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2026年6月14日日曜日

地図で読むアメリカ

月1の病院通いの昨日、早めに診察が終わったので、枚方市駅近くの本屋に寄った。新しい新書を物色するためである。住道駅の本屋が閉店してしまい、新書が多い本屋がまたひとつ減ってしまった故でもある。

で、選んだのが『地図で読むアメリカ』(J・M・Vardaman著/森本豊富訳/朝日新書)である。昨年地理総合の2学期末の範囲で、11のアメリカというフレーズで地誌的な授業をしたのであるが、この時は、コリン・ウッダード氏の論であった。本書は、10地域に分けている。いずれにせよ、教材研究の一環として読んでおきたいと思ったのだった。11のアメリカの区分より、大まかで内容次第でこちらに乗り換える可能性が高い。

アメリカという国は、まさに合衆国であって、ステレオタイプで語り尽くせない。ボチボチ読みながらエントリーしていこうと思う。

蛇足だが、学院のボストニアンであるG先生と先日、もしアメリカに移住するなら、私は、1:カリフォルニア州のサンディエゴ、2:ノースカロライナ州の海岸平野部、3:G先生の故郷・ボストンだと話した。理由はいろいろあるのだが、気候や地域の人柄などが大きい。

2026年5月11日月曜日

EUの内実 若者の移住問題

https://x.com/OECDTokyo/status/1739798280962224411
ドジャーズは、ブレーブスに全くいいところなしで連敗してしまった。あーあ。エントリーは中止。今日は、YouTubeで見た興味深い内容についてのエントリーにしたい。

EUの国の中で、若者の移住が進み、国家の危機を迎えている国が多いようだ。地理総合の教材研究として、その内容を残しておきたい。(上記グラフはOECDの受け入れ先のグラフ/EU内の移民の多い国の資料は見つからなかった。)https://www.youtube.com/watch?v=FCXr4b4YZXo

ルーマニアは、EU最大の人口流出国と言われている。首都や東欧のシリコンバレーと呼ばれるクルージュなどは活気に満ちているが、内陸の地方では、見捨てられた村が多い。イタリア・ドイツ・スペインなどへ、若者がより多くの賃金を求めて祖国を捨てているからである。国内とこれらの国の賃金格差は絶望的であるとのこと。

リトアニアもこの40年で人口の1/4を失った。イギリスやドイツ、ノルウェー、アイルランドなどに流出した。

クロアチアは観光が盛んな沿岸部はともかく、内陸部は人口減少が進んでいる。ドイツ、オーストリア、アイルランドに向かっている。

ギリシャは、2008年の経済危機以来、若者の人口流出が起こり、島々では極端な高齢化・少子化が進んでいる。親がドイツやオランダに行き、祖父母が孫の面倒を見るというルーマニア同様の現実がある。

ラトビアもまた移民と過疎の波が、EU加盟後に移動の自由を得た後に起こった。イギリス、ドイツ、アイルランドへ消えた。人口の約1/4がロシア系住民であるというのも社会的分断を呼んでおり若者の背中を押している。

エストニアは、IT先進国として有名であるが、インフレの中、給料が上がらず、フィンランドやスウェーデン、ドイツに向かっている。地方は過疎化が深刻である。ラトビア同様にロシア人との問題もある。

ポルトガルも、賃金の低さから移住が進んでいる。リスボンなどでは海外投資のせいで住宅価格が上がり、ローカル(現地の人々)は追い出されてしまった。イギリス、ドイツ、フランス、オランダ、ルクセンブルグなどに知的エリートが移り住んでいる。

ポーランドも過去数十年にわたって経済成長をした国だが、イギリス、ドイツ、オランダなどに若者が移っている。物価上昇とそれにおいつかない給料、官僚主義的な政治など閉塞感に満ちている。

ブルカリアは、最も人口が減少している国の1つである。経済成長はしているものの、給与はEU平均を大きく下回っている。ドイツ、オーストリア、あるいはイギリスへの移住が多い。官僚主義と汚職も大きな問題である。

若者が世代ごと移住するということは、大変なことである。労働力が減り、イノベーションが生まれず、活力が失われていく。少子化も進む。地方は疲弊し、急速な高齢化、学校も病院も閉鎖されていく。

…EUの「移動の自由」は、グローバリゼーションの中で、このような結果を生んでいるわけだが、必然的なような気もする。EUに後から参加した東欧諸国は、安価な労働力のサプライチェーンとして投資も進んだのだろうが、若者にはそれが足かせ(安価な労働力に我慢できない)となり、移住が進んだように見える。上記の各国の移民先が気になるところ。GDPからドイツが多いのは当然だが、ルーマニア→イタリア、エストニア→フィンランドなど、それぞれの特徴も出ているように思う。また地方の過疎の農業地帯には、これから先進国の農業ビジネス会社が侵略していくような気がする。それはさておき、これらの国々の存続自体が危ぶまれる。民族や言語の違いを払拭して、統合から合併・併合へと進むのだろうか。

2026年2月25日水曜日

ロシア解体新書

https://www.youtube.com/
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来年度の地理の授業に役立ちそうなYouTube第二弾。「ロシア解体新書」。

