2012年8月20日月曜日

イスラエル考現学 Arabian

【イスラエル-(超)多文化共生(強制)の地を覗く-その26
岩のドームで
今回のイスラエル行は、言語がヘブライ語が中心で堪能な息子がいたこと、また英語はその嫁さんであるTさんがいたことで、私から現地の人と会話するということが非常に少なかった。楽をさせてもらったが、少し残念でもあった。特に、アラブ人とも話をしたかった。だが、ラマダーン(断食月)であったこともあって、一応にアラブ人らしき人々は寡黙だったように思う。それは私がそう感じただけであるかもしれない。

WEBを調べてみると、2006年の調査で、イスラエル人の82%がユダヤ原理主義的な宗教国家ではなく、民主主義国家が好ましいと考えている。と同時に、62%がアラブ系市民がイスラエルから出ていくことを望んでいるという自己矛盾をかかえているという記事があった。
http://palestine-heiwa.org/news/200605130952.htm
パレスチナ自治区側の検問所にて
たしかに、ユダヤ系の人々は世俗派も含めてアラブ系の人々に良い印象を持っていない。ホームステイさせてもらったおばあちゃんは、アザーン(モスクから流れる礼拝の合図)が大嫌いだったし、長年の自爆テロ攻撃を受けたことなどの影響もあるだろう。(そう言ってしまうとアラブ人からすればイスラエル建国こそが問題だということになる。ここは中立的な立場を取りたい。)実際、アラブ系の人々が住む地域を何度もタクシーで通ったが、明らかに雰囲気が違う。職業的にもブルーカラーの仕事が多いらしい。しかも彼らはイスラエル国籍を持つのに兵役の義務からはずされている。(イスラム教のようでイスラム教ではないドルーズ派は例外らしい。)

このような差別的・第二級市民的な存在に甘んじているアラブ系の人々は、大きなパラドックスの渦中にある。第二級市民であってもイスラエルはやはり周囲のアラブ国家よりはるかに先進国であり、それなりの豊かさを享受できている。同時に周囲の同族からは全滅させると脅迫を受けているわけだ。
http://www.danielpipes.org/10907/
ざくろは多産のシンボル アラブ系ジュース屋
超正統派同様、アラブ系の人々も多産である。確実に人口を増やしている。イスラエル政府としては、頭が痛いところだ。だからこそ、イスラエルへの移民におけるユダヤ人の規定をゆるめ、ユダヤ教徒ではないユダヤ人の血筋をもつ者を増やしているのかもしれない。
四国程度の国土しかないイスラエルが、ユダヤ教原理主義ではなく、民主主義と資本主義を基盤とした「ユダヤ人」国家を持続していくのは大変だ。アラブ系の人々、超正統派、ユダヤ人らしからぬユダヤ人をも巻き込んだ大きな人口比例のジレンマを抱え込んでいるわけだ。

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