2018年10月31日水曜日

PBTの話(71) 妻の焼きそば弁当

朝から忙しかった。昨日の帝京大学の翻訳の続きとプリントアウトを朝の空き時間にやっていた。3・4・5限目が授業で、放課後には願書をクラスで一斉にやる予定だったし、気が焦り、肩もこったのだった。やっとこさ今日の食事が取れたのは、1時過ぎ、要するに昼休みである。制限時間は20分。昼休みの後半には、昨日の学生達に確認をして貰わねばならないからである。と、いうわけで、妻の作ってくれたお弁当をあけて感激した。大好きな焼きそばだったのだ。後でで聞くと焼きそばではなくスパゲティの麺だったらしい。おにぎり付きが嬉しい。卵焼きは永遠に不滅である。もちろん美味である。妻は毎朝5時起きで、弁当をつくってくれている。(私は6時起床。7時10分出発という毎日である。)ありがたいことである。

さて、昨日の韓国の裁判結果を受けて、日本は一気に怒りに燃えているようだ。あの朝日新聞の論調も、産経ほどではないにせよ、大いに批判的だ。今回の件ではさすがに、韓国の味方はいなくなってしまうだろうと思われる。かなり大きな問題になるのは想像に難くない。この件は、じっくり考えて、また何時の日かエントリーしたい。

さて、相変わらず、米国の小学五年生男は失笑をかうようなことになっている。出生地制による国籍取得を禁じようとしているが、自国のみがこの制度を実施している(実際は他国でも実施している)と、教養の無さと感情的な見方、中間選挙狙いであることを露呈している。また、ペンシルベニアのシナゴーグを訪れ、デモの参加者から社会の分断の元凶だと強い批判を受けている。まあ、当然ですな。

2018年10月30日火曜日

PBTの話(70) イレギュラー

MBMRの職員室より日本人会=PBTを望む/小さく見える青い看板はPBTの入り口である
PBTは帝京大学の系列校の1つなので、推薦入学制度がある。ありがたいのは、国公立大学や一部の難関私大との併願が可能で、合格すれば入学金などは返還されるというシステムである。したがって、私は私費生には国公立大学や難関私大を受ける際、帝京大学との併願を出来るだけするよう奨めている。今年は我がクラスから、7人が志望した。

ところで、出願書類には、当然ながらPBTの卒業見込み証明書や成績証明書はもちろん、各人の高校時代の離校証明書(マレーシアでは卒業証明書とは言わない)・成績証明書が必要である。留学する大学によって、この高校時代の書類に関する扱いがかなり違う。マレー語や中国語で書かれている書類は、日本語か英語に翻訳することが求められる場合がほとんどだ。この翻訳の証明も、日本で言うところの公証役場での証明が必要なところもあるし、日本大使館・領事館の証明を求めるところもある。(これは、中国からの留学生は在日本の大使館・領事館では可能なようだが、マレーシアでは不可能である。)なかなかヤヤコシイのである。

さて、帝京大学では、日本語訳のみだそうだ。今日、それがわかった。7人中4人が英語訳はすでに揃えてあるが、日本語訳をしていない。急いで対応を迫られたわけだ。実は、私のこれまで関係した大学では、こういう事例は唯一である(去年はかかわっていない)。勉強になったし、愚痴を言っても仕方ないので、放課後、PBTの進路ルームで、4人の学生と日本語訳作成に勤しんでいた。彼らはなかなか優秀で、午後7時段階であと一歩と言うところまできた。まあ、明日には完成すると思う。ふー。である。まさにイレギュラーな1日だったわけだ。

2018年10月29日月曜日

ペンシルバニアの事件に思う。

http://handbill.us/2016
/06/13/trump-a-go
od-guy-with-a-gun
-could-have-helped-
stop-orlando-massacre/
民主党の重鎮に対する爆弾送付事件があったと思ったら、今度はペンシルベニア州ユダヤ教のシナゴーグ襲撃事件が起こった。アメリカの分断は、その祭司である大統領の無軌道で品位のない差別発言が拡大させていると、多くの人々が指摘するが、私もその責任を問いたいと思う。

そもそもペンシルバニア州は、「信教の自由」が「州是」である。クウェーカー教徒のウィリアム・ペンによって開かれ、カトリック教徒の比率も多い。もちろんユダヤ教徒もである。その地で、このような事件が起こることが信じられない。小学5年生の大統領は、シナゴーグが武装していればこのような事件は起こらないと言う。果たしてそうなのだろうか?

そもそも、銃器の所持は、合衆国憲法の権利の章典の修正第2条に抵抗権の必要性から付加されたもので、歴史が古い。しかし、これはあくまで、連邦政府への抵抗権の肯定であって、学校や宗教組織が武装する社会とは全く違うだろうと思う。私は、アメリカの民主主義や政治がきれい事ではなく武力を常に肯定して発展してきたことを歴史から学んでいる。だから、一概に銃規制すべきだと結論づけたりは出来ないと思うのだ。

とはいえ、世界の中心的な先進国で、各人が自己防衛のために常に武器を携帯しなければならない社会となることが必要だと言われて、国民は納得することが出来るだろうか。極めて非文明論的な結論である。

この事件の直後、大統領は、さらに死刑存続を訴えたらしい。さすがに小学5年生である。おそらく、本人はペンシルベニア州が死刑をどう扱っているのか調べもしていないだろう。調べてみると、ペンシルベニア州は死刑が存続している州の一つであるが、判決はでるものの、ずっと執行はされていないのが現状である。この辺の問題は、各州の主権領域であり、死刑廃止州もあるわけで、司法制度にも関わるし、連邦の行政の最高責任者たるものが、外交や軍事ならともかく、軽々と口に出すものではないと思うのだが…。まあ、そんな分別もないのだろう。さて、この事件、中間選挙にどう影響するのだろうか。

2018年10月28日日曜日

PBTの話(69) 基本問題38

わが教室の後ろの黒板に、EJUまでのカウントダウンが…(10月11日撮影)
EJUが、いよいよ近づいてきた。あと2週間である。今年は、6月のEJUに向け、パワーポイントを駆使して早めに、範囲を進めるだけ進んだ。6月EJU後は、復習を重ねた後で、過去のEJUの問題を授業を使って学生にやってもらっている。その次の時間を使って解答・解説という方式で過去4年間分・8回やってきた。総合科目の過去問題は、あまり古いと資料が変わっていたり、法改正などで変化している問題(たとえば、選挙権年齢や国際収支の算出方法の改正など)も含まれてくる。したがって、過去問といっても、これが限界かなと思う。
オリジナルの問題(10月17日付ブログ参照)も、もうひとつ追加して、4種類作った。こっちのほうがはるかに難しいらしい。(笑)

昨年との大きな違いは、宿題ではなく授業時間を使っていること。これは、時間的余裕があることと、年度初めに「下位の学生の点数アップ」という命題を与えられているからだ。私は、上位の学生を延ばすことは得意だが、特に昨年は下位の学生にまで手が届かなかった。という昨年の反省からきている。日本語だけでも宿題が多いので、総合科目は授業内で完結してあげるのも必要かと思う。(但し、土曜日補習の難解模試は希望者なので宿題にしている。)各人の点数(38問中の正解数)は、特に記録していないが、一度集めて一瞥している。よって、今年は各人のだいたいの正解率は掌握している。(昨年・一昨年は、人間は自由の刑に処せられている、というスタンスだったので、全く見ていない。これが下位学生の掌握を怠ることになり、失敗の源だった。)

さて、いよいよあと2週間である。もういちど基礎中の基礎を固めようと思う。先週、地理38問、歴史38問のオリジナル問題を作った。(EJUは全38問)地理の最初の問題は、時差は経度何度で1時間か?という四択問題(EJU方式)である。そう、基礎中の基礎を固めるのである。歴史なら市民革命(ピューリタン・名誉・アメリカ独立・フランス各革命)の順番を問うものから始める。全問正解を目差して、難度もやってほしいものだ。もちろん、公民分野の続編は明日・明後日に作成する。そして、最後に今年の6月の過去問でしめるつもりである。

実はEJUの問題は、毎回何種類かあるようだ。マレーシア会場は日本とは時差が1時間。問題も回収されるが、世界中で全く同じというわけにはいかないかららしい。公式な問題集はそのうちの1種類でしかない。昨年、そのことを知らなかった私は、F38の学生から、全く違う問題でしたと言われて、ぶっこけたのだった。(笑)さて、今回はどうなのだろうかと楽しみにしている次第。

在馬インド人の視点を探る 7

https://blog.goo.ne.jp/ten
njousenn/e/748fa66deed7
53c63482a1c6ceea2790
一番下がタミル語の立入り禁止
「多民族国家マレーシアの国民統合-インド人の周辺化問題」、いよいよ佳境である。マラヤ連邦独立、5.13事件、そして、ラーマン以後のブミプトラ政策によって、人口の1割弱のインド系マレーシア人は、その政治力の弱さ故に周辺に追いやられていく。