二学期の後半に、アメリカを中心軸に、いくつかの国の国是というか理想についてまとめたのだが、ロシアについても語った。ロシアは、ヨーロッパからは田舎と蔑まれた、歴史的地政学的に半分アジアの国である。しかもナポレオン(祖国戦争)とナチスドイツ(大祖国戦争)に、二度も蹂躙されているというトラウマがある。一時期、ロシア革命による世界初の社会主義国家・ソ連となり、一部のヨーロッパ人から尊敬を受けたが、ソ連崩壊後は、またトラウマに支配されることになる。(このマルクス・レーニン主義を教えるのが、倫理や政経ではまだしも、地理では時間をとるのが難しい。)

このYouTubeはその辺をうまくまとめてくれている。大学生向けとされているが、高校世界史を履修してれば問題はないと思う。おすすめは、ロシアが侵略をやめれない理由を解説した以下のURLのものである。

https://www.youtube.com/watch?v=Nvdl6CPRUrw

2026年2月24日火曜日

熱帯の経済が発達しない理由

https://www.youtube.com/watch?v=XQ-ITuArBLA
地理の教材でも使えそうなYouTubeを発見した。https://www.youtube.com/watch?v=XQ-ITuArBLA

経済が発展しているとは、国民1人あたりの付加価値が多いことを意味する。この付加価値を多く生み出すためには重化学工業が発達する必要がある。この重化学工業は、資本集約的産業という特徴がある。つまり、設備投資に膨大な金が必要である。これは「蓄財」への取り組みこそが重要であることを意味する。このYouTubeでは、蓄財を不道徳とするカトリックと、不道徳ではないとするプロテスタントの相違でヨーロッパの南北格差を説明している。さらに、蓄財の背景として、気候の相違からも語られる。Cs(地中海性気候)の南欧では、温暖故に食料を貯めるという行為は愚か(=腐らせる)な行為であり、北欧はその逆になる。高温多湿な熱帯(A)は、ヨーロッパの例から導かれる(食料の)備蓄の文化の無さが顕著であり、蓄財への意識も同様である。

農業の生産性の問題も大きい。生産性の高い国ではと蓄財が可能だが、低いと不可能である。熱帯の地質は、微生物の働きが活発すぎて、落ち葉や遺骸が分解され尽くしてしまい、土壌に還らないという特徴がある。Af(熱帯雨林気候)やAm(熱帯モンスーン気候)では、多大な降水量が養分を洗い流してしまう。樹木が多いことと土壌が豊かであることは関係しない。熱帯の樹木は根から酸を放出して、土や岩を溶かし痩せた土地から養分を得ることができる能力がある。これにより、土壌が酸性化し、作物にとっては成長が鈍る。伝統的な焼畑農業で生まれる灰や炭はアルカリ性で中和させる事が可能だが、どうしても生産性は低くなる。よって農業従事者の蓄財は厳しくなるのである。ところが、日本では渋沢栄一が、農業従事者に蓄財を勧め、銀行に預金を集めて、資本を形成したという過去があり、このことが日本の経済的成功の重要な一因だと説いている。…なるほど。

最初に、「教材に使えそうな」と書いたのだけれど、途中、もろにカトリックの悪口が語られていて、カトリックの学院で、直接このYouTubeを見せることは諦めた次第。(笑)

2026年1月21日水曜日

外国語学部専攻語アドバイス

https://www.google.com/search?q=
共通テストが終わり、もうすぐバンザイ・システム(予備校による全国的な資料を元に合格率を出すシステム:昔A評価だとバンザイのマークが付いたので業界ではこの名がある。)が出てくる。昨日、特進コースの生徒から、某国立大学の外国語学部の専攻語選択について、アドバイスを求められた。

中国語・デンマーク語・アラビア語・モンゴル語・フランス語・トルコ語・フィリピン語・スペイン語・ロシア語・ベトナム語・ドイツ語・ヒンディー語・ウルドゥー語・アラビア語・朝鮮語・英語・ペルシャ語・インドネシア語・イタリア語・スワヒリ語・タイ語・ポルトガル語・ハンガリー語・ビルマ語・スウェーデン語の中から1つ選ぶことになる。昔M高校時代にもよくアドバイスをした。この言語に全て志望順位を付けなければならないらしい。

私のアドバイスのポイントは、1:成績結果次第であること。ヨーロッパ言語は比較的上位の成績が必要で人気が高い。アジア・アフリカの言語は人気が低く、比較的下位になっている。ただ、マイナーな言語は日本語対応の辞書がない場合が多く、英語版辞書で学ぶことになるので、英語の学力がさらに身につく。2:各言語の文字が、アルファベット(ダイアクリティカルマークのあるものも含む)か、それ以外か。学ぶうえで文字の違いは大きい。3:文法的にSVOCか、日本語同様、Vが最後に来るのか。これも大きい。

成績のことはとりあえず無視して、上記の言語をアドバイス・ポイントの2・3で4分類してみることを勧めた。アルファベットにこだわるか、SVOにこだわるかである。一応自分でも分類してみた。

アルファベット&SVO:デンマーク語・フランス語・フィリピン(タガログ)語・スペイン語・ベトナム語・ドイツ語・英語・インドネシア語・イタリア語・スワヒリ語・ポルトガル語・スウェーデン語

