2026年10月24日土曜日

揺れるフランス 考Ⅱ

https://www.youtube.com/watch?v=rPzSH5x61Fg
いろいろなフランスの暴動に関するYouTubeが出ているが、これだというチャンネルを見つけた。高校生にはまだ少し難しいが、それでもきちんとした経済学的な知識に裏付けされたわかりやすい解説になっている。https://www.youtube.com/watch?v=rPzSH5x61Fg 

第2章の、ユーロ圏を1つの身体と見て、フランスは、その心臓であり、国債はその全身を巡る血液、銀行は血液を運ぶ血管、スプレッド(債券の金利の利回りや信用)はその異変を知らせる体温計というたとえは、実に参考になる。私は政治・経済の授業では、インフレ・デフレを身体と血の量でよく説明するのだが…。

50年かけてフランスは財政赤字をじわじわと重ねてきた。その原点は80年前の約束(連帯:ソリダリテ)にある。19世紀末の政治思想で、レオン・ブルジョワは、「社会から恩恵を受けて行きている以上、互いに義務を負う、個人の自由を重んじつ共和国が、同時に支え合いの仕組みを持つ。」としたのである。WWⅡ直後、現在の社会福祉制度は、レジスタンス組織、官僚、労働大臣らの協力で成立したもので、年金は日本と同じ賦課方式。フランスでは、アキ・ソシオ(闘争や交渉によって勝ち取った権利は、社会契約の一部であり、簡単に手放すべきではない)という意識が強い。よって、縮小されることは非常に難しい。このチャンネルの制作者は、このソリダリテは、戦争の傷から生まれた国家の物語そのものなので、故にその権利の一部を削る議論は、共和国とはなにかという根源的な話になってくるとしている。

石油危機の1973年まではフランスも高度経済成長期で、財政は黒字だった。以後は財政改革の試みと街頭の抵抗(ストライキ等)が交互に起こり、政治状況の混迷もあって、うまく進んでいない。

今回の高校生の抗議は、未来への投資を求めたものだが、未来への投資と過去への約束(教育予算の1/4が退職した教員の年金にあてられている)が同じ財布の中で競い合っている構図が浮かび上がってくる。このチャンネルの制作者は、これを「獲得された権利の罠」の正体としている。1つ1つの権利はその次代に正当な理由を持って勝ち取られたものであるしかし、権利は積み上がる一方で、経済の成長は昔ほど速くない。その差を埋めてきたのが50年分の借金であった。前に進めても後ろには戻りにくい歯車のようなものであると。

第5章は、ユーロ圏から見ると、フランスが「大きすぎて救えない:ギリシャとの決定的な違い」というタイトルがつく。フランスの財政赤字は、€3兆5955。ギリシアの11倍もある。ギリシア危機の歳、EUがつくった加盟国向けの緊急融資の基金・ESMの、融資限度は€5000億(実際は、すでに約束済みの分があり€4330億)だし、ドイツに次いでESMを支えているフランスが支えてもらう側に回れるのか、と言うと大きな疑問である。ESMやIMFに頼ったりすれば、信用が解けてしまうだろう。このチャンネルの制作者は、「フランスの危うさは、借金の大きさそのものより、大きすぎて誰も肩代わりできないのに、自分では通貨を刷れないという組み合わせにある。」としている。

第6章のタイトルは、ソブリン・バンク・ワープ(ソブリンとは国家の意)破滅の連鎖のメカニズムで、国債と銀行と政府の悪循環の関連である。これは実にわかりやすく解説されていて有為である。国の信頼が揺らぐと、銀行が持つ自国の国債の価値が下がり、自己資本が削られる。銀行が弱れば、国家による救済が行われる。その救済の負担が予想されて、国の信用がさらに揺らぐ。(画像の左の輪)さらに実体経済の輪(右の輪)、体力を失った銀行は、企業や家系への貸し出しを絞る。すると景気が悪化し税収も減る。これによって財政が悪化し、国債の信用が揺らぐというわけである。

欧州中央銀行の話が続く。条約と規律と物価に正統性を与える立場の欧州中央銀行は、買い支える力はあっても、この3つ(条約・規律・物価)のどれかの鎖を引きちぎることになる。よって最後は政治に決済を求めるだろうと。

最後に、今回の危機は、前述のフランス国内の「連帯」と欧州の「連帯」のぶつかり合いでもあり、またこの2つの連帯はこれまで互いを支えてきた。(共通通貨のお陰でフランスは低い金利で借金を続けることが出来たし、フランスの社会保障は欧州のモデルとして語られてきた)だが、それぞれが互いの重荷になってしまったという逆説こそが、今回の危機の一番深い層にあると結ばれている。

2026年10月23日金曜日

LIVE FREE OR DIE

https://www.nhpr.org/politics/2016-01-28/house-rejects
-bill-to-give-n-h-motorists-a-choice-on-live-free-or-die-motto
アメリカの国是といえるものの1つは、VAのパトリック・ヘンリーによる演説で語られた”Live Free or Die”(自由をしからずんば死を)だといえる。イギリスのアメリカ植民地への茶税など独立戦争に関わるコトバである。