第5章では、まず教育問題について触れられている。国民国家として、共通の国民意識形成のため、マレー語を国語(英語は公用語)とする政策が取られた。

これに対し、中華系は(中国語教育を認めるように)猛反対するが、インド系は、それほどではなかった。この理由は、中華系は都市にあろうと地方にあろうと、出身(広東とか福建とか客家等)が異なろうとマンダリン(北京語)を共通言語とすることができた。いわば、言語は、民族的アイデンティティなのである。

ところが、インド系の主言語・タミル語は、インドのローカル言語にすぎず、都市住民の北インド系の多くは英語を使用していた。ここでも、インド系マレーシア人の構造が露呈する。地方のエステートのタミル語の学校の存続自体が、タミル語の教員不足できびしくなり、しかも中等教育以降はマレー語に移行しなくてはならない、というわけで進学をあきらめる者も増加し、これはタミル系の子供の学習機会を奪うことになった。一方、都市の方では、英語で授業を受けるためには私立の学校に行かねばならず、その後は英語圏へ留学するしかなくなったのである。これらに対し、MICは無力であった。

1990年代に入り、マレー語・英語の2言語体制へと転換した、非ブミプトラに対しては、中国語・タミル語の3言語体制が取られるようになった。とはいえ、都市部ではタミル語の能力が低下しているようである。英語が出来れば、中国系・マレー人とビジネスが出来るし、マレー語はマレー人との会話程度で十分、タミル語も宗教的儀式など以外は、会話程度で十分というわけだ。地方のエステートの人々はタミル語で、少しマレー語が出来る程度。と、なれば就職機会も制限されてしまう。

しかしながら、インド系は、黙っている。ブミプトラ政策は、自分たちに不利だが、国全体が豊かになることで、その恩恵を自分たちも受けることが可能なことを彼らはわきまえているようである。…まさに周辺化である。

…この本が書かれたのは2000年である。2018年の今、KLで出会うインド系は実に多彩だ。彼らの英語(主にタクシー運転手やバス友)は、マレー系や中華系より訛りが少ないのでわかりやすいのは事実。おそらく、タミル系の人々も都市化の波に押されてきているように思う。エステートの労働は外国人労働者に取って代わられた可能性が高い。

2018年10月26日金曜日

在馬インド人の視点を探る 6

https://4travel.jp/travelogue/11221067
「多民族国家マレーシアの国民統合ーインド人の周辺化問題」(山田満著/大学教育出版)のエントリーを続けたい。

1969年5月13日以降、インド系の人々は、ブミプトラ政策の推進と共に周辺に追いやられていく。その過程が、本書では詳細に語られているのだが、特に記しておくべき内容として、1968年に12職種における非マレー人の登録を要請する雇用法が議会を通過していたが、1969年6月に、その後の新経済政策(NEP)の2本柱の1つ「経済分野に於けるエスニック集団間の不均衡是正」を背景に、約2000種にまで適用範囲が拡大されたことが挙げられる。これらの職種には、インド人が移民以来集中して働いていたプランテーション、鉄道、公共機関、さらには未熟練・半熟練分野の職場が含まれており、市民権を有さない労働者に雇用存続のための労働許可を求めるものであった。これにより、インド人は大打撃を受ける。非識字であったり書類の不備があったり、市民権への理解が浅かったりという理由で、6万人のインド人が帰国していったという。また、これまでインド人が圧倒的優位だったエステートの雇用比率は1965年の48.8%から75年には41.0%まで下がっていく。ちなみにマレー人は22.5%から38.0%へと上がっている。

ラーマン政権からラザク政権へ移行して以降、インドのエスニックグループの政治力は縮小の一途をたどっていく。総選挙ごとの考察は割愛するが、MICの凋落は明らかである。以上第4章国民戦線体制下のインド人社会の政治構造。

…ブミプトラ政策も様々な法律の集合体であることが実感できた。引き合いに出したくはないが、南アのアパルトヘイトの如き”法律の集合体”だということである。

2018年10月25日木曜日

日本人会バザー 80% off

この前の日曜日に、日本人会のバザーが行われた。毎年、日本人会の様々なクラブや同好会が参加・出品する。PBTはこの日本人会の中にあるので、全くの他人事ではない。この3年間、実際のバザーに出向いたことはないが、毎年売れ残った作品が、日本人会のロビーで展示販売されるのは知っている。たしか1年目は美術クラブのカレンダーを購入したと思う。ほとんどが、手芸などの手の込んだ作品で、価格も高く設定されている。そうりゃあ当然だし、売れ残るのもまた市場原理である。

今日、売れ残りの展示を覗いてみた。ビックリしたのは、今日が最終日で、80%オフだという。これだけ手の込んだ作品が…と、スタッフの女性共々ため息をついたのだった。レースの作品の善し悪しなどは、全くわからないが素晴らしいものに違いない。手作りのパッチワークの布のコースターもいいデザインだが、家には十分数があるし…。

とにかく、なにか1つでも購入しようと思ったのだった。で、買ってもいいかなと思ったのはハロウィンの飾り。黒猫がかわいい。値札はRM30である。おそらく本番なら手が出ないし、わざわざ買うことはないだろうと思うが、80%オフである。RM6だ。この売り上げは、全てマレーシアの恵まれない人々の元に行く。誠に申し訳ないけれど、80%オフなら…と、購入したのだった。(画像は、購入した作品。ビニールで保護してあり、少し見にくいのはご勘弁。)玄関のドアにでも飾ろうかと思ったが、妻はあまり何も飾りたがらない。妻が言うに、「時間が経つと汚くなるからビニールに入れたままにするべきだ。」…なるほど。というわけで、ビニールで保護したまま、私の本棚(ここだけ私の小宇宙が拡がっている)に飾ることになった次第。(笑)

作者の方に対しては、安く購入して誠に申し訳なく思うけれど、せめて、この飾り、大事にしたいと思う。

2018年10月24日水曜日

中国へのODA終焉に思う。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151225-00000009-wordleaf-pol.view-001
日本の中国へのODAが終わる。2018年度の新規案件(技術協力)を最後に終了する方針だようで、約40年続いたODAは総額3兆6500億円に達するそうだ。と、いっても無償資金協力ではなく有償資金協力がほとんど(完済しているらしい)であるはずだ。

そもそも日中国交回復時に、周恩来首相から戦後賠償はいらない(国交回復時に莫大な賠償金を得たら、血税をもってする故に、日本の人民に恨みを残す)と言われた日本は、ODAというカタチをとった。これは極めて正しい選択だったし、周恩来氏という人格が中国の国益と日本の国益をWinーWinに結びつけたと私は思っている。

さて、これで中国は開発途上国であるといるという主張はかなり鳴りを潜めるはずだ。そもそも中国的な思考は二元論的である。陰陽や儒教・老荘のように対極的な思考が共存する。したがって、矛盾を内在するというマルクスの弁証法的唯物論はそもそも中国に適した思考であった。ある時は途上国、あるときは世界の大国(先進国とは言わないところが凄い。)と主張する。これは、極めて中国的なものだと思う。環境問題では途上国の立場をとっていたが、最近はだんだんそういうことは言わなくなった。時代が中国に自信を与えているのかもしれない。

この機会に、中国政府はそれまでほとんど日本のODAの存在を明らかにしてこなかったが、マスメディアにこの事実を大々的に報道するよう指示したとか。この変化にも私は注目したい。

ただし、OECDには未だパートナー参加である。まだまだ紆余曲折はありそうだ。

内田樹 新潮45休刊の本質論

某国大統領にオシッコをさせる 芸術家がNY・ブルックリンに5つ置いた作品
http://news.livedoor.com/article/detail/15481569/
内田樹先生の「新潮45休刊について」という記事を読んで、まさに本質を突いていると思った。杉田某や小川某の言論は、言論とは言えない。同じ主義主張をもつ身内を想定して書かれたものである。本来、言論というのは、身内限定に書かれるべきではない、と内田先生は主張している。自然科学の論文のように、懐疑的な読者を前提にしてなおかつ情理をつくして説くというルールを忘れてはならない。身内以外の読者が読んでも、共感も同意も出来ない読者が読んでもなおリーダブル(読みやすい、面白くてスラスラ読めるなどの意)なものを書く以外に新たな読者を獲得する手立ては存在しない。
http://blogos.com/article/333627/

要するに、新潮45休刊は、内田先生のいわれる”ルール”を甘く見た結果だと、いうわけだ。身内以外の読者が傷ついたり怒りを感じたりする読者がいるだろうことを想定していない。これは、政治家が調子に乗って発言し、嵌りやすい罠であろうと思う。杉田某の政治姿勢はあまりにポピュリズム的だ。身内に受ければ良いと過激な発言を繰り返すような幼稚な政治家を私は好まない。

