2024年5月2日木曜日

国連の本質と実態考

https://www.unic.or.jp/untour/subgen.htm
地理総合の特進コースでは、超久しぶりに教科書に沿って授業をしている。(仕方がないことだとは思うが)教科書は実に面白くないし、薄っぺらな記述が多い。世界のつながりで、国連についてやることになっているのだが、プリントを作りながら、やはり国連の本質について語るべきだと思った。

国連と日本では訳しているが、United Nationsを直訳すると「連合国」である。すなわち、WWⅡ中の、1941年8月、F.ルーズベルトとチャーチルが大西洋憲章を出し、国連連盟に変わる新たな世界の枠組みを提唱、1945年4月25日から6月26日にサンフランシスコで会議が行われた。ドイツが5月7日に降伏したので、会議の参加資格を得るために残る日本に宣戦布告した国も多い。1945年になってから宣戦布告した国は、エクアドル、パラグアイ、ウルグアイ、ベネズエラ、トルコ、エジプト、シリア、レバノン、サウジ、アルゼンチン、チリなど南米を中心に多いのだが、結局51カ国が10月24日の国連(=連合国)設立メンバーとなったわけだ。

以後、中立国や植民地から独立した国、敵国であった枢軸国(日本やドイツなど)も参加して193カ国にまで拡大した。一般的に、最も加盟国の多い国際組織であることは間違いない。ただ、敵国条項(憲章77条・107条で元枢軸国が侵略行為やその兆しを見せた場合、安保理を通さずに軍事的制裁を行える)は死文化したものの削除されていない。この削除に関しては、1995年の総会でほとんどの国が賛成して決議された。ちなみに反対はゼロ、棄権したのは、北朝鮮、キューバ、リビアの3カ国である。なぜこの3カ国が棄権したのかを考察すると、社会主義国という共通項がある。リビアは、当時はカダフィのもと大リビアアラブ社会主義人民ジャマーヒリーヤ(:カダフィの造語で大衆による共同体制)国と称していた。ソ連とも繋がりが深く、イタリアの元植民地であったことも関係しているかもしれない。ロシアは北方領土の問題で、敵国条項を持ち出したこともあり、中国も同様の立場である可能性が高い。この条項が削除されずそのままなのは、安保理で、この2カ国が1995年決議では賛成したものの、残しておいたほうが有効だと考えている故のようだ。全会一致を避け、棄権した3カ国はそのシグナルだった可能性が高いと私は思う。よって、国連の本質は、今だにWWⅡの連合国である、というのは間違っていないと思う。

とはいえ、連合国だった米英仏と中露の冷戦、冷戦後の対立構造は大きく変わっていない。結局、経済力や軍事力といったパワーバランスが世界を動かしているし、しばしばこの五大国が関わった紛争が多く、国連の平和への理想は、拒否権で左右されてしまうし、総会では最も多くの票をもつ途上国も彼らに左右されていく傾向が強い。中国の一帯一路などという国家戦略は、この流れの中にあるに違いない。ちなみに、国連の分担金の推移は、長らく日本が第2位であった。これを中国が追い越したのは、その証拠であると思われる。中国は、経世在民のガバナンスを取り、国内の治水対策や失業者対策に、もっと金を使うべきではないかと思うのだが…。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/kids/ranking/un.html
もういいかげん、安保理常任理事国の国益に左右される国連は解体し、新しい組織を模索してもいいのではないか、特にWHOから日本は脱退してもいいのではないか、などと夢想するところである。

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