授業では、アメリカが銃を保持できることの意義について語った。これは、最初のアメリカ行で、デトロイトのコーディネーター・サム氏が語った言「もし、私の自由や権利を、州政府や連邦政府が犯そうとした時、銃がなければ戦えないではないですか。」に由来している。

多くの日本人は、自衛のために銃を保持していると思っているが、もっと深い理由によるものだ。自由は、暴力によって勝ち取られたものだということは、フランス革命を始めとした歴史が教えてくれる。日本には、そういう経験がない。WWⅡ以後、もうひとつのアメリカの国是「明白なる天命」によって、自由と民主主義は与えられたという稀有な歴史を持っているからである。

フランスの現在の状況、国民の抗議する自由を認めつつ、各自の権利も認めつつ、悪化する国家財政やユーロとの兼ね合いの中で苦しんでいる姿の原点も、ここにあると思うのである。

2026年10月22日木曜日

スクーバル投手の出身地

https://news.ntv.co.jp/category/sports/525969fe25a641b5b60719059b006094
ドジャーズの来季は、スクーバル投手の契約如何にかかっていると言われている。そのために多くの選手の年帽をを調整する必要があるようだ。

たまたまスクーバルのこれまでのYouTubeチャンネルがあって見ていたら、驚いた事があった。彼は、アリゾナ州・キングマンの出身だということを知った。キングマン…。懐かしい名前だ。R66の旅で立ち寄った町である、目的地は、NHKで紹介されていた理髪店のあるセリグマンだったが、キングマンももたR66の重要な地点で、ここで貨物列車の長時間の通過を経験した思い出の街でもある。

https://www.youtube.com/watch?v=af-OFi3J6XU

https://www.expedia.co.jp/Kingman.dx1572?gallery-dialog=gallery-open
はっきり言って、田舎である。スクーバル投手はここから這い上がっていったのだ。奥さんも高校の同級生で、会計士の資格を持ったしっかり者であるそうだ。おそらく、山本由伸投手を超える額の契約になるだろう。これからの進展を楽しみにしたい。それだけの投手であることは間違いない。

2026年10月21日水曜日

揺れるフランス 考

https://www.threads.com/@kiraboshi33/post/DerVvfpGYZ2/
高校生の教育費の削減批判から始まったフランスのデモは、不満の高まりを抑えきれなくなったムスリム移民や、これを利用しようとする極左勢力によって、暴動に発展している。多くのYouTubeで取り上げられているのだが、私もこの状況について考察してみたいと思う。ちょうど、地理総合の授業では2学期後半は「国是」をテーマに話を進めていくのだが、当然フランスの国是も触れる予定であるからだ。「自由・平等・博愛」といったフランス革命以来の国是と「ライシテ」(政教分離の原則)を中心に語るつもりだった。

あるYouTubeでは、暴動でスーパーが襲われたが豚肉には手がつけられていないとか、マクドナルドは襲われたが、隣のハラル(イスラムの食のタブー)の店は無事だとか、パレスチナの旗が振られている(画像参照)とかで、ムスリムが暴動の中心にであることを強調するものもあった。それも事実であろうが、フランスの帝国主義の歴史を見ると、さもありなんと私は思っている。
フランスに移民している人々には、たしかにムスリムが多い。過去にもライシテの影響で、公立学校での女生徒のヒジャブが禁止されたりして、フランスの文化的価値観とイスラムの価値観の衝突が言われていた。フランスは、ヨーロッパにおける中華思想を強烈に持っている故に、移民に対して同化政策を推進してきた。それ故に、移民は集住して自分たちの価値観を守ろうとする。国家内にそういった地域が増加し、警察権力も介入できない地も多いと聞く。もちろん、移民は貧困に沈み、差別を受けているし、失業率も高い。こういったデモに際して暴徒化することは必然であったといえる。

そもそも、最初の教育予算の削減(学校設備の老朽化や教員不足)という話は、フランスの財政事情に大きく関わっているようだ。フランスは今、G7の中でも最も財政が厳しいと言われていた。実は、ここに日本の機関投資家が関わっているようだ。長らく低金利(というかゼロ金利・マイナス金利)だった日本で、金利が上昇した。これを受けて、フランス国債の主な購入者だった日本が、一気にフランスから逃げ出したらしいのだ。フランスにとっては一大事なのだが、ここでEUの中枢(EUの起源は、仏・独・伊+ベネルクス三国)であるフランスは、その対策に窮するのである。ユーロ圏であるが故に、フランス独自の理由で金利を上げたり下げたりできないのである。ユーロ圏では、政策金利を欧州中央銀行の決済で行われているからである。フランス国債の格付けもどんどん下がっていった。自国ではどうしようも出来ない状況に陥っているのである。

昔会ったことがある、パリのエッフェル塔の下で、お土産を売っていたガボンの人々も、この暴動に参加しているのだろうか…と思う。まあガボンはキリスト教徒のほうがムスリムより数的優位なのだが…。貧困や差別といった不満は当然あるだろうから…。