これは、あまりにも小さな存在だが、私のブログにもいえるかもしれない。出来る限り、様々な立場を想定して書いているつもりだ。このBloggerは世界に発信している。そのうえで読む方を傷つけたりすることのないよう表現や引用には気をつけているつもりだが、まだまだ甘いかもしれない。

とはいえ、小学5年生・15点男の某国大統領については遠慮する気はない。この数日だけでも、INF離脱。トランスジェンダー(某国では140万人と言われる)への性別変更不可。この人物は、身内しか相手にしていないようだ。いや、できないのだと私は思う。深い思慮や品位を全く感じない。私の美学の対蹠点にある。地球市民として、持続可能な社会をつくるためには、批判を続けることが必要だと思う。

2018年10月22日月曜日

深夜の出来事

我が住処から見た ちょっと”まほろば”
昨夜のことである。私のコンドは階上の音が響くという欠点がある。隣室とは大きな空間があるので問題は全くないのだが、これには閉口することがある。深夜、2時か3時頃だろうか、寝ぼけていてよくわかならないのだが、大きな音で目が覚めた。階上の住人が何事かをしているらしい。あまりに酷いので、文句を言いにいこうとしたら、妻が「セキュリティにいうべきだ。」と忠告してくれた。なるほど。眠くてあまり頭が回っていないけれど、私はケンカできるほど英語はできないことに気づいた。

玄関のセキュリティのところまで行ったら、実に幸いなことに唯一日本語が堪能なオジイチャンのセキュリティがいた。(まさにラッキーである。)日本語で、説明すると、「では行きましょう。」と言ってくれた。階上でエレベーターを降りると、「見えないところで待っているように」と言われた。顔を合わさない方がいいらしい。このオジイチャン、凄い人で、「階上の人物は、コンピュータ関係のエンジニアだから話せばわかる。」と教えてくれた。(もちろん私たちの住んでいる階も部屋番号も頭に入っているのだった。我がコンド他のコンドに比べ、セキュリティーがゆるいのかと思っていたけれど、実は極めて人間関係で繋がっているのだった。)で、ドアをノックし、少し話して戻ってきた。「こういうときは、絶対セキュリティーに言ってくれたほうがいい。」と私の行動、いや妻の指示を褒めてくれた。

その後、音はしなくなった。…と、いう深夜の出来事のオハナシである。

在馬インド人の視点を探る 5

http://www.writeopini
ons.com/13-may-incident
いよいよ、5.13事件の話が出てきた。総選挙の結果を受けて、非マレー系の野党が過激なデモを行ったことに起因している。DAP(民主行動党)は、1965年シンガポール分離独立後生まれた政党で「マレーシア人のマレーシア」がスローガンで、エスニック集団間の平等を唱え、非マレー系が多数参加していた。都市居住のインド人の多くが支援していたようだ。またGRM(マレーシア民政運動党:通称グラカン)は1968年結成。純粋なマルチ・エスニックな立場(エスニック集団の平等、すなわちマレー系主導政治への批判)を鮮明にしていた。
DAPのデモは、低所得層居住区のスタバック、インド人労働者階級の居住区スンツルから出発している。GRMのデモは、クアラルンプールの中心街ブリック・フィールズ(いわゆるインド人街:鉄道労働者居住区)を行進した。野党支持のインド系が、中華系の人々と共に参加したことは明らかである。「マレーシア人のマレーシア」から「マレー人は出て行け」「マレー人はカンポン(農村のこと)に帰れ」「マレー人は死んだ」とシュプレヒコールは過激化する。

この事件による死者数は中華系143人、マレー系25人、インド系13人。負傷者は中華系125人、マレー系37人、インド系17人。州別ではクアラルンプールのあるセランゴール州が最も多く、中華系の死者125人。第四の都市・イポーのあるベラ州(同9人)、マラッカ州(同6人)など中華系の多い州で事件は同時多発した格好だ。

ただ、確認しておきたいのは、前述のように、インド系の政治集団の大多数は、タミル系の農業従事者である。彼らはMICを支持しておりマレー系主導を当然支持していた。中華系も全部が全部野党だったわけではない。完全にマレー系対中華・インド系という図式ではないのである。野党の、それもDAP・GRMといったマルチ・エスニックを標榜する政党支持者がきっかけとなったことが、これではっきりわかるのだ。

2018年10月21日日曜日

在馬インド人の視点を探る 4

KLのインド人街にて
『多民族国家マレーシアの国民統合-インド人の周辺化問題』のエントリーを続けたい。第3章は、独立後のラーマン初代首相の時代の12年間のインド人社会についてである。
ラーマン首相は、マレー・中華・インドの3民族の融和を進めるわけだが、それは、話合いで独立を勝ち取る上でのイギリスからの条件でもあった。「独立の希望を抱くのならば、3つの主要なコミュニティが互いの相違を解決した後」との声明である。
この状況下で、インド系の政党・MICは、人口比以上の優遇を受けることになる。ラーマン首相は、個人的な信頼関係を築き、3民族の融和を図りながら、建国初期の困難を乗り越えていく。
ところで、政治的視点から見ると、多数派であったマレー系にとって最も脅威だったのは当然ながら経済力があり、しかも人口が多い中華系勢力であった。それに対しインド系人口は少なく政治的にも微力故に、両者の調整役が求められたわけだ。

しかしながら、MICとインド人社会には、大きな問題が内在していた。MICの最大の支持基盤は、タミル系のプランテーション労働者であり、北インド系の都市居住者にとっての利益代表ではなかったことである。したがって、その不満は、同じくラーマン政権にあるMCAに不満を抱く中華系の人々と結びつくことになる。野党の政党は、主としてこういった中華系・北インド系の人々が支持する構図になっていく。本書では、その経緯や選挙での得票数が詳細に記載され分析されている。

1969年5月10日の総選挙は、与党連合党(マレー系UMNO・中華系MCA・インド系MIC)の大幅な議席減となった。野党との対比で前回89対15だったのが、この選挙では66対37。得票率は48.5%対51.5%と逆転した。(マレーシアは小選挙区制なので死票が多い。)そう、この結果が、多民族国家マレーシアを大きく揺さぶる5.13事件を引き起こすことになる。

2018年10月20日土曜日

11月6日 米中間選挙 考

https://www.cleveland.com/darcy/index.ssf/2016/
12/trump_and_mattis_discuss_flag.html
アメリカの中間選挙が近づいている。東洋経済のオンラインの関連記事をまとめ読みしてみた。

一番可能性が高いシナリオは、「下院が民主党過半数、上院は過半数に届かず」という情勢らしいが、場合によっては、上院も民主党が制する可能性もあるようだ。下院だけでも、様々な疑惑を召還権限で大統領の調査をすることが可能になる。税機問題、ロシア疑惑、司法妨害…。上院の過半数を握れば、政府高官の審査をより厳しくできる。ボコボコと閣僚の首をすげ替えている大統領をやっとチェックできるわけだ。ただ、弾劾には上院の2/3が必要なので、そう簡単にはいかない。…ともかくも、かのジェファーソンが作り上げたアメリカが誇る三権分立の機能がやっと正常化する。
https://toyokeizai.net/articles/-/243630

アメリカのオンライン上の賭けサイトでは、下院では民主党が優勢で70%、上院も35%にまで上がっているそうだ。専門家もほぼ同意見である。現在、アメリカ経済は好調だが、有権者の関心はうすい。世論調査で経済を重要な政治課題に挙げたのはわずか20%。減税も共和党の追い風にはなっていない。「金持ち優遇」「大企業有利」という民主党の批判が効果を発揮している。製造業の多いオハイオ州の世論調査では、争点となっているのは、医療保険が最も多く、年金、移民問題、銃規制。今もめている中国との関税問題など、その後に来る。通商問題・貿易赤字の問題は、わずか1%である。
熱烈な大統領支持者は、まるで新興宗教のようになっていて、共和党が劣勢だと言うことを教祖の言うようにフェイクニュースだと信じている。これは、共和党にとって不利にしか働かない。しかたなく、共和党は「文化戦争」で移民問題を取り上げ、支持者の危機感をあおっているようだ。
https://toyokeizai.net/articles/-/239289

…こういう時、軍事的な問題が起こればと、共和党の候補者は祈っているかもしれない。

今の米政権は、二転三転する大統領の言動より、ペンス副大統領の発言に注目すべきだと分析するむきがあるそうだ。副大統領の発言内容が粛々と実行される傾向があるからだという。そのペンスが、国防総省に近いハドソン研究所で、「中国への冷戦宣言」とも捉えることができる演説をした。内容は真新しいものではないというが、厳しい中間選挙の状況を鑑み、今のうちに言うべきことは言っておこうということらしい。一方で、共和党支持者は安全保障問題への意識が高い。多くの空母がメンテナンス中で、安易に軍事行動を起こせる状況ではないので士気向上という意味合いもあるようだ。また、下院で負けた場合、国防費獲得が難しくなる故に、国防費の重要性を強調して、社会的認知を得ておこうという意図があるらしい。さらに、アメリカの最大の敵は中国であり、ロシアではないとすることでロシア疑惑への布石としているというわけだ。
https://toyokeizai.net/articles/-/242194