アルファベット&非SVO:トルコ語・ハンガリー(マジャール)語

非アルファベット&SVO:ロシア語・タイ語・中国語(中国語の文字は簡体字化している)・アラビア語(基本はVSOだが、SVOも非常によくつかわれるらしいので、ここに分類)

非アルファベット&非SVOC:ヒンディー語・ウルドゥー語・朝鮮語・ペルシア語・ビルマ語

アジア・アフリカ諸国の言語には、旧宗主国の語彙が混じってくることも伝えておいた。結局、本人が何に重点を置くかが大切だと思う。この分類以外にも、その言語を使う国の魅力なども加味されるだろうと思う。ちなみに私のおすすめは、英語やマレーシア語同様、アルファベットでダイアクリティカルマークがない、ケニア・ウガンダ・タンザニアで使われる”スワヒリ語”である。(笑)

2026年1月19日月曜日

共通テスト2026 地理

共通試験の考察、最後は地理である。正直なところ、あまりおもしろい問題はなかったのだが、あえて挙げるとすれば、第5問の問2。当該国における外国人居住者と当該国における国外居住者をグラフ化(画像参照)した問題。当該国は、UAE・インドネシア・フランスの3カ国である。アはUAE、イはフランス、ウはインドネシアで、決して難問ではないが、世界的に見た人口移動の状況は重要だと私は思っている。
もう一つ。第6問の国際河川と気候区の関連付けの問題(画像参照)。各ケッペンの気候区は上流から河口にかけて明確にはされていない。ここがミソである。ドナウ川は上流から河口までCfb。次にイの河口とウの上流が同じというのもミソ。これはAwである。これだけで正解が導かれるわけだ。

本年は、私に関係の深い3科目の考察、というより面白い問題の抽出になってしまった。共通テストは、毎年毎年、資料を使った思考問題に変換されている。国公立大学を目指す優秀な高校生に求められているのは、まさに短時間で資料を読み解く力と思考力であることが明確になってきた。現場としては、この傾向をますます踏まえなくてはならないわけで…。

2026年1月13日火曜日

ポスターセッション無事発表

このところ、硬い話題ばかりだったので、久しぶりに地理総合の授業の話をエントリーしたい。本日、ポスターセッションの最初の発表をやった。グループ分け・国選び・企画段階で1時間、3クラスのグループ数が判明してから模造紙購入をして年明けに配布、制作開始で1時間。そして次の時間に発表本番という、かなりタイトなスケジュールとなった。これは、オーストラリアからの短期留学生(昨年12月7日付ブログ参照)にも発表してもらいたいという理由によるものである。

果たして、それぞれ完成し発表できるか不安であったのだが、全グループはスタンバイできていて安心した。聞くと土曜日の放課後に作業をしていたグループ、B4の白紙に各自の担当部分を自宅で完成させて張り合わせたグループなど様々に工夫してくれたようだ。

特に印象に残ったのは、いつも熱心に授業を受けてくれたグループの「ブルキナファソ」の発表である。何より、最後にブルキナファソの問題点を解説してくれた点である。最貧国のひつであるブルキナファソの教育や保健医療の問題に踏み込んでくれていた。授業の最後に、少し私の体験的な保健医療や教育の問題(街角で足の立たない人を見たこと、JICAの看護師さんが言っていた妊婦が病院にいくと悪霊がつくと避けている現状や奈良教育大学の先生が数学の授業を教育関係者にしていたこと、教育省のエリートと対話させてもらったことなど)を付け加えておいた。良い授業になった。

特に、敬意を払ってオーストラリアを選んで発表した留学生の参加するグループの写真を中心に撮り、授業終了直後に私のカメラ→PC/USB経由でホームステイしている生徒のPCに移すことが出来た。後はどうにかなるだろう。(笑)日本での思い出の一つになればと思う。

2025年12月29日月曜日

今年この1冊 2025

https://x.com/Osaka_Shin_Ai/status/2002961293293064605
年末恒例の「今年この1冊」のエントリーである。学院図書館(画像参照)や市立図書館で借りた本は、今年という修飾語に合わないので、佐藤優氏の『哲学入門』『ゼロからわかるキリスト教』などは、残念ながらまず省いた。というわけで、候補に残ったのは、次の5冊である。新書ばかりで、しかも全て違う出版社になった。(笑)

神なき時代の終末論(佐伯啓思著/PHP新書)
経済で読み解く世界史(宇山卓栄著/扶桑社新書)
伝授!哲学の極意(竹田青嗣・苫野一徳著/河出新書)
誤読と暴走の日本思想(鈴木隆美/光文社新書)
荒野に果実が実るまで(田端勇樹/集英社新書)

”アフリカ留魂録”という我がブログのタイトルからして、京大農学部の新卒の青年がウガンダでの国際協力の実態を描いた稀有なノンフィクションである『荒野に果実が実るまで』が最も妥当に思えるのだが…。

倫理の教師としては、『伝授!哲学の極意』と『誤読と暴走の日本思想』の両書は実に示唆に富んだ内容で、有為であった。『伝授!哲学の極意』は、プラトンの善のイデアから始まる哲学の王道を学んだし、『誤読と暴走の日本思想』は、儒家や仏教思想にいかに西洋哲学を接ぎ木したかがわかる。もし、倫理を教えているならば、この両書は格好の題材として使えたと思う。全国の同業者に是非一読を勧めたい新書である。