この暴動、正直なところ先が見えない。解決の糸口はどこにあるのか見当がつかない。今日のところは、今の私の感想というところで…。

2026年10月20日火曜日

吉村昭『落日の宴』を読む5

https://houyoukai-tokyo.exp.jp/5165/
私事ながら、体調不良がまだ続いている。『落日の宴』の書評第5回。川路聖謨は、筆頭の勘定奉行となるのだが、失脚の時がやってくる。それは、当時の将軍後継問題に巻き込まれた故である。一橋慶喜の優秀さを知る川路聖謨は、表には出さないものの一橋派だと見られていた。同時に徳川斉昭との距離が近いことも一橋派だと見られたのである。ところが、朝廷との開国の折衝が上手く行かず、大老に紀州派の井伊直弼が就任するや、これが仇となる。井伊直弼は、徳川斉昭を忌み嫌っていたのである。そういう権力闘争の中で、職を解かれることになる。

水戸の烈公・徳川斉昭は特異というか、怪異な人物であると私も思う。彼の攘夷論は、幕末維新に膨大な影響を与えたし、失脚してから水戸脱藩藩士の桜田門外の変へと進展する。これは江戸幕府の威信を見事に損なう。川路聖謨は、その尊攘の志士たちが与える影響を大いに危惧していた。

その後外国奉行に復帰するのだが、朝の鍛錬の最中に倒れてしまう。半身不随の身となり、身を引くのである。読んでいると彼のあまりの変容に胸が苦しくなるほどである。さらに弟の井上清直が死去する。失意の中、鳥羽・伏見の戦いがあり、あろうことか慶喜は江戸に戻り恭順の姿勢を見せる。薩長の兵が駿府にまで迫ることも耳にする。

下級の身分でありながら、将軍家の恩寵で出世させてもらったという意識が、江戸幕府の終わりを迎えるに当たり、彼を自刃に追い込む。残念ながら切腹だけでは死ねず、腹部にサラシを巻いたうえで、短銃自殺を行うのである。まさに、幕臣としての美学を貫いたと言って良い。稀代の外交官として幕府に尽くし、見事に果てたといえようか。

2026年10月18日日曜日

吉村昭『落日の宴』を読む4

https://tamaki39.blogspot.com/2017/02/blog-post_19.html
中間考査の採点が終わり、生徒諸君にそれぞれ送信した。今回も入力ミスがあって、イライラしたけれど、なんとか終わったのだった。一方で、ドジャーズが敗けて、虚脱感が生まれたし風邪で体調を崩したこともあって、なかなかBloggerを更新する気になれなかった。というわけで、『落日の宴』の書評第4回目。

この『落日の宴』のメインは、ロシア使節のプチャーチンとの折衝である。どうやら、川路聖謨は、膨大な日記を残していたらしく、詳細な記述がなされている。最初は長崎での折衝になる。江戸から長崎へ。プチャーチンとのやり取りは、なかなか白熱している。鎖国政策と開国の曖昧な境目で、折衝は難航する。しかし、プチャーチン自身は、川路聖謨をかなり優れた外交官であると認識、リスペクトしていたようだ。

長崎での折衝では決着は見なかった。プチャーチンは再度来日するとして去る。クリミア戦争の影響で、ロシアは英仏との敵対関係になったのである。後日の交渉は、下田でなされることになる。しかし、かの藤田東湖が圧死した安政の大地震が下田を襲う。プチャーチンの軍艦も沈没する羽目になる。

幕府は、ロシアのために西洋艦船を新造することになるのである。まさに波乱万丈のロシアとの交渉であったのだが、北方領土(樺太や択捉島)の国境の線もなんとかまとめ上げていく。意外にロシアの交渉の姿勢は、アメリカや英仏と比べても悪くない。そんな感想を得た次第。

2026年10月16日金曜日

NLCS第4戦 終戦

https://www.yomiuri.co.jp/pluralphoto/20261016-GYT1I00105/
私の中間考査の試験日で、実に多忙だった。その隙間にハムシショー氏のLIVEを少しずつ視聴していた。大谷選手の3ランが出たのを知ったが、LIVEではない。実に残念。試合の方は、結局、ブリュワーズに逆転されて、4-6で敗けてしまった。昨年の逆スイープである。

これで、ドジャーズの2026年度は終わった。二刀流として身体にかなりの無理をかけてきた大谷選手にとっては、前半戦はともかく、後半戦かなり苦しい戦いだったと思う。だが、最後の最後にHRを見せてくれた。ありがとう。

それにつけても、ブリュワーズは強い。強すぎる。そんなNLCSだった。

こういう敗戦時には、誰が戦犯なのかと毀誉褒貶が吹き荒れるのが常だ。だが、私はそれを探す気にはなれない。それを声高に叫んでも仕方のないことだ。それは愚痴である。三連覇の夢は絶たれたが、大好きなドジャーズは、これで終わるわけではない。