…小学5年男を囲む大人のマティス米国国防長官が、ここにきて辞任する可能性が高そうだ。中間選挙までに、何事も起こらないことを祈るのみである。

在馬インド人の視点を探る 3

https://www.beritadaily.com/mic-agm-to-discuss-ge-14-preparation/
朝7:00からタマンデサの病院に行ってきた。2週間前の血液検査の結果をもとに診察を受ける約束をインド人ドクターとしていたのだ。何故7:00かというと、EJU直前土曜日補習が10:30からあるためである。診察を受けて、薬を貰って、PBTで一仕事していたら突然停電になった。結局、その後の補習は中止になって、帰ってきた次第である。なんか不思議な気分である。(笑)

とはいえ、バスも含めて、待ち時間の間に『多民族国家マレーシアの国民統合-インド人の周辺化問題』をだいぶ読み進めることが出来た。さっそく第2章のインド人社会の結合課程について概略をエントリーしたい。

第1章で、マレーシアのインド人社会の成立を見てきた。大多数のタミル人を中心とした南インド系労働者と、少数ながら力を持つインド本国の国民会議に繋がる北インド系エリートが、マラヤに存在していたわけだが、WWⅡ後からマラヤ独立までは複雑な展開を見せる。1947年にインドは独立を果たす。ネル-が1946年にマラヤに来て、『インドに帰りたいのなら帰りなさい。残りたいなら残りなさい。必ず一方に決めなさい。残るのなら政府に従いなさい』とマラッカで述べたそうだ。やがて、MIC(マレーシア・インド人会議)は、国民議会からの自立を求められ、インド独立ではなくマラヤの独立へと向かうことになる。おりしも、周恩来と共に第三世界・非同盟主義の外交政策の流れの中にあったわけだ。とはいえ、政治的にインド系の人々が結集するには、様々な問題があった。言語(ヒンディー語?タミル語?)、宗教(ヒンドゥー教?イスラム教?)、階層、そして人口比…。さらにマレー系、中華系との関係…。

MICの歴代総裁の変化が面白い。初代はマラヤ出身のエリートで、反英のインド独立連盟の指導者の1人、ネルーと国民会議派の信奉者でキリスト教徒。第2代は、同じくネルーと国民会議派の信奉者で反英感情の強いシーク教徒。第3代はマレー系・中華系との協力体制を提唱したパンジャブ人のヒンドゥー教徒。第4代は、パンジャブ出身で、マレー系のUMNO、中華系のMCAとの連合加盟を推進したが、タミル人と対立、再選を阻止された。第5代はタミル・ヒンドゥー教徒。すなわち、多数派のタミル人の総裁である。若い頃ネルーの薫陶を受けた人物で、マレーシア独立後の内閣では、労働、郵政・通信、公共事業、保険大臣を歴任した。

この総裁の移り変わりが、およそのインド系の政治的変化を表している。国民会議派の影響下にありインド独立が中心課題だった時代から、マレーシア独立へ。マレー系、中華系と紆余曲折を経ながら連合し、北インド系からタミルなど南インド系へと、中心軸が移っていくわけだ。

この本の話を、ドクターにしていて、ドクターもタミル人であることを知った。私がそういうことを調べていることに、ドクターは満面の笑みを見せたのだった。

2018年10月19日金曜日

在馬インド人の視点を探る 2

https://www.oneindia.com/2013/0
3/14/up-assembly-discuss-
subhash-chandra-bose-disa
ppearance-1171736.html
昨日の書評の続きをエントリーしたい。マレーシアに於けるインド人社会がいかに形成されたか?それが『多民族国家マレーシアの国民統合-インド人の周辺化問題』第一章のテーマである。

20世紀初頭、当時のイギリスのプランテーションは、ガンビルと呼ばれる薬用植物、サトウキビ、コーヒー、紅茶の栽培(後に天然ゴム)から始まった。熱帯雨林を開拓し、プランテーション化する上で、1838年奴隷宣言廃止を謳ったイギリスとしては、アフリカ系移民以外を探す必要に迫られる。マレーの人々は住み慣れた農村や漁村で生業を持ち満足していた。しかも毎日決められたルーティーンワークには適していないと判断された。
そこで、低賃金、未熟練、そして管理しやすい労働者移民が求められた。まず白人労働者が不適任とされた。中国系は概して勤勉、熟練、応用能力の度合いが高く最良の労働力と見なされたが、経済的人間集団を形成しており、いずれイギリスの特権的地位を脅かす存在と畏れられていた故に、過度の移民流入を避けることになる。ジャワ人もマレー人の類似性から期待されたが、オランダ植民地からの移民故に高い賃金要求がなされコストがかかりすぎた。

こういう事情の中で、南インドの労働者が理想的な労働資源とされたわけだ。気候的類似性は適応を比較的容易にし、彼らは低水準の生活に適応し、イギリスの支配に慣れ、何より従順であった。南インド系のほとんどが、アウトカーストまたは低カーストに属し、小作農で単純なルーティーンワークに適していること、またセイロンからマラヤに移ってきた経営者も多く、セイロン時代に南インド系労働者を利用していた点も見逃せない。

したがって、マレーシアのインド系移民の祖先は、この頃の南インド系、すなわちタミルの人々が圧倒的に多い。彼らはインド政庁に援助された労働移民である。一方、自由意志で移民してきたのは、主に北インド系の人々である。パンジャブから来たシーク教徒をはじめ、ベンガル人やダジャラート人などの人々で、商業移民、専門職、事務職、さらに軍・警察など非労働移民が多かったようだ。

さて、その後インド系の人々にも、ナショナリズムの覚醒が起こる。マラヤのインド移民は祖国の影響下にあり、これを牽引したのは北インド系の国民会議派であった。特に、日本軍が侵入した頃は、チャンドラ・ボース(今日の画像参照)の影響が大きかったようだ。意外ではないが、ここでボース登場である。

2018年10月18日木曜日

在馬インド人の視点を探る

妻が日本から送ってくれた小包がPBTに届いた。さっそく、小包を開け、私が注文した本を手に取った。まずは、『多民族国家マレーシアの国民統合ーインド人の周辺化問題』(山田満著/大学教育出版・2000年発行)である。

まだ序章だけしか読んでいないのだが、なかなか面白い研究論文である。1国単位では、マレーシアが最もインド系移民の多い国家らしい。(2000年発行なので変化はあるかもしれないが…。)KLに住んでいると、6:3:1というマレー系、中華系・インド系の大まかな人口比率が、少しばかり違い、中国系とインド系がもっと多く感じるのだ。3:5:2くらいか。

私はインド人の知り合いも多い。650番のバス友であるナイスガイ。紳士であり、自分が腰が悪いのに平気で席を譲る。尊敬できる人だ。同じコンドに住むメイバンクに務める壮年。彼も又紳士である。PBTの清掃を一手に引き受けてくれている女性。彼女は実に働き者で、人柄も素晴らしい。その他にも挨拶を交わすインド系の人々は多い。

ところで、昨日帰宅途中のバスで、近くに立っていたインド人女性が突然倒れた。周囲の人々がすばやく反応した。優先席の女性に席を譲るよう訴える中国人のおばさん。倒れた彼女を2・3人の男性がかかえて、優先席に座らせた。すると、インド人男性が水を手に彼女の顔めがけて投げかけた。インド式の意識を回復するための行為であったようだが、私にとってはまさに異文化体験であった。周囲のインド系の人々も的確な行為だと認めているようだった。強烈な行為だったが、彼女は昏睡状態から抜け出した。

インド系の人々は実に面白い。コンドの裏手にヒンドゥー寺院というか祠があって、毎朝、チリンチリンと鐘が鳴る。モスクから流れるアザーンもいいが、チリンチリンもいい。さて、インド系の人々から見た国民国家マレーシア。楽しみである。

今朝6時くらいに帰宅した妻が作ってくれた晩ご飯は、チキン・カレーだった。(笑)

2018年10月17日水曜日

妻の来馬 10月

妻の飛行機は、奄美大島を通過していた
一時帰国していた妻が、明日早朝帰ってくる。今回は、日本を22時に出る深夜便だ。このところ、毎晩LINEの無料電話でやりとりしていたし、10日間ほどの帰国だったので、ずいぶんと短かった気がする。

なによりラッキーだったのは、食事である。夕飯については、いつもどおり米やおかずを冷凍していてくれたので助かったし、昼食は職員室で何人かの先生が頼んでいる弁当を毎日注文していた。Lさんという事務の方が、近くの中華レストランの経済飯を毎日注文して、PBTまで店の人が持ってきてくれるのだ。毎回RM7である。自分でチョイスはできないが、日替わりで変化するので飽きることはない。野菜は毎日、昼食時に摂取できたわけだ。いやあ、ありがたい。

