2026年7月9日木曜日

地図で読むアメリカ8

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「地図で読むアメリカ」(J・M・Vardaman著/森本豊富訳/朝日新書)の書評、第8回目。第4章はサウス地域である。サウス地域については、著者は2つのサウスがあるとしている。まず「アップランドサウス」と呼ばれるVA・ノースカロライナ(NC)からアーカンソー州(AR)北部まで伸びるベルト地帯である。ここは、独立戦争当時の英国派の二世・三世世代が定住化した地域で、出自が貴族主義的で、「プランター」と呼ばれる支配階層で、年季奉公人を雇用、後に黒人を購入した投資家で、利権に躍起で、人権や平等、博愛という観念はなく、南北戦争時は北軍に与した場合が多かった。(ちなみに、サウス地域に著者が含まなかったフロリダのマイアミからキーウェストは、NYやシカゴとの関連が強く、ユダヤ人とヒスパニックが多い。キューバやハイチの移民も混在し、異質な存在であるとのこと。)

「ディープサウス」については、本書の記述の中でも教材研究として有為なものを選びたい。1つは、「コットン・ジン」という種子を取り除く機械の話である。従来の綿花の品種は、内陸部ではうまく生育しなかったのだが、新しい品種がそれを可能にした。ただし、この品種は種子を取り除くのが難しかった。この機械の発明が、内陸部にも綿花栽培を押し広げる。それは同時に奴隷の需要を増加させた。2つ目は、ディープサウス地域と全く区域を同じくして繁殖した「葛」(クズ)の存在である。道路沿いに植えられたが、日に30cmも伸びたという。3つ目は、アファーマティブ・アクションである。サウス地域においても黒人の状況は改善されており、流入のほうが多くなっていること。白人と黒人の政治状況では、白人=民主党・黒人=リンカーン以来の共和党という支持の逆転が興味深い。これは公民権法への民主党の積極的スタンスが大きく関わっている。

サウス地域全体では、4大米軍基地を始め軍事拠点が多い。WWⅡの参戦時に降雪が少ないサウス地域が訓練に適していた故であるらしい。NCのフォート・ブラッグ(陸軍)は5万人の軍関係者と家族が駐屯している。VAのノーフォーク海軍基地もあり、サウス地域全体で23万人もいる。関連企業も多く経済効果は数十億ドルにも及ぶ。

サウス地域は「バイブルベルト」と呼ばれ、非常に宗教的な州・上位11州のうち10州がサウス地域である。(画像参照:地域外ではユタ州が入ってくる。)南部バプティスト連盟が圧倒的に多い。

南北戦争後も、連邦政府に対する不信感が強い。連邦政府の黒人の投票権確保に対して識字テストなどで阻止しようとしてきたが、2016年いくつかの州では、投票時に写真付きのIDの提示を求めた。アメリカでは戸籍制度がないので、出生証明書、社会保険番号、自動車免許証などが身分証明書となる。貧しい人々は自動車免許を持たないし、それに代わるIDも手続きが煩雑で、貧困層は腰が重くなる。現在もこの構造は続いているといえる。

…以前、NCに行った時、差別は今もなおテーブルの下で行われているという女性教師の言を聞いた。少なくとも「アップランドサウス」のNCでは、そうなのだ。ディープサウスでは、今なおテーブル上でもあるように思える。非常に難しい問題である。

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