まずは、『最強の思想家は?』と題された「源流杯」という麻雀に参加している思想家4人。各思想家の思想と麻雀を絡めた逸品。
「悪いな。リーチ、ツモのみ。」麻雀に神はいない。市場原理マージャンといえど絶えざる階級闘争だ。勝利の日は近い。…安上がりのカール・マルクス。「マジかよ。」ツモへの意思、論理を顧みず人間性を暴露し超人は絶叫する。…哭きのフリードリッヒ・ニーチェ。 「なるようにしかならん。」麻雀とは人格だ。捨脾にも配脾にさえも無の秩序がある。…積み込みのジーグムント・フロイト。 「来い。」我ツモる故に我上がる。生活世界の地平に役満の意識を意識して意識する。…キメ打ちのエドムント・フッサール。
…これには笑うしかなかった。
フーコーを題材にした『ララーラーラ』も実に面白い。「私は日本で驚くべき歌を聞いた。」と、フーコーが聞かせたのは、吉田拓郎の『人間なんて』である。聞き手の日本人は、「この曲は1971年の作品で、『言葉と物』(フーコーの評論)は66年ですから僅か5年後に(その影響を受けて)人間への懐疑を歌っています。」と答える。フーコーは、”人間なんて”の部分ではなく、♪ララーラララララーラが重要だと述べ、人知による物事の捉え方は、かつては「類似」だったのが、その後「比較」となり、やがて「分析」となった。この歌のこの部分は、コトバのシステムに語らせる我々の懐疑を、類似・比較・分析で示そうとしていると結論付けている。…フーコーが最後に♪リラリロルルリロロラーは、AIの検索でも意味をなしていない。(笑)
カフカを題材にした『構造の特性は』という作品。前述のように、カフカは、プラハ住宅災害保険協会に勤務していた。集合住宅の入居者たちが、柱の耐震強度が30%しかなく、行政が震度5で倒壊するゆえに立ち退かせ解体しようとしていると訴えてくる。保険が適用されるためには壊さないとわからない。まるで人の手にには触れることができない構造のようです、とカフカ。私は自分の報告書にレヴィーストロースを引用し、「建設業と建設関連企業の保険義務の範囲」というレポートを書きました。”構造とは要素と要素間の関連の全体であって一連の変形プロセスを通じて一定の特性を保持する。”カフカは、業者と行政の責任のなすりあいを図式化するのだが…。最終的に出来上がったのが、ダビデの星(=ユダヤのシンボル)になってしまうという、カフカの出自をめぐるブラック・ユーモア。…脱帽である。…この他にも、ハーバーマスやアーレント、クーンなど俊逸なものもあったのだが、いしい氏の現代思想への深い見識があってこその作品だと思う次第。手塚治虫文化賞短編賞を受賞した本書。素晴らしい出来である。文庫本故に老眼の私は読むのに苦労したが、哲学に興味のある方には、おすすめの1冊。





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