ところで、タイトルの来馬というのは、意味は正しいがしっくりこない。こっちは、ずっとマレーシアなので、妻の帰国と書いた方がすっきりするのだが…。

PBTの話(68) オリジナル模試

http://yagibamu.seesaa.net/article/444642655.html
EJUまであとわずかである。過去3年間の過去問をやり、解説してきたが、ここにきて、オリジナル模試を3種類作成した。

まずは、だいたい時事問題にからんだ地理の問題から始まるので、出そうなところを精選してみた。W杯関連でロシア、ハイパーインフレのベネズエラ、イスラエルとイランをめぐる中東、さらにNAFTAのアメリカ・カナダ・メキシコである。これらにに関連した地理・歴史・政治・経済などの複合問題をつくってみた。特に、アメリカの歴代大統領を戦後とそれ以前にわけて整理し設問もしてみた。これが、今年のオリジナル第1作目の模試の概要。もちろん全38問の四択主体(EJU様式)である。

第2作目は、条約の整理。EJUには、条約二関する問題が出てくる。戦争に関わる条約、国連などの人権に関わる条約、平和に関わる条約、環境問題に関わる条約、日本に関わる条約、EUに関わる条約などを、受験生の立場で表にして整理してみた。さらに、冷戦期の東ヨーロッパの情勢、アメリカ以外の現代史を飾った政治家にも触れてみた。

EJUの難度は年によって違うが、これまで出題されなかった分野も毎回数問ある。多くは、消去法で対処できるが、”あてもん”(関西弁で、わからないので勘で当てようとする問題)になる可能性が高い。担当者としては、”あてもん”にならぬよう、これまでの学習に関連性を持たせながら拡げようと思う。アメリカ大統領や現代史を飾った人物、東欧現代史などはその類である。

第3作目は、戦後の日本経済史に絞った問題である。まずは復習の基本事項をまとめたプリントを学習してから、高度経済成長期以降の経済成長率のグラフをもとに設問してみた。実は、この経済史、経済の基礎が出来ていないと全くわからない。最後の最後に整理していくという戦略だ。EJU対策も3年目。まさに石の上にも3年である。

模試を解説しながら、再度・再々度の復習を行っている。まるで、漆塗り技法である。ここに新しい学習の拡大を入れつつ授業を進めている次第。ところで、今日は、第2作目の模試/東欧史で、社会主義国とソ連の関係性などを確認していたのだが、問題の簡易年表にあるプロレタリア文化大革命について教えて欲しいという声が出た。かなりの横道にそれるが、中華系の学生が多いので教養のためにと論じてみた。
紅と専という、社会主義路線と実務的な資本主義路線の振り子のようなカタチで中国現代史は進んでいく。その中での文化大革命の位置を示すわけだ。当然事前の準備はしていない。記憶だけを頼りに語るのだが、四人組(今日の画像参照)の名前などすらすら書けたりして、我ながらよく記憶しているなと、自分で自分を褒めたい気持ちになったのだった。(笑)彼らは、人名を中国語で読んでくれる。日本語で言ってもダメ、全く通じない。この辺が日本では経験できない面白さなのである。

2018年10月16日火曜日

ウクライナ正教会の独立

https://life.bodo.ua/interesnye-mesta/turisticheskie-mesta/3364-vladimirskij-sobor-kiev
先日、イスタンブールの総主教庁が、主教会議(シノド)を開き、ロシア正教のウクライナ正教会への管轄権を認めないとする決定を行った。正教会(オーソドックス)は、ローマカトリックと異なり、民族ごとの独立性が高いと私は学んできた。したがって、ウクライナ正教がロシア正教の元にあったこと自体が驚きなのだが、ソ連時代の国家的な統制が生きていたのか、と思う。ロシア正教は、正教会の盟主だという自負が強いだけに、今日、総主教庁との断絶を宣言した模様。

よく調べてみると、ウクライナ正教会には、キエフ総主教庁と、モスクワ総主教庁とに別れている。前者が、今回話題となっている正教会組織(規模はモスクワ総主教庁より大きく、国内最大)で、以前はモスクワ総主教庁が合法性を認められていたという。

また、ウクライナ西部は、佐藤優氏の指摘もあるように、カトリック教会(帰一教会/東方典礼カトリック教会)があり、オレンジ革命などでは反ロシア勢力となっていた。このあたり、かなり複雑で、私はまだまだ勉強が足りないところだ。

非常に単純な見方をすれば、ウクライナの情勢について、ロシア正教以外の東方正教会は、ウクライナの味方についたということであろう。ウクライナのカトリックも反ロシアなわけで、ウクライナ西部と、ロシアの反目はさらに厳しくなるだろうとだけはいえる。

この問題は、もう少し事情が判明してからまた考えたいと思う。

2018年10月14日日曜日

書評 帰国子女・怪傑ハリマオ考

またまた日本人会の無人古本コーナーで手に入れた文庫本の書評をエントリーしたい。「マレーの虎 ハリマオ伝説」(中野不二雄著/文春文庫)である。
昔、『怪傑ハリマオ』という『月光仮面』のような番組があった。調べると1960年というから、私は2・3才。当然、我が家にはテレビが無かったし、見た記憶などない。なつかしの子ども向け番組の特集で見たくらいだ。
ただ、ビッグコミックに連載されていた『総務部総務課山口六平太』の主人公・六平太がカラオケでは、必ず『怪傑ハリマオ』を歌うのである。それで、私にはなじみがあるという複雑な回路で『怪傑ハリマオ』と繋がっている。

この『怪傑ハリマオ』は、一応マレーシアが舞台のような感じである。ハリマオはマレーシア語で虎の意味(ちなみにマレーシアのサッカー代表は”ハリマオ”である。)である。この番組や映画にもなった谷豊という人物について書かれたノンフィクションが、今回の文庫本である。

この谷豊氏は、父のマレーへの移民によって、現在で言う帰国子女的な状況下に置かれる。父は、小学校段階で日本に帰国させる。日本語がわからないのでずいぶん辛い目にあうことになる。戦前の話故に、徴兵検査も受ける。しかし、身長が足りないと言うことで丙種合格となり、日本男子としての面目を失うのである。そんな中、マレーでは、五四運動の影響を受けた中華系の日本人襲撃を受け、妹が惨殺される事件が起こる。この犯人は、当時の英国警察によって処分を免れたようである。彼は密かにマレーに帰り、これに抗議するために盗みを働き、英国警察に妹の事件の不合理を強く訴える。だが、どうにも動かなかったようだ。やがて、彼は、ムスリムとなり、マレーの人々に人望の厚い義賊となる。中華系の貴金属店を遅い、金品をマレーの人々に分け与えていたのだ。人を傷つけない盗賊団の頭領”ハリマオ”として、かなりの賞金首となったのである。

やがて、戦争の気配が強まると、彼を利用しようとする陸軍(中野学校出身者が中心で、この辺も興味深い)の動きが強まる。やがて彼は、マレー侵攻作戦・最前線のさらにその先で、マレーの盗賊団を率いて工作活動を行うことになる。彼が依頼を受ける際に出した条件は、ただひとつ。写真を撮り、日本の家族に送ってもらうことだけだった。
工作といっても、実際のところは、橋の爆破を一件だけ防げたというくらいらしい。他の工作は全て間に合わず失敗に終わっている。マレーの熱帯雨林の獣道を必死に駆け抜けたわりに、日本軍の進軍と英軍のシンガポールへの敗走が早かったためだが、この奮戦の中で重度のマラリアに罹患する。シンガポールの陸軍病院で死去する前に、軍属に任命される。彼はこれに無量の喜びを示すが、臨終に際しては、日本との縁を絶ち、ムハンマド・アリー・ビン・アブドーラーとして仲間の手によって埋葬される。
TVのヒーロー 怪傑ハリマオ http://nezu621.blog7.fc2.com/blog-entry-731.html
…著者は物故者の多い中、日本各地の関係者の人々をインタビューしながら、なんとか谷豊氏の生涯を推測し、納得できる物語を構築していく。そこには、徴兵検査で日本人になりえなかったという思い、作戦に協力して日本人になりえたが、結局マレー人として死んだ青年の悲哀がある。当時、新聞で報道されて大きな話題になった国策上のハリマオでもはなく、TVのヒーローとなった怪傑ハリマオとも全く違う、『遙か昔の帰国子女の物語』なのである。この本は、実に読み応えがあった。特に、シンガポールで、彼が治療を受けた病院や墓を探す箇所は引き込まれていく。マレーシアにあって、その風土を経験し理解しうるが故かもしれない。数奇な生涯を送ったマレーシア移民の谷豊氏に合掌…。

