会であるが、他のカントリーはそれぞれ議会を持っている。またウェールズのみイングランドの法域で、他の2地域はそれぞれの法域を持っている。微妙に違うのである。この中で、スコットランドは2014年に分離独立の国民投票を行ったことにもふれておかねばなるまいと思う。
イギリスは階級社会である。各カントリーには、公爵・侯爵・伯爵・子爵・男爵といった貴族が存在しており、世襲貴族・一代貴族、聖職貴族による上院=貴族院もある。さらにアッパークラス、ミドルクラス、ワーキングクラスといった階級が厳として存在している。
…ビートルズが、勲章をもらい、ナイトとなって、サーと呼ばれる存在になったのだが、これは一代貴族ではない。彼らが、サーと呼ばせていたのかどうかはわからない。ワーキングクラスのジョン・レノンは、こういう事をきっと無視していたように思う。ただ、NYCのダコタ・アパートに入居する際には有利に働いたのではないかと邪推したりする。なにせ、かのニクソン元大統領が入居拒否されたようなアパートだから。
イギリスの貴族の子弟は、17世紀頃、フランスでマナーを、イタリアで古典や芸術を学ぶスタディーツアー(グランドツアー)で学んでいた。これは、当時のイギリスの後進性を示しているのだが、やがて7つの海を支配する栄光の大英帝国/パクス・ブリタニカの時代を迎える。地理としては、ジブラルタル、スエズ、南ア喜望峰、インド、マラッカ、シンガポールといった地政学的に重要な拠点を抑えたこと、また植民地の現地人エリートによる間接支配を行った帝国主義政策などは抑えておきたい。これらは、イギリスの経験主義的な、失敗や成功に学ぶ経験の積み重ねが大きいといえる。
…ケニアでは、イギリス植民地時代に土台が築かれた地図測量を行う、日本で言う国土地理院を訪れた経験がある。植民地支配のためにまず地図を作成する、というイギリスの植民地政策は、ある意味、的を得ているといえるだろう。
最後に、先進国中の先進国としてイギリスについて語ろうと思う。産業革命後の世界初の公害(特に煤煙)に悩み、過酷な労働条件から徐々に労働問題への取り組みを進め、最終的に普通選挙制へと昇華する。この徐々にという経験論的なスタンスがイギリスの特徴で、フランスとは大いに異なる。さらに、世界的な商船の運営からロイズ保険が生まれ、鉄道の建設運営も手探りで行い、先進国故の失敗から生まれたシステム構築がなされた。WWⅡ以後、労働党政権のもとで、「ゆりかごから墓場まで」(from the caadle to the grave)という高福祉政策のもとで、労働意欲が低下し、また労働組合の高賃金ストライキなどで、企業の国際競争力が低下し、高い失業率とインフレによるスタグフレーションが起こった。いわゆる英国病である。保守党のサッチャーによる新自由主義経済政策で脱却するのだが、これも先進国としての宿命的なことではないかと思う。
本日の画像は、先日学院の図書館で借りてきた「イギリスの歴史を知るための50章」である。通勤途中に一応読破したのだった。



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