2026年3月4日水曜日

全米宗教組織別の世帯収入分布

https://www.pewresearch.org/short-reads/2016/10/11/how-income-varies-among-u-s-religiousgroups/#:~:text=While%20there%20is%20a%20strong,with%20both%20religion%20and%20income.
「宗教からアメリカ社会を知るための48章」(上坂昇著/明石書店)の、アメリカのヒンドゥー教についての第7章には、興味深いグラフが載っている。(上記画像参照/少し拡大可能)これは、宗教組織別の世帯収入の分布図である。

右側の色の薄い方が低収入($3万未満・$5万未満・$10万未満・$10万以上)となっている。所得のトップは、ユダヤ教、2位はヒンドゥー教、3位はアメリカ聖公会(英国国教会)、4位は長老派USA、5位は無神論、6位は不可知論(神の存在や宇宙の真理を人間は認識不可能とする立場/無神論も否定。)、7位正教会、8位合同キリスト教、9位アメリカ福音ルーテル教会、10位合同メソジスト教会、11位アメリカ長老派教会、12位ユニテリアン・ユニバーサル教会、13位ルーテル派ミズーリ・シノッド、14位モルモン教、15位イスラム教、16位全アメリカ成人平均、17位カトリック、18位特定宗教なし、19位チャーチ・オブ・クライスト、20位南部バプティスト教会、21位セブンスデー・アドベンティスト、22位仏教、23位アッセンブリー・オブ・ゴッド、24位アメリカン・バプティスト教会、25位チャーチ・オブ・ゴッド・イン・クライスト、26位ナショナル・バプティスト・コンベンション、27位エホバの証人 (Pew Research Centerによる)

聞き慣れないプロテスタントの宗派もあるが、およそ学歴との関係性もありそうである。全米の大学卒業者はおよそ27%。ちなみにアメリカ移民となったヒンドゥー教徒は77%でトップ。大学院卒となれば48%と異常なほど学歴が高い。(ユダヤ教徒は59%と31%)インド本土の成人就学年数は5年なので、まさに超エリート集団だといえる。

…昔読んだアメリカの宗教の本で、バプティストで成功した人物が、次の世代ではメソジストになり、さらに聖公会にかわっていくという構図が示されていたのだが、まさに実証されているといえよう。

沢木『天空の旅人』断片1

https://tibet-inori.com/tibetan-buddhism-gotai-tochi/
沢木耕太郎の『天路の旅人』(新潮文庫)を、病院や免許更新や確定申告の待ち時間に読んできた。いっぺんに読むと4月からの通勤の時困るので、あえて緩歩しているわけである。

さて、昨日性的マイノリティと聖書について、仏教ではそういう罪という概念がないと結んだのだが、ちょうどそういう場面も『天路の旅人』にあったので、このノンフィクションの興味深い箇所をエントリーしようと思う。書評と言うより、断片である。(あまりネタバラシしたくない故である。)

まず、この『天路の旅人』という沢木のノンフィクションが生まれた背景(第1章)である。このノンフィクションの主人公・西川の『秘境西域八年の潜行』という紀行の存在があり、これは、違う出版社から2回発行されたが、いずれも完成品ではなかった。これを沢木が、生前のインタヴューと、生原稿の発見から完全版を書いていくのである。実は、この経緯が奇々怪々で面白い。…以下断片。

1933年、蒙古との友好をはかる善隣協会という財団法人が設立され、内蒙古の張家口に今西錦司や石田英一郎、梅棹忠夫といった戦後の民俗学・文化人類学を主導する才能が集まる梁山泊となった。主人公の西川は、中学卒業という学歴の壁から満鉄をやめ、この善隣協会が作った興亜義塾に入塾する。

…特に、梅棹忠夫は、昔、国立民俗学博物館での特別展を見て、その探究心と英知、カード整理や写生の緻密さに感激した思い出がある。

最初の旅で、西川が学んだことの1つ。進行方向に小便をしてはならないというモンゴルの掟。進もうとする地を汚すことになるからである。

巡礼ラマ僧になりすましていた西川が、元旦の法会に参加したが、経典が読めない。しかし口を動かせなくてはならず、仕方なく教育勅語(チンオモウニワガコウソコウソ…)とぶつぶつ唱えていた。

…大学での教育学レポートで、教育勅語について書いた経験があるので、私もはじめの方は暗唱できる。大正生まれの人は、教育勅語と代々の天皇の名前を全て暗証できることは、今は亡き母親から聞かされている。