阪神 矢野新監督に期待

私は、大阪人でありながら、ちゃんとした阪神タイガースのファンではない。(アンチ巨人で、消去法的に阪神が勝てば嬉しいくらいのスタンスだ。)だから、今シーズン最下位に沈んだことを、マレーシアにある私は先日知って、ふーんと感じるくらいであった。鉄人・金本監督も嫌いではないが、毎日WEBで野球の結果を調べ、あえて応援するほどの状況にはなかった。

ところが今日、新監督に矢野が就任するという報道が流れた。矢野となれば話は変わる。応援しなくてはならないのだ。なぜなら、矢野は、大阪市立の高校の卒業生である。私も大阪市立の高校の卒業生(と同時に35年間も大阪市立の高校の教員であった)であるからだ。

おそらく、大阪府立高校に、そういうアイデンティティはないだろうと思う。だが、大阪市立の高校は、長居競技場で市立大会という運動部の祭典があって、全市立の高校(20校ほどある。)が年に一度集うようになっていた長い歴史がある。私が在校生だった頃から、教員となり生活指導部長をしていた頃まで、ずっと続いていた。(今はもう無くなったが…。)年1回とはいえ、意外にそういう市立高校出身者の共通のアイデンティティは存続している。NYで会った都島工業高校の卒業生にも、教え子の仲人をした時、東商業高校の卒業生だった新婦にも、普通以上の親近感が生まれるのだ。そう、大阪市立桜宮高校出身の矢野に、肩入れするちゃんとした理由があるのである。(笑)

大阪市立の高校で、甲子園に出場したことがあるのは、私の知る限り桜宮高校だけである。矢野はその前の世代であるが、同じ市立から出場と言うことで私も喜んだことを覚えている。たしか、野球部のメンバーがスキーの修学旅行中に選抜出場が決まったはずだ。雪上で、帽子を投げて喜んでいたのを鮮明に覚えている。まして、桜宮高校は、先年の事件もあったので、卒業生が大阪を代表する阪神タイガースの監督になったことは、大いに慶事。ちょっと名誉挽回というところか。

現役当時から、キャッチャーの矢野は好きだった。当時の阪神のピッチャーもよかったし、監督(野村から星野)もよかった。矢野には、いいイメージしかない。いろいろ調べても、あまり悪口は書かれていない。人柄の問題だろう。とはいえ、勝負の世界は結果が全て。特に阪神ファンは怖ろしい。苦労するだろうが、矢野新監督には是非とも頑張って貰いたい。東京オリンピックの関係で、東ばかりにスポットが当たっているが、大阪のパワーを見せて欲しいところだ。矢野新監督、応援するぞ。

2018年10月13日土曜日

マレーシア日系企業アンケート

JETRO事務所のあるビル https://www.jetro.go.jp/jetro/overseas/my_kualalumpur/
フリーペーパーの南国新聞に、マレーシアの日系企業のアンケートと上半期の景気動向調査報告が載っていた。マレーシア日本人商工会議所(JACTIM)とJETROの共同作成(本年1月24日~3月31日現在/184社)で、なかなか面白いので、先日、F40 Aの授業時に紹介した。以下、主旨をエントリーしておこうと思う。

1.在マレーシア日系企業が投資先として魅力を感じる点
 労働者・国民の英語力(73.4%)、親日的(55.4%)、少ない自然災害(52.7%)その他の高評価は、安全・治安、インフラ、生活環境。
2.改善を期待する点
 公共交通機関(63.6%)、道路(40.2%)、公衆衛生(39.1%)
 一部の地域では通信状況が悪いらしく、通信・インターネット(37.5%)
3.労働政策・雇用環境に関して抱える課題
 賃金の上昇(69.0%)、従業員の定着率(54.6%)、品質管理の難しさ(44.0%)
4.外国人労働者(FW)政策の問題点
 外国人労働者の手続きの簡素化・効率化(49.5%)
 製造業では、FWが全従業員の15%(中央値)だという。なお、製造業のうち36.5%がFWの雇用に困難があり、その対策として、多くの「機械化・自動化」を挙げた。
 しかし企業のうち、39.3%がこの機械化・自動化にあたって困難に直面していると回答した。まだ機械化・自動化を行っていない企業の51.9%は、そうするべきだが、事実上困難と回答。その主な理由は、技術的ノウハウ・人材不足(57.4%)であるようだ。
5.貿易・投資上の問題
 為替管理が38.6%。前回より16.4%減少している。2016年の中銀による為替管理規制の変更(輸出収益の75%は、リンギに両替すること)が影響しているようだと分析している。次いで、「労務」(34.2%)、サービス業への規制が残る外貨規制(32.1%)。
6.今後の事業方針について
 拡大(36.8%:前回より5.5%上昇)、その理由は安定的な経済成長、市場拡大が見込めるとの声が多かった。現状維持(61.5%)、縮小(1.6%)。この縮小の理由は、前述のように、労務費の増大による競争力の低下であるようだ。

…今年のF40Aは、経営や経済に進む学生は多くないのだが、日本企業が見たマレーシアの姿が、ここにある。クイズ形式にして、ちょっと討論もしてみた。マレーシアとはどんな国なのかという面接の質問には大いに役立つと思う。(ちなみに、貿易上のリンギ決済や、ここにはないがバスケット制の変動相場制をとっていることなども、ちゃんと教えている。意外にF40 Aの学生の経済への理解度レベルは高い。)

…彼らが、日本で何を学び、何を持って帰って来るべきかというヒントが隠されているわけで、年明けのマレー系の国費生の理系の授業でもこの内容を教材として使おうと思う。ただ、F40Aのように、基礎的な経済分野の知識がないので、さてどう説明したものか、悩むところである。(すでに日本に留学しているF36・38の卒業生も是非参考にして欲しいと思う。)

2018年10月11日木曜日

「アラブの格言」を読む。

また日本人会で手に入れた古本の書評である。曾野綾子氏の「アラブの格言」(新潮新書)。最初にアラブの「IBM」の話が出てくる。Iは、インシャアラー、Bはブクフ、Mはマレン。ビジネスにおいて、Iは「神がのぞみたまうなら」神は全能だが人間はそうではない、人間の希望することは神の助力があれば叶うというわけだ。Bは、「明日」の意味である。この明日、人間の誠意は成否の要素の半分しかないので、(ビジネスは)明日と行ってもやれるかどうか、半分は神の意志にかかっている。Mは、理のないこと、「過ぎたことは仕方がない」という意味になる。(ビジネスの失敗時に出てくる。)アラブの論理は、神が介入しているので柔軟に見えながらも鞏固(きょうこ)だと著者は言う。

私は、曾野綾子氏の関わっている国際協力関係の著書も何冊か読んだけれど、スタンスが違うと感じることが多い。まあ、カトリック的というか、保守性が強いというか…。なのに、この本を手に入れたのは、来年度のことを考えてのイスラム理解の一環である。この本は、アラブの民族色が強く、同じイスラムと行ってもマレーシアの状況とはかなり異なるのであまり参考になったとは言い難い。とはいえ、少し面白い記述があったので、エントリーしておこうと思う。

クウェートに著者が滞在中の喜捨の話である。イスラムの祭りの時、貧しい人々が喜捨を求めて歩くという日であったらしい。著者がいるオフィスに婦人が喜捨を求めて来た。そこの社長は心付けを渡した。著者が、その額を聞いたところ、50円くらいであった。その後、もう一人婦人が来た。今度は500円。その違いは、彼女たちが身につけていた腕輪の数だと著者は気づいた。ベドウィンは、お金を金に替えて常に身につけているからだ。より貧しい最初の婦人と比較的豊かだと思える後の婦人への喜捨の差について、反対ではないかと質問したら、社長は「人間には皆分相応がある。富んだ暮らしをしているものにはたくさん与える必要がある。」これがアラブの知恵。「過度の寛大は愚かさと同じ」だというわけだ。

…これには、なるほどと思った次第。日本人の発想とは全く違うが、そこには民族の深い知恵があると思う。異文化理解はやはり面白い。

2018年10月10日水曜日

PBTの話(67) ドイツのコーヒー

https://ameblo.jp/vimbi/
entry-11330291004.html
EJUの過去問の解答をしていて、驚いた問題があった。ドイツがコーヒー豆輸出額で世界有数であったことだ。同時に輸入額も多い。どうも私にはドイツとコーヒー豆が結びつかないのだが…。どうやらハンブルグ港にコーヒー豆が集まるようだ。ドイツ国内で焙煎されたものが、さらに各地に輸出されるのだという。

調べてみると、ドイツに運ばれてくるコーヒーは、ブラジル産が多いらしい。イギリスとオランダが最初は植民地プランテーションで市場を抑えていたのだが、やがてブラジルのコーヒー生産が、英欄植民地を凌駕し、ドイツがその販売ルートを得たという歴史があるそうだ。自由貿易港としての歴史をもつハンブルグがヘゲモニーを握り、さらにドイツの焙煎の技術革新が、国内のみならず、さらにヨーロッパ中に販路を広げたらしい。コーヒーハウスのドイツ版/カフェ・ゲゼルシャフトが生まれ、労働者階級にも広がっていく。ドイツの国内消費量は世界第7位だとか。
http://www.let.osaka-u.ac.jp/seiyousi/vol_11/pdf/JHP_11_2014_1-16.pdf

