2012年8月22日水曜日

ダイヤモンド・ランキング

世界史Bの補習で、国際理解教育のワークショップで使う「ダイヤモンド・ランキング」を使って戦後史を論じてみた。ダイヤモンド・ランキングというのは、テーマに応じて、設定された9つの事項や命題を重要だと思うもの、思わないもの、さらにその中間にと、5段回に分けてみることで思索を深めていくものである。
現代史を冷戦構造や多極化、さらに植民地の独立から様々に講義するのもいいのだが、昨日ベルリン陥落の時、V2ロケット技術を巡って米ソが暗躍していた話をしていたら、「ブラウン博士ですね。」とA君は言った。一気に、昨夏の補習で一度話したことを思いだした。彼はきっちりと覚えていたのだった。で、ちょっと違った教科書や参考書にない視点で話したいと考えていたのだ。モーニングの時、ふとダイヤモンド・ランキングでいこう、そう思ったのだ。

昔々前任校で、アメリカ研修旅行に行く際、「君にとって何が最も重要か?」という問いかけをした。自由・平等・豊かさ・平和・宗教など9つの命題を指定した。7割の生徒が「平和」を1番に置いた。まさに『日本』の価値観を示したわけだ。「ではこれから行くアメリカならどうだろう?」と聞いてみた。「自由」というのが正解だ。何といっても、アメリカの国是、明白なる天命は「自由と民主主義を世界に拡大すること」であるからだ。今日の補習も、ここからスタートした。

今回の補習で立てた命題は、戦後史を語るのに有為な以下の9つ。
1.自由と人権
2.平等
3.平和
4.軍事的優位
5.宗教・イデオロギー
6.豊かさ
7.多文化共生
8.自主独立(アイデンティティの確保)
9.貢献

戦後をまずリードしたのはアメリカであり、ソ連である。ソ連やイギリス、フランス、(西)ドイツ、日本などをダイヤモンド・ランキングで考えてみる。ソ連のダイヤモンド・ランキングはどうなっていたのだろう?A君は「平等」が一位だろうと推測した。なるほど。社会主義国となれば平等。高校生らしい推測である。だが私は、4の軍事的優位と、5のイデオロギーの方が重要視されていたと思うなどと論争するわけだ。ドイツの1位は難しいが私は9の貢献だと思う。ナチスがWWⅡやホロコーストを引き起こしたわけで、ナチスの責任ではあるけれどそれを支持したドイツ国民としては、世界に貢献しなければならないというのが国是になったように思うのだ。アフガンやアンゴラの紛争で傷ついた子供たちに手術を無料でほどこす「平和村」の活動などはそのシンボルであろう。ユーロ危機でも本音ではギリシアに手を焼きながら踏ん張っているのもそうだ。こういう議論の中で、A君は学びを深めていく。インドは、独立後長らく全ての工業製品を国産でまかなっていた。8の自主独立が国是だったわけだ。
こういう、各国の価値観とアメリカの自由・民主主義という正義がぶつかり交わりながら、社会主義が敗北し、今の現代史がつられていく。いわば人文学的な視点から見た現代史。
2時間ほどこんな論争をしていたのだった。きっと受験には出ないと思うが、A君は、この「受験の為の補習」満足してくれていたようだ。

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