西川が、初めて親しい者の風葬に出会った場面。遺体を運ぶ日と方角を占ってもらい、死体運搬人が戸板に乗せ、死体捨て場の谷間に運ぶ。2日後に見にゆくと白骨化していた。遺体の肉が食べ残されていると、今生で悪行をしていたことになるそうである。

バロン廟の主・ラマタン活仏が病に伏し、廟にいたラマ僧全員に叩頭(こうとう)が割り当てられ、合計10万回捧げられることになった。西川もまた、両手を合わせて額から胸まで下ろし、体を地面に投げ出すようにひれ伏し、また立ち上げるということを石畳で繰り返した。要するに「五体投地」(画像参照)である。しかし、活仏は亡くなった。火葬は空気を汚すとされるのだが、高貴な人は汚さないので火葬にされた。

駱駝を曳く駝夫(だふ)として出発した西川一行だが、初日に7頭の駱駝が行方不明になった。家に戻っていた。駱駝にはそういう習性があるので、とりわけ旅の初めは注意しなければならないことを学んだ。ちなみに蒙古人は自分の駱駝を見事に見分けられるそうである。

ラマ教では、テングリ砂漠を徒歩で超えると、膨大な大蔵経(経・律・論、全ての仏典)を読む以上の功徳があるとされている。西川はそれを達成した。

さて、最初に記した”性的マイノリティと聖書について、仏教では罪という概念がない”という話。バロン廟からジュン廟に向かった時に、西川は日本人女性と見間違うほどの美女に出会った。「なんとも美しい娘だったなあ。」と言うと、ラマ僧は吐き捨てるように「女は汚い。」「ロブサン(西川のこと)、おまえはバンダ(男色相手の若い少年)より、女のほうが好きなのか。」「(慌ててラマ僧として当たり前の答えとして)いや、俺だってバンダのほうが好きさ。」というやりとりが出てくる。

ちなみに、ラマ教(=チベット密教)には、4大派閥がある。ニンマ派とカギュ派は僧が妻帯することを認め、サキャ派は教主だけが妻帯することを認めているのに対し、最大のゲルグ派はいっさいの妻帯を認めていない。ゲルグ派に属するダライ・ラマやパンチェン・ラマが”生まれ変わり”によって代を繋いでいるのは、そういう理由によっている。

…仏教における不邪淫戒は、不倫や暴力的な性行為を戒めるものであり、平等観の強い仏教では、LGBTQに対する偏見は、一神教に比べて極めて少ないといえるのである。

2026年3月3日火曜日

性的マイノリティと聖書

https://www.youtube.com/watch?v=mNKgYlsurRc
「宗教からアメリカ社会を知るための48章」(上坂昇著/明石書店)は、反トランプ的=リベラルな立場から描かれていることを先に述べた。その好例として、性的マイノリティ(=LGBTQ)と宗教の話が33章に書かれている。本日はこの件についてのエントリー。

旧約聖書の創世記の19章のソドムの物語やレビ記の18・20章には「G」について、また新約聖書のローマの信徒への手紙1章には「L」について禁止の文言がある。著者はもちろん否定的な見解を示している。

同性愛を認めるアメリカの教会についても詳しい。世界初の同性愛者の聖職者による同性愛者のための教会は、メトロポリタン・コミュニティ教会(MCC:画像参照)。1968年、ロス・アンジェルスで創設され、世界22カ国に教会(信者数4万3千人:米国内2万人超)があるという。

主流派教会としては、1957年にカルバン派の会衆派教会と福音改革派教会が合同して説された合同キリスト教会(キリスト連合教会:UCC)が最も寛大で理解があるとされる。1972年に「G」、1982年に「L」の聖職者を任命、主流派教会で初めて同性婚を承認した。「T」の聖職者も27人いる。但し、一枚岩ではないようだ、また、アメリカ聖公会(=英国国教会)も同性愛者を神の子として認め平等であるとしている。2018年からLGBTQの結婚儀式を行っている。

一方、批判的なのは、南部バプティスト教会(SBC:1600万人)歴史的な黒人差別には謝罪しているが、LGBTQには断固反対。聖書の言葉を忠実に守って生活している故であるが、門前払いはせず、再教育のために受け入れるという立場。2017年にLGBTQに批判的な福音派の教会が保守的な神学的立場を「ナッシュビル声明」を出したが、SBCはその中心となった。