『経済で読み解く世界史』は名著であり、教材研究の宝庫であった。受験科目として暗記するだけの世界史ではなく、繋がりを理解・重視する世界史の教養は、社会科教育の中で、ある意味最も重要だと私は考えている。これも全国の同業者だけでなく、全ての読書人に是非勧めたい。

しかし、現在、地理総合という科目を教えている身からすれば、”今年この1冊”は、『神なき時代の終末論』に落ち着く。その最大の理由は、本年度の地理総合の授業を、この書にある”世界を四層に分けるて見る”という社会思想的な視点をもとに授業を構成したからである。

1学期は、基層となる風土(地形や気候などの自然環境)と、深層となる無意識のうちに人々の思考形式の型を与えると文化・歴史的経験と宗教を、世界価値観調査の図をもとに講じた。2学期は、中層となる現実的な国営機・勢力圏や生存権、同盟・敵対関係、戦争などを、HDIのランキングをもとに、構造的暴力などの国際理解教育・途上国理解の視点を交えて講じた。さらに表層、ある種の理念や価値の高い理想ということで、アメリカ・イギリス・フランス・ドイツ・ロシア・南ア・オランダといった国々の国是を中心に講じた。
この四層に分けた構成は、3年生で受験科目ではない地理総合という非常に珍しい学院のカリキュラムでは、世界史・日本史・政経・倫理などの他の社会科科目の復習と関連してしても講じれるので、かなり有効だと思われる。

というわけで、今年も多くの良書に恵まれた1年であった。

2025年12月7日日曜日

ポスターセッション 留学生参加

https://newt.net/aus/mag-066016825969
先日、学院にオーストラリアのメルボルン(画像参照)の姉妹校から1ヶ月ほど短期留学してくる子が、3年生の生徒宅にホームステイするそうで、私の地理総合の授業に参加することになった。期末考査後から来年にかけては、ポスターセッションをする予定のクラスなので、それはそれで楽しみである。

M高校時代は、こういう留学生が授業に参加してくる事例はよくあったので、私自身は特に問題はない。またまたサバイバルイングリッシュで対応するだけである。(笑)

ポスターセッションの候補国に、オーストラリアを入れているのでちょうど良いかも知れないと思っている。

2025年12月2日火曜日

永世中立国スイスの実態像

https://www.swissinfo.ch/jpn/politics/
永世中立国スイスのことは、今年の地理総合の授業でも話をした。元になったのは、十数年前に読んだ本である。今日、もっと詳しくまた視覚で学べるYouTubeを見た。

https://www.youtube.com/watch?v=44zC1trol2g

シェルターや、兵役と銃器のこと、各家庭に備わる分厚いマニュアルの存在など、これらのことは授業で話したのだが、実に勉強になった。

長いYouTube(52分ほど)なので、実際の授業では使いにくいが、とりあえずブックマークに入れておいたのだった。それくらい貴重な映像もあったわけだ。

2025年11月30日日曜日

期末考査後の授業について

昨年度のポスターセッション・モザンビークの1つ
期末考査が終わると、私の地理総合の授業は、特進クラスでは行わないことになっている。入試科目対応の特別時間割になるからである。残りの総合理系と看護コース、総合文系の授業に専念することになるのだが、今年は、総合理系と看護コースでは、ちょっと本格的なディベートを、総合文系では、昨年同様ポスターセッションを中心にやることにした。

ディベートは、命題を2つ出し、4チームに別れて行う予定。すでに学級委員に最適なチーム分けを依頼してある。総合理系と看護コースは、明確な言語を使える生徒が多く、ここに論理性を加味したいところ。命題の1つは決定している。「中国は先進国か否か」である。

立論に際して、「先進国の定義」がまず重要になるだろう。一応はOECD加盟国ということになっているが、中国はG20に入っているし、上海協力機構なども組織し国際援助を行っている。この先進国の定義を狭義に捉えるか、広義に捉えるかがまず重要かと思われる。さらに具体的な質疑内容を考えさせたいと思う。もう一つの命題に関しては悩んでいるところ。

ポスターセッションに関しては、中南米やオセアニアの地誌はほとんどできなかったので、これらの国の国是や理想をもとに自由に発表させたいと考えている。こちらから、候補国を提示して、クラス内でダブらないようにしていきたい。昨年はなぜかモザンビークが各クラスで人気であった。三者三様の発表で、その対比も面白かった。(笑)

中南米とオセアニアということで、メキシコ、パナマ、ペルー、エクアドル、ボリビア、チリ、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ、ブラジル、オーストラリア、ニュージーランドと太平洋の島嶼国ということになりそうである。