こういう新しい発見は実に楽しい。ナポレオンの大陸封鎖やビスマルクの保護貿易政策も、このドイツのコーヒーとは大きく関わっていたという歴史もあるようで、このEJUの問題は地理的分野・資料の読み解き問題なのだが、なかなか奥が深い。

2018年10月9日火曜日

ベネズエラのハイパーインフレ

https://mainichi.jp/articles/20180619/ddm/007/030/035000c
今日、EJUの時事問題の模擬問題をつくっていて、ベネズエラについて調べていた。IMFの世界経済見通し(WEO)で、2018年末で137万%、2019年には1000万%になるとの見方を示したそうだ。凄いな。まさにハイパーインフレである。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-10-09/PGB7946TTDS001

この原因を探っていくと、前大統領の「21世紀の社会主義」という、実態のないポピュリズムに行き着く。貧困層にばらまき政治をやっていたツケが今経済危機を起こしているのである。言うまでもなくベネズエラは世界でも有数の産油国である。マラカイボ湖に眠る原油が、レンティア国家をつくってきた。

レンティア国家は、天然資源の罠に嵌りやすい。莫大なレントは、無計画なばらまきと、デモクレイジーに消えてしまい、新たな設備投資や、レントを使った多角的な経済戦略(教育戦略やノルウェイやサウジのような国家的な投資機関設立、新たな産業育成など)もなく、悪いガバナンスの罠の見本となった感じだ。緻密な経済戦略を持たず、コトバだけの社会主義を標榜してもタンザニアのウジャマーのように無為に終わることは歴史が証明している。ベネズエラはまさに、その二の舞となったといえる。

今や、設備投資が行われなかったが故に、石油は減産スパイラルの坂を転がり落ちている。反米的外交政策をとっていた故(前大統領は、国連総会でも米大統領を悪魔と言い捨てた。)に、ロシア・中国に援助を求める可能性もあるが、計算高い両国に、失敗国家が助けを求めてもうまくいくとは限らない。まさに八方ふさがりの状況である。周辺国は、ベネズエラからの難民に危惧を抱いているという。

…悪いガバナンスの罠といえば、インドネシア・スラウェシ島の大地震被害でも、不可解な話が流れている。文化的・宗教的、あるいは自然環境など様々な理由があるだろうし、一概には言えないが、11日間経ったので捜索中止という不可解な指示が出ている。このところ、こういう理解不能な話が多い。うーん。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018100901051&g=int

2018年10月8日月曜日

中国が米国債を売り出したゾ

https://www.scmp.com/comment/insight-opinion/united-state
s/article/2164871/can-us-china-trade-war-rivalry-reverse-worst
経済戦争が続く米中だが、どうも中国が米国債を売り出しているようだ。と、いっても半年ぶりの低水準とはいえ、今なお1兆1710億ドルを保有している。中国は米国債の2割弱を保有している。(ちなみに保有高第2位は日本で1兆355億ドル)つまり、米国の財政を支えているのは、中国と日本である。

今のところ、中国は、細かな増減を繰り返しながら、米国債を減少させているが、これをかなりの量、市場に投げ打てばどうなるか?米国の長期金利は、上がらざるを得ない。米国の財政部門も、家計・起業の民間部門も債務返済負担が一気に苦しくなり、不良債権がまたまた増加し、景気は冷え込むだろう。下手をすれば世界的大恐慌にもなりうる。関税で勝てないなら、国債売却で対抗するという戦略は十分に成り立つ。

ただ、現在の世界経済はドル決済であるし、中国の金利も上昇する可能性が高い。(もちろん日本もEUもマレーシアもだが…)中国人民元の信用を支えている外貨準備高は消えてしまい、それは世界経済全体に波及する。諸刃の剣であるわけだ。
https://www.sankei.com/premium/news/181008/prm1810080002-n1.html

ただ、この米中の経済戦争においては、落としどころが難しい。北朝鮮のミサイルのように、国債を大量に市場に流すという最終兵器を中国はもっているという威嚇にはなる。おそらく、この国債売却は、それを誇示した工作だと私は思う。ただし、小学5年生男は、そういう知識は持ち合わせていないのではないか?(周囲の大人は当然わかっていると思うが…。)

先日、日本にまで貿易戦争を米国がしかけるとなれば、米国債を売るというポチの最終兵器があることについて言及した(9月7日付ブログ参照)が、中国も同様だということである。本気で仕掛けるなら、11月の中間選挙前を狙うのではないか。これで、孤立主義・保護貿易しか頭にない小学5年生男の弾劾の方向に米国が向かえば、自由貿易体制を護ったのは中国ということになる。そういう壮大な戦略の上で物事を考えるのが中国である。アメリカの失脚を買うために、多少の犠牲を払ってでも…習政権がそんなことを考えていてもおかしくはない。今日の記事にもあったが、アメリカの借金を背負わされ、イイようにされているのに憤った橋本龍太郎元首相が、国債売りの誘惑にかられたくらいだから…。

2018年10月7日日曜日

妻の一時帰国 10月

妻の一時帰国出発の日である。朝から空港に見送りに行ってきた。14:00 KLIA2発で今晩遅くに大阪の自宅に着く予定である。妻がいないのは、極めて困るのだが、通院のこともあるし仕方がない。

ひとつだけ利点があるとすれば、アマゾンで本を注文し、大阪の自宅に発送してもらえる事だ。前回の妻の一時帰国の際に、財布をタクシーに忘れ、クレジットカードを再発行している。(幸い全てもどってきたけれど…)改めて、アマゾンの設定を変更した。私はどうもこういうのが苦手だ。だいぶ時間がかかったが、なんとか設定完了。そのうえで、4冊注文した。本当は、京大の重田先生や大山先生の書かれたアフリカ開発経済学関係の本も欲しいのだが、1冊4000円を超えている。うーんと唸りながら断念した次第。今回は、特に、マレーシアの国民国家に関する本を注文した。

多民族国家マレーシアの国民統合ーインド人の周辺化問題
マレーシアの社会再編と種族問題ーブミプトラ政策20年の帰結
立ち上がれ日本(マハティール首相著作・新潮新書)
それと、物流は世界史をどう変えたのか(PHP新書)

妻の帰国ならびにこれらの本の到着を今から心待ちにしている次第。

2018年10月6日土曜日

PBTの話(66) エコチャンバー

https://www.nytimes.com/2011/05/29/technology/29stream.html
既に、私費生の今年の受験は始まっている。現在、すでに出願しているのがA君である。すぐにE君の出願も開始される。この二人はWEBで出願し、スカイプで面接という手順である。昨日は、E君の面接練習をA君にも手伝って貰ってやっていた。実は英語の面接なので、私単独ではできないからである。(A君は英語がかなり堪能である。)質問もA君に考えて貰った。A君はリーダーシップもあるので、こういう風に指導する側にたてて育てるのが、彼の面接練習にもなるからだ。

さて、そのA君の志望動機にも、出願前に目を通した。彼は、なかなか面白いことを書いていた。「エコチェンバー」現象こそが、世界を分離させているのではないかという内容だ。彼は、将来国際機関に入って貢献したいという。そのためには、多文化共生や異文化理解を進める必要があるが、SNSにおけるエコチェンバー現象、すなわち自分と同意見のものばかりを選択して、反対意見を黙殺する現象が問題だ、というわけだ。

今日、こんなエントリーをしたのは、東洋経済オンラインの記事「杉田水脈擁護のドクマが蔓延する深刻理由 常識の欠如に無自覚な人たちが増えている」(天野妙)を読んだからである。https://www.msn.com/ja-jp/news/national/

大衆社会における他者依存心理とも関わっているようで、エコチャンバーは、極めて重要な問題であると私も思う。

ところで今、日本では、海上自衛隊の旭日旗を批判した韓国に対する反発が強いようだ。私も韓国の「恨」や「反日教育」には、うんざりしているが、彼らもまた、完全にエコチェンバーしているんだろうなあと思っている。国際法や他者の意見を黙殺している。そこに対話は生まれないし、相互理解も生まれない。由々しき事態だが、今の段階では、海上自衛隊が不参加することは当然かと思う。ネトウヨさんも、リベラルさんも、他者の意見にちょっとばかし耳を傾けようではないか。

2018年10月5日金曜日

内閣人事局長の研究


第4次安倍内閣は、在庫一掃内閣などどと揶揄されている。我がクラスの政治家志望のJ君に、閣僚一覧の載った日経の朝刊をコピーしてあげた。彼はさっそく、念密にチェックをしていた。
今回の閣僚の顔ぶれには興味はないが、面白い記事を今日見つけた。新総務会長の加藤勝信前厚生労働相である。総務会長は、首相が改憲を行うに当たって、実に重要なポジションである。平時には自民党三役の中では最も地味であるが、改憲などと言うプロジェクトを進めるためには総務会が党の意見集約を行うからである。この加藤氏、厚生労働大臣の前は、内閣官房副長官で、初代内閣人事局長だった。