プロテスタントで2番目に大きな合同メソジスト教会も、同性愛はキリスト教の教義と相容れないと明記しているが、2019年に、この問題で分裂した。アメリカ・カトリック教会(7000万人)は、同性愛行為は罪深い、許されない行為であるが、行為をしていない同性愛者は罪がなく受け入れるとしている。本家のローマ・カトリック教会は、同性婚は創造主の計画に合わないので祝福できない、同性愛行為は罪と断じている。

これらを読んでみると文脈のそこかしこに著者のリベラルなスタンスが、かなり強調されている。私はブディストとして、別にLGBTQの人々の人権問題を云々する立場にない(つまり仏教では、同性愛は罪という概念がそもそもない故)ので、フツーに通読したのだが…。

宗教からアメリカ社会を見る

「宗教からアメリカ社会を知るための48章」(上坂昇著/明石書店)を、聖セラフィムの本とともに学院の図書館から借りてきていた。このところ、イランの問題とかがあって、なかなか読めなかったのだが、いよいよ読んでいこうと思っている。エリア・スタディーズの一冊であるので、項目にしたがって興味のある箇所から読んでいけるという利点もある。

まずは、著者のスタンスから。著者は完全な反トランプである。「(長年アメリカを研究してきたが、)トランプ再選時に縁を切ろうかと考えた。」と、あとがきに記している。私は、民主党の方が危ないと思っており、とはいってもトランプ政権の正義を信奉することもない。冷静に歴史の評価を待ちたい、というスタンスである。よって、読んでいて違和感を覚えるかも知れない。しかしながら興味深い項目が並んでいるので、粛々と、書評を記していくつもりである。

2026年3月2日月曜日

イラン情勢と展望Ⅱ

https://mainichi.jp/articles/20250622/k00/00m/030/066000c
イランは、これまでのイラク、シリアそしてリビアと同様に、大混乱するだろうと昨日記した。だが、その大混乱は、これまでと違って周辺国を巻き込むと思われる。それが本日付記したい内容である。

北部のアゼルバイジャン人には、当然アゼルバイジャン本国が独立を支持するだろう。西部のクルド人地区には、トルコやイラク・シリアのクルド人がそれぞれ独立を支援に回るだろうし、トルコ自体はそれを畏れて介入してくる可能性が強い。南部のホルムズ海峡近くはアラブ人が多く、石油利権も絡んで、サウジやUAEなどの介入も考えられる。一方東部では、パシュトゥーン人が多いのだが、先日からアフガニスタンとパキスタンが戦争状態に入ったようで、不穏な状況である。この影響がある可能性が高い。中央部の多数派のペルシャ人たちは、革命防衛隊と経済的困窮の一般市民の間で揺れ続けることになるだろう。

ここに、シーア派とスンニー派の宗派対立が絡んでくる。世界全体のイスラム人口で見るとシーア派は10%だが、中東に限ればは50%を占める。湾岸諸国は王国や首長国でイスラム共和国の革命思想を嫌っていた中東の盟主・サウジにとっては、イランが勢力を失うのは喜ばしいことであるが、イスラエルが次に中東のライバル化することに頭を悩ませているだろう。イスラエルの悲願は、メシアが(キリスト教原理主義者にとってはイエス・キリスト)が再臨するとされる第三神殿の建立である。現在ヨルダンが管理しているエルサレムの岩のドーム(イスラムにとって第三の聖地)に代わって第三神殿を建てると言い出したら、全イスラム教徒を敵に回すことになるだろう。その時、サウジの立場はこれまでで最大に窮することになる。

イランの指揮系統はおそらく大混乱しているだろう。湾岸諸国の米軍基地だけでなく市街地にも攻撃をしている。これはますます敵を増やすだけだ。

2026年3月1日日曜日

イラン情勢と展望

https://sys-guard.com/post-16381/
多くのネットの情報を鑑みるに、ハメネイ師が側近とともに、自らの事務所で空爆を受けて死亡したことは間違いなさそうだ。もっと地下深くに潜んでいるのかと思ったが、意外にあっけない最後を遂げた、と感じている。

問題は、実質的に軍事も経済も握っている革命防衛隊の動きと、経済封鎖に耐えられなくなっている多くの民衆の動きである。最高指導者が変わっていくことは十分考えられる。革命防衛隊内部で論議されるだろう。当然後継者は、さらに強硬な言を吐くしかない。ただ、ミサイルやドローンがどれくらい残っているのか。湾岸諸国の米軍基地やイスラエルのテレアビブに報復しているようだが…。

