2024年10月2日水曜日

名画で見る新約聖書

学院の図書館で、「名画で見る聖書の世界<新約編>」(西岡文彦/講談社)を借りてきた。このところ、アフリカや現代の哲学関係を読んでいるので、頭の休憩にちょうど良いかと思ったのだ。ところが、これがなかなか面白い。

たとえば、聖母マリアの受胎告知の絵画には約束事があって、①赤と青の衣で描かれること。②天使は純潔の象徴であるユリを持っていること。③マリアは聖書を読んでいる最中であること。となっている。

とはいえ、代表的な受胎告知の絵画は、マルティーニの作品なのだが、彼はフィレンツェと対抗するシエナの礼拝堂のために制作したので、オリーブの枝を持っている。フィレンツェのシンボルがユリだったかららしい。(中世的であまり私の趣味ではないゆえに画像は割愛させてもらった。おそらく作者名で検索すると出てくると思う。)

時代とともに、この約束事は破られていく。私が受胎告知の作品群の中で、最もいいなと思う作品は、アンネトロ・デ・メッシーナの「受胎告知のマリア」である。

この作品には天使・ガブリエルはいないし、アトリビュート(持ち物の約束事)のユリの花もない。青いショールの下にのぞく赤い服で、マリアだと判明する。しかも開かれた聖書で受胎告知の場面だとわかる。マリアの心理描写に重きを置いた作品であるとか、天使が去った後を描いたとも言われる。手の動きは当時の修道会の「執り成し」の祈祷の型であるらしい。…うーん、いかにも。”執り成し”とは…。聖母マリア信仰の本質を突いた、実にイカす絵画であると思う。

マリアの受胎告知について述べられている福音書は、マタイとルカのみで、しかも短い。この時、マリアが読んでいたのは当然ながらユダヤ教の聖書で、イザヤ書7章14節であると、おそらく後から言われているようだ。「主は自らひとつのしるしをあなたがたに与えられる。見よ、おとめが身ごもって男の子を生む。その名はインマヌエル(神は我らと共にの意味)となえられる。」…出来杉君だなと思ってしまうが、旧約の様々な救世主予言をイエスは実行していくので、なるほどとしか言いようがない。

この本についても、面白い箇所や気に入った絵画について少しずつ、肩のこらない書評を書いていこうかな、と考えている。

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