2024年6月22日土曜日

コーランの中のキリスト教Ⅲ

https://christian-unabridged-dict.hatenablog.com/entry/2018/02/15/134759
「コーランの中のキリスト教ーその足跡を追って」(J.グルにカ著/教文館)の書評の続きである。いよいよ「聖書学」からの重要な内容に入っていくのだが、まずは、新約聖書の四福音書についての基礎知識が必要となる。高校の倫理では、それぞれの特徴までは深入りしないので、少し調べてみた。いつものように、高校生に話す感じで記して行きたいと思う。

普通、新約聖書に掲載されている順に、マタイ・マルコ・ルカ・ヨハネの福音書と呼ぶのだが、成立はマルコの福音書が最も早いと言われている。ルカの福音書は使徒言行録と同じ著者のもので、ルカ文書としてまとめられることもある。このブログでも何度か話題にしているヨハネの福音書は、他の三福音書が「共観福音書」(イエスの生涯など共通する記述が多い)と呼ばれるのに対し、イエスの生涯の記述よりその言葉の記述が多く異質である。

さて、問題はマタイの福音書である。この福音書は、まずイエスがアブラハムの末裔、それもイスラエル王の資格を持つダヴィデの末裔であるという系譜(誕生から幼児期も含まれている。)が示される。そして、モーセらが預言したキリスト(救世主)であることを旧約聖書の預言の成就から説いている。旧約からの引用が多く、「私は(律法を)廃止するためではなく、完成させるために来た。」という言葉に代表される。(5:17~18)また、アラム語(今日の画像のイエスの刑場での言葉はアラム語)のギリシア語への音写などから、元々アラム語(エレサレムで当時共通語とされていたが、ユダヤ人世界ではアレキサンドリアなどを中心にギリシア語が主流となっていた。)で書かれたのではないかという説がある。

この本の中では、コーランに影響を与えたキリスト教は、このマタイの福音書ではないか、ということが言われる。マタイの福音書は、前述のイエスの系譜の記述や旧約の引用の問題から、ユダヤ人キリスト教徒に向けて書かれたものとされているのである。

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