2025年11月19日水曜日

PP 英仏独露南ア蘭の国是

授業は、いよいよ最終局面に入っている。パワーポイント教材も手直しながら、イギリス・フランス・ドイツ・ロシア・南ア・オランダの国是や理想について作ってみた。
イギリスは、4つのカントリーの同君連合である。少しだけ地誌を交えた。フランス語の王権神授説の国章から君臨すれども統治せずに変化したことも階級社会も重要だし、先進国中の先進国であるイギリスの姿も伝えた。(上記画像)ここは、政治・経済の復習になる。
フランスは、フランス革命と政教分離(ライシテ)と個人主義、そして中華思想。ヨーロッパに与えた影響は多大である。特に、ライシテが如何に特別であるか、イギリスの英国国教会、ドイツのルター派とカトリックといった国家と宗教の関係性について対比する。
ドイツは、ホロコーストの反省と国際貢献。上の画像は、私が撮ったアウシュビッツ第一収容所のガス室に残されたユダヤの人々の爪痕である。ドイツの理性による理論構築のことも、ニュルンベルグ法(ホロコーストの際のユダヤ人の規定)で説明。道具的理性にも少し触れたい。
ロシアのナショナリズムと歴史的に民主主義を経ていないことは、ロシア理解の上で重要かと思う。できれば、ウクライナ問題にも触れたいところ。
南アの「虹の国」という国是は、5ヶ国語による国歌にも現れている。アパルトヘイトを乗り越えて再建途中だが、ジニ係数が世界最悪の数値であることも述べなくてはならない。
オランダに関しては、最もリベラルな国であることも重要。学院には看護コースもあるので、安楽死の話題は欠かせない。

…一気にパワーポイントのエントリーをしたが、修正したいところもある。それは、もし同じような授業構成をするとして、来年度の課題としておきたい。

2025年11月18日火曜日

教材研究 オランダの国是

https://jp.123rf.com/photo_198726138_
オランダの国是は、王室のモットーである「Ik zal hanghaven」(我、守り続けん)である。何を守るのか?それは、スペインから独立した歴史と、海跋以下の土地を水利・治水技術による国土保全だといえる。非公式な国是には、「独立・自由・寛容性」が挙げられる。ここで謳われる自由と寛容性は、フランスのユグノー戦争で迫害を受けた人々を受け入れた歴史や商業国家として、合理的な精神性と対話力などが背景にあるようだ。

オランダは、世界的に最もリベラルな国家だと言われる。まずは、マリファナなどのソフトドラッグとハードドラッグ(LSDなど)を区別し、マリファナについては、コーヒーショップで非刑罰対象として許可していることが挙げられる。(マリファナの使用率は、EU諸国の平均くらいだと言われている。)また、2001年に世界初の同性婚を認めた国でもある。さらに、厳しい条件(患者の示達的かつ熟慮による要請/患者の苦痛が永続的で耐え難いこと/他の合理的解決策がないと患者と医師が確信していること/別の医師の意見を聞いて判断等)のもと、世界初の安楽死を合法化した国でもある。オランダでは、2013年の統計で9068件の安楽死の処置が行われたという。これには、国民の過半数が無宗教という宗教的背景がある。オランダと言えば、ゴイセン(カルヴァン派)の拠点で、前述のアフリカーナーと同じかと思いきや、本国では、すでに(日本同様に)他のプロテスタントと合併し、13%ほどになっていることが大きい。

…国是やその国の理想を語るうえで、オランダは外せないと判断した。私が、ケニア視察の帰路に見たオランダ・アムステルダムは、LGBTの象徴であるレインボーフラッグがあふれており、まるで、NYCを彷彿とさせたのだった。もちろん、いくら合法とはいえ、マリファナを吸うことなど思いもよらなかったのだが。ところで、教材としては、売春の合法化については触れないことにした。女子生徒が多いし、適当でないと判断したのである。とはいえ、アムスでは、お土産屋には、飾り窓のマグネットが溢れていたのだった。

2025年11月17日月曜日

教材研究 南アの虹の国

ケニアの農村で、キャッサバを見せる故ピーター・オルワ氏
…JICAのケニア視察旅行の帰国時の空港で、コーディネーターの故ピーター・オルワ氏が、最後の最後に「レインボーだよ、レインボー!」と叫んだ。 その時は、なぜ彼がそう叫んだのかわからなかったのだが、今思うと、南アのマンデラ大統領が主張した「虹の国」を、ケニアも含めてアフリカ全体の明るい未来への希望を込めていたのだと思う。今回の「国是」の中に南アを含めたのは、故ピーター・オルワ氏へのリスペクトからである。

南アの国章には、カム語で「多様な人々の団結」という文字が刻まれている。人種平等の達成と民主主義の実現、多様な民族が共存する「虹の国」としての国家を建設するという願いからである。国歌も、コサ語、ズールー語、ソト語、アフリカーンス語、英語の5ヶ国語で構成されれている。国歌の元になったのは、コサ語とズールー語の「アフリカに祝福を」とアフリカーンス語の「南アフリカの叫び声」である。

南アはアパルトヘイトという過去を持つことは周知の事実である。アフリカーンス語を話すアフリカーナーは、主としてオランダ系のカルヴァン派(+フランスからオランダに逃れたユグノー等)である。彼らがアパルトヘイトを主導した。ボーア戦争でイギリスの植民地となったが、WWⅡ以後政治の主導権を握ったのだった。カルヴァン派の予定説から見れば、現地の黒人は、全くの差別の対象となったのである。

ともあれ、今はアパルトヘイトは廃止された。だが、そんな簡単に解決するわけはない。南アは今もジニ係数(国内の経済格差を計る指標)では世界最悪の数値を叩き出している。