アメリカとしては、短期の攻撃で終わりたいと思っているだろう。イランは、ホルムズ海峡の封鎖をアナウンスしており、多くの艦船が航行停止しているようだが、ここだけは、力で排除する可能性は高い。革命防衛隊の様々な軍事・経済施設には容赦なく破壊する可能性も高い。あとは、国民次第というシナリオではないかと私は思う。

ただ、昨日、ブルキナファソの国民感情(反フランス感情や、もっとひろく反欧米のラスタ思想)のことを記したが、イランの人々にも反アメリカ感情は強いはずだ。CIAも、イランの民主化には否定的であるようだ。経済封鎖を解くためには、アメリカの傀儡政権を受け入れなければならないとすれば、まさに「囚人のジレンマ」(画像参照)に陥り、大混乱の末に国家分裂の危機が訪れるかもしれない。

2026年2月28日土曜日

イランの影で…サヘルの現状

https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcinfectionspothazardinfo_117.html#ad-image-0
ついにイスラエルと米軍のイラン攻撃が始まったようだ。3月に入ると砂嵐の季節がやって来るので、戦闘機等のジェット機の飛行に支障をきたす故、攻撃は2月中に始まるのではないかという予想がされていた。今はまだ速報段階であるので、イラン情勢のことは置いておいく。

本日は、日本ではあまり報道されないアフリカ・サヘル地方の現状について訴えるYouTubeがあったので、そちらのエントリー。https://www.youtube.com/watch?v=TvNQQg8sLUU

私がブルキナファソの北部サヘルの地に足を踏み入れたのは、かなり過去の話になってしまった。すでにブルキナファソの治安状況は、外務省の情報では、サヘル地方はレベル4・退避勧告になっている。首都ワガドゥグもレベル3・渡航中止勧告が出ている。あんなに平和で、治安など心配する必要がなかったのが嘘のようである。(画像参照)

YouTubeによると、ブルキナファソだけでなく、ニジェール・マリ・チャドといった旧フランス領の地域は、極度の貧困、天然資源の搾取(ニジェールはウランで有名。ブルキナファソも金の算出が増えている。)が要因となって、軍部によるクーデターで、反仏意識が向上し、フランス軍も撤退。そのあおりを受けてアルジャジーラやISIS系のイスラム武装組織が暗躍しているようだ。軍は、テロ組織を十分に抑えきれていないらしい。

ブルキナファソ事情を少しばかり知っている私は、当時の民主政府(といってもデモクレイジー的であった)は、やはりかなり腐敗しているように映った。もちろん、専門家としてJICAで日本に派遣された教育省のエリート官僚や、経済学を学んでいた学生さんなどは、真剣に国の将来を考えていたのだが、SONYという名の電化製品&ゲームの店に入ると、むちゃくちゃ高価な製品も並んでいた。(汚職で手に入れた金で得た)高級官僚などの家族向けの店とのこと。大統領が作ったという私的動物園の横を車で通過したこともある。一方で、日々の食を得るのに苦労している人々も、数多く見てきた。

一方で、青年たちは、反訪米的で”ラスタ”思想が強かった。ネスカフェ(現地ではコーヒーをみんなこう呼んでいた。)の空き缶を加工して土産物を作り、欧米人に売っていたのだが、「お前らの売りつけたもののゴミを持って帰れ。」というコンセプトだった。こういう国民感情があったのだ。一方、貧困家庭から口減らしで、首都に出てきた半分ホームレスの子供たちの多くは、コーラン学校の生徒だった。と、いっても仏教で言う乞食行(こつじきぎょう)のようなことをしてわずかな食を得ていた。極度の貧困の中、彼らがアルカイダやISISの組織に、飲み込まれても全く不思議ではない。ただ、ブルキナファソのイスラム教徒は穏健で、キリスト教徒徒と対立しているわけではなく、両者の混在した墓場を見て大いに驚いたこともある。わりとゆるいのである。

ちなみに、軍隊も警察もブルキナファソでは、教育を受けたエリートである。HDIでも世界最下層のブルキナファソでは、軍人になるのはそう簡単ではない。彼らが、国を憂う気持ちも理解できる。よって、軍事クーデターを批判する気は私にはないし、反欧米感情やラスタ思想にも理解できるところが大きい。これからも”アフリカ”留魂録としては注目していきたいところだ。