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マタイの福音書5-14~15にある「丘の上の町」は、ユートピア創造というピューリタンの信条を簡潔に表しており、アメリカが最良の国という「アメリカの例外主義」の根幹にもなっており、歴史的にはニューイングランドのアイデンティティだといえる。ただし、(1)宗教が自分の人生にとって大変重要であるか、(2)教会に少なくとも毎週拝みに行くか、(3)毎日神を拝むか、(4)神の存在を確信しているか、という4点で2016年の全米調査によれば、ニューイングランドの6州のうち5州は「最も宗教的ではない」ランクに位置することが判明した。このニューイングランドのイメージは、近年大きく変化しているようである。
ニューイングランドは、バージニア(VA)のような大規模プランテーションに適したような肥沃な土地はなく、小規模産業の活性化を促すことになった。イギリスの植民地への課税は不当に重かったので、厳しい条件下で最大の利益を挙げる、抜け目ない、特に狡猾な「ヤンキートレーダー」が生まれた。起業家と投資家は、南部との取引が上手く行かないと悟ると、ロードアイランド(RI)の商人やボストンの商人は、西部地域への投資、「三角貿易」へと転換した。
ニューイングランドは、教育程度が高い。プロテスタントにおいては神と直接に意思疎通を図らねばならないため、その仲介役の牧師育成のための教育機関が必要であったし、聖書を読むための識字率の向上のための学校教育が必要だったのである。1636年創立のハーバード大学、1701年のイェール大学、1746年のプリンストン大学などが先駆となった。学位修得率も高く、2007年の調査では、マサチューセッツ州(MA)は16%で最高位にある。トップ10に、コネチカット州(CT)、バーモント州(VT)、R!が含まれる。印刷文化の発達もニューイングランドの特徴である。この知的生産活動を重視する風土は、この地の特徴であるが、アイビーリーグの授業料は高く、奨学金制度が整っているとはいえ、社会格差は厳然としているのが現状である。
ニューイングランドの6州で、18世紀はCTが地域の中心(工業地域)だったが、今日、VT、ニューハンプシャー(NH)、メイン(ME)など北部に集中している。さらに、この地域は、従来のニューイングランドとメトロポリタン・ニューヨークに分かれている。この見分け方は、NFLのペイトリオッツ(MAが本拠)かNYジャイアンツ(NJが本拠)のファンかどうかであるそうだ。
19世紀半ばまでは、プロテスタント的なこの地が工業化が急速に発展した地域であった。ここにアイルランド系移民が押し寄せてくる。1840年代には、南部地域ではカトリック色のほうが強くなり、1884年にはボストン市長出すまでになった。(現状でボストン・メトロポリタン地域の23%。シカゴ、NYC、フィラデルフィアなどを抑え最大の集住地となっている。)民主党勢力が強い勢力を保っているのはこういう背景がある。1890年以後はドイツ、イタリア、ポーランド、ロシアのユダヤ人が移住してきたのだが、従来のニューイングランド住民(=WASP)は、彼らを吸収しつつもその特性を固持した。それは印刷・出版業界を抑えている彼らによるニューイングランド版アメリカ史の教科書に顕著に現れているといえるだろう。
…こうしてみると、ニューイングランドの歴史的宗教的圧倒的地位は見事に崩れているように見える。昔々、ボストン中心部のトリニティ教会を見学した。浅い知識すらなかった私は、てっきりピグリムファーザーズの流れからカルヴァン派だと思っていたが、ステンドグラスの美しい英国国教会のハイチャーチであった。ボストンとカトリックに最も近い英国国教会ハイチャーチは、今でも簡単に結びつかない。しかし、時代の流れが複雑なアメリカを今なお形成し続けているのだろうと思う。



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