…故ピーター・オルワ氏の叫んだ「レインボー」は、未だ道半ばである。

2025年11月16日日曜日

教材研究 露のナショナリズム

ロシアには正式な国是はないが、伝統的な価値観と国家の主権を守るという強烈なナショナリズムがあると言える。もとは、モスクワ公国という小さな存在だったが、領土拡大で世界一の面積を誇る大国になった連邦国家で、89の構成主体(48の州、9の地方、3つの市、24の共和国、1自治州、4自治管区)に分かれている。(ウクライナとの紛争で係争中の6地域を含む。)

ロシアは、対ナポレオンとの祖国戦争、対ナチス・ドイツとの大祖国戦争で、多大な人的被害を出した国であり、この歴史からナショナリズムが強い国家となった。また、ユーラシア主義が国是とみられることもある。ロシアは、ヨーロッパでもアジアでもないという地政学的概念であり、モンゴル帝国の征服を受けた歴史やビザンチン帝国の正教会を受容した歴史、中央アジアのイスラム国をソ連時代に従えた歴史を持っている。現在のプーチンはこのユーラシア主義者だという主張もある。

ロシア革命による世界最初の社会主義国としての歴史は、プロレタリア独裁という体制をとり、スターリンの治世ではスターリニズムという個人崇拝と恐怖政治が行われた。この影響は大きく、ソ連崩壊後、市場経済に移行したものの、民主主義は確立せず、自由や権利、表現の自由などはかなり制限されている。今も独裁政治体制だと見るのが妥当だろう。

ロシア正教会は、ソ連時代は弾圧されたが、WWⅡの大祖国戦争時にスターリンによって復活され、他の国家以上に二人三脚で政府を支えている。核兵器を祝福したことでも知られる。

…ロシアは、ロシア帝国時代に領土拡張の結果、日露戦争後に経済的混乱をきたし、ロシア革命を呼んだ。ソ連は、これも領土拡張(というか親ソ政権の確保のためだが…)アフガン侵攻で同様に経済的混乱を呼び、ソ連が崩壊した。同様の歴史を繰り返すというYouTube(神野正史の世界史ワンポイント講座34回:URLが長いのでタイトル表示)を見たが、納得せざるを得ない。現在のウクライナ紛争も同じ過ちを繰り返しそうだ。

…実際、すでにロシアの軍事力は60%損失し、25万人の死者を出しているという情報もある。なにより、経済を支えてきた軍事産業が国際社会での評価を落としているようである。石油や天然ガスといった鉱産資源と並ぶ経済基盤が危ういようである。今回の授業では、こういった深部に触れる時間的余裕はないが、国民生活もかなり危機的な状況であるらしい。

2025年11月15日土曜日

世代を超えて教えたいこと

https://www.etsy.com/jp/listing/1823702526/arabama-heart-of-dixie-nanbpurto-3ag0666
地理総合の授業では、アメリカの国是や理想、11のアメリカといった地誌的な内容が一息ついたところである。期末考査まであと2週間。ここからは、イギリス、フランス、ドイツ、ロシア、南ア、オランダとテーマ講義が続いていく。ちょっと気になったことを、エントリーしたい。

ウェストバージニア州(州コードはWV)は、グレイト・アパラチアの起点となった州であるのだが、私は9.11の話をする。9.11については、生徒諸君はおよそ映像などで知っていて通じるのだが、オノ・ヨーコがNYCのNYタイムズ紙”IMAGINE PEACE”という広告を出したことを述べた際、生徒諸君はオノ・ヨーコが誰なのかを知らない。亡夫・ジョン・レノンの名も軽音楽部の生徒以外知らない。まさに世代的な認識の相違である。さて、WVで、女子高校生が平和を訴え、退学になった話をする。実際の攻撃を受けたNYCでオノ・ヨーコがこういう広告を出してもさして非難は出なかったのだが、WVでは、”平和を”と書かれたビラを撒いた女子高校生は退学処分になったのである。この事件は、民放のある報道番組で大きく取り扱われた。平和主義を国是とする日本らしい話のだが、私は、WVのいう地域性に対するマスコミの無知を感じた。アパラチア炭田が主産業で、斜陽化後は軍人になった人々が多いプワーホワイトの州、WV。彼女の行為は正義であったかも知れないが、地域性と真っ向から対立する行為だったのだ。

ディープサウスでは、”Heart of Dixie”=南部の心臓という愛称をもつアラバマ(州コードはAL)のカープレート(画像参照)を見せて始まる。もちろん、かの公民権運動の震源地としてのモントゴメリーのバスボイコット事件について語るのだが、M・L・キング牧師の”I have a dream”の演説は、今の高校生には直感的に伝わらない。昔は、中学の英語の教科書に必ずと言っていいくらい載っていて、暗唱できる生徒も多くいたのだが…。この公民権運動自体も教える機会が少なくなったように思う。アメリカの多民族社会を”人種のるつぼ”から”人種のサラダボウル”と言い換えているアメリカというかWASPにとっては、ネイティブアメリカンへの仕打ちと共に黒歴史ではある。日本の教育界が忖度したのかもしれないが…。

私は、善悪や美醜を超えて、知る限りのアメリカという国を、世代を超えて伝えたいと思うのである。昨日下校時に、ある生徒が「授業を聞いて、是非アメリカに行ってみたいと思いました。」と言ってくれたのが、何よりうれしい。