本来、この初代人事局長には、警察庁出身の杉田和博氏が就任するだろうと一部マスコミは誤報したらしい。私はこの誤報は大いに理解できる。官僚人事を司るのは、以前日本を動かしていた事務次官等会議の主催者、(事務方:官僚)の官房副長官であったからだ。面白いことに代々、今は無き内務省系の官僚がこのポストを占めてきた。財務省出身ながら議員である加藤氏の就任は、革命的人事である。政治主導のまさにターニングポイントである。首相が加藤氏をいかに買っているかを示している。(ちなみに調べてみると、加藤氏後、荻生田光一氏(政務)を挟んで、今回の人事では、杉田氏が就任している。法改正によって、内閣人事局長は、政務・事務両方の官房副長官が兼務することになっている。)

憲法改正をめぐって、関門となる重要なポストには、側近を配置していることは明らかだが、さてさてうまくいくだろうか?私は、まだまだ紆余曲折があると見ている。こういう話をまたJ君と討議しようかなと思っている。

2018年10月4日木曜日

ザンビアの中国にNOと言おう

https://www.zambianobserver.com/anti-china-protester-lukuku-out-of-jail/
我がマレーシアのマハティール首相が、前政権の中国との関係にストップをかけ、この波は世界に波及しているように見える。マハティール首相は、アジア通貨危機の際に、IMFの融資を頑として受け入れなかった愛国者である。欧米の仕組んだ空売りから波及した経済危機を、欧米の資金で賄うことを良しとしなかった。結局マレーシアは、自力で経済再建することに成功した。こういう、無私のプライドがマハティール氏にはある。マレーシアの人々は、このカリスマ指導者を十分に尊敬している。国内の雰囲気も、中国本土の資本への警戒感がある。おそらく、マレーシアの人々は、ポスト・マハティールになっても、決して中国の植民地化を許さないだろう。そういう雰囲気がKLに蔓延している。

パキスタンでも、一帯一路の目玉プロジェクトである鉄道建設について、予算削減を打ち出している。このまま進めば、中国への負債でパキスタンが事実上の経済支配を受ける畏れありと言っているわけだ。
https://jp.reuters.com/article/pakistan-silkroad-railway-idJPKCN1MD0RI

同様に、アフリカ・ザンビアでも中国にNOと言おうという野党のデモが、首都ルサカで行われた。このままでは、借金のカタに中国が作ったインフラを奪われ、ザンビアは中国のモノになってしまう。中国はヒトラーに等しい、というわけだ。
http://www.afpbb.com/articles/-/3191641?cx_part=top_focus&cx_position=5

中国のアフリカ進出は、チャイナ・ファーストである事は確かだ。何より現地の雇用を産まない。人口圧で多くの中国の人々がアフリカを目差す。これは、アフリカにとっては、「時限爆弾」であり、現地の人々と中国人が対立し、やがて暴力を引き寄せるという意見に、私も同感である。中国の進出は、善意による国際協力ではない。あくまで中国ファーストで、旨みを得るのは、悪いガバナンスのアフリカの権力者だけである。アフリカを愛する私としては、中国の動きを好意的に見ることは難しい。

…「アメリカ・ファースト」も、「チャイナ・ファースト」も結局は、持続可能な世界を作る上では、決して有為ではないと私は思う。世界の政治指導者は、今一度国連のSDGsを読み直して欲しいと私などは思うのだ。ここには、世界の「正義」の道しるべが書かれている。日本も、教育勅語よりSDGsを子ども達に読ませるべきだと私は主張したい。これから育成すべき日本人は、持続可能な開発を推進する「地球市民たる日本人」である。

2018年10月3日水曜日

都市伝説ではない太陽の話

https://ktwop.com/2010/12/29/solar-cycle-24-is-unusually-quiet-but-not-unprecedented/
我が家では、TVをほとんど見ない。何回か書いているが、英語のNHKくらいしか見ることができないのが最大の原因である。そのかわりに、妻はYouTubeを、タブレットで見ている。妻によると受動的なTVに対し、主体的に選択が可能だから良いとのこと。…なるほど。私がPCに向かっている横で見ているので音声は聞こえる。

妻が見ているYouTubeには、都市伝説的なモノもあり、ピラミッドの謎、古代文明の謎、地底人や宇宙人の話、地震兵器の話、JAL墜落事故の話、ユダヤ人と日本人の関係性などなど。物理学や天文学的な話もあって、月の謎や太陽の変化などというものもある。私の中では、情報リテラシーのシステムが働くので、あまり意識していないのだが…。

今朝、太陽の変化の話が@niftyのニュースに載っていた。太陽の黒点が153日間も姿を消し、このままいくと小氷河期が来る可能性は97%だという。
https://news.nifty.com/article/item/neta/12262-098217/

アメリカの太陽観測所が閉鎖されたというYouTubeの話を妻から聞いていたし、うーんと唸るしかない。私は、こういう話は全くの門外漢。とはいえ、大いに気になる話だ。

2018年10月2日火曜日

PBTの話(65) ONE PERCE

このところの授業では、EJUの過去問の解説をしている。EJUには、突如として「覇権主義」などという難解なコトバが出てくる。うーん、「覇権」の説明に、突如として「覇気」という例語が浮かんだ。マンガ・ワンピースの「覇気」である。

PBTで日本語を学ぼうとする学生の多くは、日本のアニメやマンガのオタクが多い。日本に留学するきっかけの最大要因は、この日本の誇るサブカルチャーである。当然ながら、有名なマンガの話は、かなり通じる。宮崎アニメや、ドラゴンボール、ジョジョの奇妙な冒険、そしてワンピース。「ほら、レイリーの覇気…」というと、大受けだった。みんな一気に納得する。「別に5万人を一気に気絶させるわけではないけれど…。」過去問の解説は、あまり新しい事を教えるわけではないので、疲れる授業なのだが、大いに盛り上がったりするのだった。

社会科の教師には、こういうサブカルチャーの知識も必要ではないかと思っている。ちなみに、ワンピースは私はアニメでしか知らない。ちょうど、麦わらの仲間がちりちりバラバラにされた頃から見だして、ルフィーが女々島に行き、インペルダウンに向かい、頂上戦争、魚人島、バンクハザード島、そしてドレスローザで、ドフラミンゴをやっつけるあたりまで見た。その後マレーシアに来たので見ていないのだが…。このワンピースは、その世界観が複雑で、実に難解だ。七武海の意味がわかるまでだいぶかかった。(笑)まあ、授業でワンピースの登場人物を例を引くくらいは理解したつもりだ。

機会があったら、頂上戦争の時、海軍の大将であった3人が、実在の俳優をモデルにしていること(赤犬:菅原文太 黄猿:田中邦衛 青雉:松田優作)を教えてあげようかなとも思っている。また、何故犬と猿と雉なのかも…。案外知らないのではないかと思う。

2018年10月1日月曜日

マハティール氏の国連演説 考

https://www.nikkei.com
/article/DGXMZO359225
7029092018000000/
マハティール首相の国連一般討論演説は、なかなか意味深いものだったと思う。
15年ぶりに演説に臨んだマハティール氏は「15年前から世界は良い方向に変わっていない」「ナショナリズムやポピュリズム、国際協調からの離脱が世界で広がっている」「70年前に勝利した5ヶ国が要求を押しつける権利はもうない」と安保理改革まで踏み込んで訴えた。中国の債務や北朝鮮やイランへの制裁の問題、イスラエルの不法行為についても持論を述べた。

演説後の記者会見では、「アジアで台頭した中国や日本、韓国は今互いに協力できていない」と苦言を呈したと報道されている。実に要所を締めた発言だと私は思う。
http://news.livedoor.com/article/detail/15377472/

8月の我がクラスの学生が参加した九州でのリーダー塾で、マレーシアも日本の平和憲法に倣って改憲する意志があることを表明。これを受けて、同じ演説後の記者会見で「(日本の改憲は)平和を促すのではなく、問題の帰結のために戦争を使う他国に加わることになる」「(9条は)日本が戦争することを許さない憲法」とも。これも、現政権の積極的平和外交という安易なレトリックを打ち破るアジアからの重要な発言だ。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201809/CK2018093002000116.html

…どこかのポピュリストの幼稚な演説とは次元が違う。ある意味マレーシアの首相だから言える本音(アメリカのポチの日本国首相には決して言えない)でもあるが、安保理の拒否権の否定に賛同する国は多いのではないかと思う。国連の一般討論演説とはこういうものだと示した、高齢の天才政治家が示した好例であろうと思うのだが…。