2025年11月10日月曜日

教材研究 ドイツの反省と貢献

https://lacosuke.cocolog-nifty.com/blog/2018/01/33-9fdc.html
ドイツは、16の連邦州で構成され、各州は独自の憲法と広範な自治権を有している。非公式な国是には、「統一と正義と自由」がある。統一は、領邦国家として英仏に遅れを取った歴史をもつドイツにとって、また冷戦下で東西に分裂したがゆえに、重みがある。

一方、ドイツの国是は、国歌の三番の冒頭で「民主主義や法の支配」といった普遍的な価値を重視する姿勢だという見方がある。ドイツは、ビスマルクが統一後、社会主義者を弾圧しつつ、疾病保険法、労災保険法、障害・老齢保険法を成立させ、社会保険制度を確立させた、社会権の先駆者である。WWⅠ後のワイマール憲法は、当時としては最も民主的な憲法(国民主権・男女平等の普通選挙法・社会権の保障等)であったが、ナチスがこれを利用して、民主的プロセスで台頭した。警察権を握りドイツ共産党を壊滅させたうえで、時限立法の全権委任法を成立させ独裁へと持っていく。SA(突撃隊)などの暴力も有効に活用して、ではあるが…。

そのナチによって、WWⅡが引き起こされ、ホロコーストを行ったことは、ドイツにとって極めて重要な反省すべき問題である。「イスラエルの安全はドイツの国是である。」といった考え方も強い。名誉職的な色彩が強いドイツの大統領は、イスラエルへの贖罪が最も重要な政務の1つで、何度も訪問しては贖罪の演説をしたりしている。ただ、最近のガザやイランとの問題で、この国是が揺れていることも事実である。

イスラエルへの贖罪だけでなく、ドイツは国際貢献に熱心である。シリア難民を最も受け入れたことや、戦争で身体的に障がいを受けた子供を預かり、治療して戻すドイツ国際平和村も、その贖罪意識から出ていると私は思う。

ドイツは、伝統的に、理性によって自ら構築した理論構築を重んずる国である。かのナチがホロコーストを行う際に、ニュルンベルグ法でユダヤ人の定義をまず規定したことが、印象に残っている。このドイツの理性については、フランクフルト学派から「道具的理性」と揶揄されているが…。

…イスラエル行で、死海に行った際、バス(画像参照)が途中で動かなくなった。後から来るバスを待っていたのだが、選民意識の強い超正統派は他者を顧みず我先に乗って行った。老人や女性を優先スべきと考えた我々(私と妻と息子の妻)は、最後まで残ったが、同じく残っていたのは、ドイツ人青年だったことを思い起こさせる。彼の胸中にあったのは、贖罪意識だったのか、日本人的発想と同じ理性的判断だったのか…。

2025年10月31日金曜日

教材研究 フランスの政教分離

https://www.kyoto-su.ac.jp/faculty/ir/2023_lir_124/
フランスの国是は、かの有名なフランス革命の「自由・平等・博愛(友愛)」であり、その後の7月革命、2月革命と、ヨーロッパにおける歴史的意義は大きい。だが、私が注目したいのは、「政教分離」(ライシテ)である。

フランスの元となったフランク王国において、ピピンの寄進、カール大帝の戴冠とローマ・カトリックとの関わりが大きいわけだが、14世紀に大シスマを起こし、ローマ教皇庁を圧迫することになる。教皇庁の権威に対し、王権の優位を示そうとしたわけだ。こういう思想をガリカリズムというのだが、宗教改革のきっかけとなった「贖宥状」のときも、フランス国内での販売医を拒否している。フランス革命前夜のアンシャン・レジームでは、国王がトップで、その下の第一身分に聖職者が置かれている。まあ第二身分の貴族よりは上だが、カトリック教会は国王の下に置かれていたことは間違いがない。

フランス革命は、この国王+カトリックの権威を完全に崩壊させた。ナポレオン三世の第二帝政が普仏戦争の敗北で終わった後、第三共和制となった1905年に政教分離法(=ライシテ法)が成立し、国家の世俗化=中立化が明確化した。この政教分離は、英国国教会がイギリス政府を、ルター派とカトリックがドイツ政府を支えている状況とは全く異なる。

このような権威を否定して、個人の権利や自由を尊重するフランスの「個人主義」が、この政教分離を支えているといえる。フランスの個人主義は、啓蒙思想、たとえば「人間は考える葦である」と言ったパスカルや、「我思うに我あり」といったデカルト以来、理性的な思考への信頼が強い。さらにフッサールの現象学の影響を受けたサルトルの無神論的実存主義や、フーコー、ドゥルーズ、デリダといったポストモダンの影響も大きい。大学入試では哲学が必須の入試科目だというのも興味深いところで、社会学的には、カトリックではなく哲学が、国家を支えているという見方があるくらいだ。

もうひとつ、フランスは、ヨーロッパにおける中華思想を持っている。フランス革命は、ヨーロッパにおける共和制と民主主義の先駆者・総本家としての自負があるのはもちろん、それ以前のフランス王室が他国の王室のモデルとなったという事実も無視できない。他国の王室ではフランス語が共通語だったし、マナーも、ルイ13世のカツラの着用など、ヨーロッパの上流社会に与えた影響は大きい。さらに、芸術分野(文学・美術・音楽)や、美食(外交での晩餐会では、日本でもフランス料理が主となっている。)の分野でも優れており、中華思想を補完しているわけだ。

…とはいえ、私はフランスは好かない。(笑)パリで、英語を話しても無視された経験が大きい。サンフランシスコから来たアメリカ人女性、ロシア人夫婦と地図を見ながら、今どこにいるのかわからないと共に嘆いていた経験を持っている。「英語などというのは記号に等しい言語だを私にしゃべれというのか。」というのは、漫画「沈黙の艦隊」でフランスの首相が、首脳会談でいみじくも語る言葉なのだが、これは事実でフランス人の中華思想は、感情論的だが実に鼻につくところである。ただし、大阪・京橋で会った道に迷ったフランス人は、英語で対応していたのだった。(笑)

2025年10月29日水曜日

教材研究 イギリスの階級社会

イギリスの国是は、国章にある「神と我が権利」(フランス語:Dieu mon droit)くらいしかないらしい。そもそもヨーロッパの王室はフランス語が共通語で、1198年のリチャード1世の言葉で、王権神授説を意味するのだが、これがイギリスの国是だ、というには違和感がある。それより、「君臨すれども統治せず」(The monarch reigns but dase no rule.)の方が、英王室らしい。ドイツから来て英語が話せず政治に無関心だったョージ1世以降の責任内閣制が、同君連合のUK(連合王国)らしい。

このイングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの同君連合については、詳しくやるとやたら戦争の連続の世界史になってしまうので、地理総合としてはそれぞれの比較に留めることにした。イングランドの議会というのはなく、UKの議会であるが、他のカントリーはそれぞれ議会を持っている。またウェールズのみイングランドの法域で、他の2地域はそれぞれの法域を持っている。微妙に違うのである。この中で、スコットランドは2014年に分離独立の国民投票を行ったことにもふれておかねばなるまいと思う。

イギリスは階級社会である。各カントリーには、公爵・侯爵・伯爵・子爵・男爵といった貴族が存在しており、世襲貴族・一代貴族、聖職貴族による上院=貴族院もある。さらにアッパークラス、ミドルクラス、ワーキングクラスといった階級が厳として存在している。

…ビートルズが、勲章をもらい、ナイトとなって、サーと呼ばれる存在になったのだが、これは一代貴族ではない。彼らが、サーと呼ばせていたのかどうかはわからない。ワーキングクラスのジョン・レノンは、こういう事をきっと無視していたように思う。ただ、NYCのダコタ・アパートに入居する際には有利に働いたのではないかと邪推したりする。なにせ、かのニクソン元大統領が入居拒否されたようなアパートだから。

イギリスの貴族の子弟は、17世紀頃、フランスでマナーを、イタリアで古典や芸術を学ぶスタディーツアー(グランドツアー)で学んでいた。これは、当時のイギリスの後進性を示しているのだが、やがて7つの海を支配する栄光の大英帝国/パクス・ブリタニカの時代を迎える。地理としては、ジブラルタル、スエズ、南ア喜望峰、インド、マラッカ、シンガポールといった地政学的に重要な拠点を抑えたこと、また植民地の現地人エリートによる間接支配を行った帝国主義政策などは抑えておきたい。これらは、イギリスの経験主義的な、失敗や成功に学ぶ経験の積み重ねが大きいといえる。

…ケニアでは、イギリス植民地時代に土台が築かれた地図測量を行う、日本で言う国土地理院を訪れた経験がある。植民地支配のためにまず地図を作成する、というイギリスの植民地政策は、ある意味、的を得ているといえるだろう。

最後に、先進国中の先進国としてイギリスについて語ろうと思う。産業革命後の世界初の公害(特に煤煙)に悩み、過酷な労働条件から徐々に労働問題への取り組みを進め、最終的に普通選挙制へと昇華する。この徐々にという経験論的なスタンスがイギリスの特徴で、フランスとは大いに異なる。さらに、世界的な商船の運営からロイズ保険が生まれ、鉄道の建設運営も手探りで行い、先進国故の失敗から生まれたシステム構築がなされた。WWⅡ以後、労働党政権のもとで、「ゆりかごから墓場まで」(from the caadle to the grave)という高福祉政策のもとで、労働意欲が低下し、また労働組合の高賃金ストライキなどで、企業の国際競争力が低下し、高い失業率とインフレによるスタグフレーションが起こった。いわゆる英国病である。保守党のサッチャーによる新自由主義経済政策で脱却するのだが、これも先進国としての宿命的なことではないかと思う。

本日の画像は、先日学院の図書館で借りてきた「イギリスの歴史を知るための50章」である。通勤途中に一応読破したのだった。

2025年10月27日月曜日

PP 11のアメリカ


授業の方は、「11のアメリカ」に入っている。パワーポイントの内容を少しエントリーしておきたい。今回の主眼は地誌ではないのだが、せっかくなので、11のアメリカの区分にしたがってPP教材を作った。

ちなみに、SDのマウントラッシュモアは、上記画像のような各州の旗がはためく「民主主義の神殿」的なものが少ない。とはいえ、このマウントラッシュモア、建設のきっかけは、パンフレットによると単なる観光資源の創設だったのだが…。
ディープサウスについては、公民権運動に触れないわけには行かないと思う。結局、いろんな話をしてしまいそうである。(笑)